No.030 稲盛哲学とは?盛和塾会報誌振り返りvol5

1.はじめに

京セラの創業者の稲盛和夫さんが2022年8月24日に90歳でお亡くなりになりました。日本を代表する名経営者であり、人格も素晴らしい稲盛さんが無くなってしまったのは非常にショックです。
心からご冥福をお祈りいたします。

もちろん私自身直接的に稲盛さんの教えを受けたわけでも関わりがあったわけでもありません。しかしながら、私塾である盛和塾の会報誌を拝読いただける機会があり、文章から読み解ける稲盛さんの経営哲学にはいつも感銘を受けていました。

私自身のインプット、アウトプットのために盛和塾会報誌を振り返りノートに記したいと思います。今回は下記に続く5回目です。
会報誌第五号は 1993年4月10日に発行されています。

No.26 稲盛哲学とは?盛和塾会報誌振り返りvol4|SEIGO|note

2.塾長理念

会報誌の表表紙の裏面には塾長理念が書かれています。

両極端をあわせ持つ

 事業では常に決断を迫られます。あるときは、幹部、従業員、銀行に一斉に反対される中で、なお自分の信念に基づいて断行する必要があります。ある時は、一従業員の声に耳を傾けて、自分の計画を取り下げる必要もあります。
 経営者には慎重さと大胆さの両方が必要だると稲盛さんは語っています。これは中庸という意味ではなく、時には慎重さ、時には大胆さを見せるバランス感覚が必要だということです。
 従業員に対しても、ある時は「泣いて馬謖を斬る」がごとく接するときもあれば、ある時は、仏のような人情を示すことが必要と言っています。
 相反する両極端をあわせ持ち、局面によって正常に使い分けられる人格が、バランスの取れた人間性と言えるのです。

3.塾長講和第5回 「得意技をどう生かすのか」

第5回の塾長講和では、稲盛さんが多角化について語っています。京セラと言えば多角化で成功した企業の代表例。下記は2021年統合報告書から成長の軌跡のスライドをとってきましたが、製品ラインを拡大しながら成長してきた京セラの姿をよく表しています。会報誌発行時は1993年ですが、京セラのサイトを見ても1993年当時の売上は確認できませんでした。1997年が約7000億の売上のようなので、グラフから見るに5000億くらいでしょうか。直近の2021年3月期は1.5兆円の売上ですので、このインタビューの時期から3倍程度の規模に拡大していると思います。

 インタビューでは京セラ初期の多角化事業である、クレサンベール(人口エメラルド)、太陽電池、バイオセラム(人工骨)、切削工具について語られています。

飛び石は打たない
 稲盛さんの多角化への基本的な方針は、得意な技術の延長戦上になるからうまくいくという考え方のようです。飛び石は打たない、得意技を活かせという表現で多角化は進められたようです。
 1973年の第1次オイルショックによるエネルギー危機問題に危機感をもち、化石燃料に替わるエネルギーとして、太陽電池に気がついたそうです。そして、セラミックの結晶技術の延長性にあるシリコン太陽電池、エメラルドの合成、セラミックとメタルの複合体であるサーメットを開発して超硬合金より硬い切削工具への分野へとでていったそうです。
 もう一つの人口骨は、当時歯科用インプラントの研究をしていた大阪歯科大学教授に会った際に、人体内で腐食しないセラミックがないかという相談をうけて人工関節事業を始めたそうです。
 4つの多角化事業を同時に走らせて、太陽電池は20年間赤字でやっと今トントン(1993年当時)、宝石も赤字がものすごいですが、一度も「やめや」と言ったことはないと語っています。現在(1993年当時)、この4つの事業で年商500億円、利益が1割とのことで多角化の成功が語られています。

多角的・多面的展開を
 
稲盛さんは社内では、「多角的・多面的展開」という表現をしていたそうです。ここで、多面的というのは、市場を日本、東南アジア、ヨーロッパ、アメリカと面で捉えることで、それは企業の安定度を高めるためだそうです。企業の安定度という点でもそうですが、今日の京セラの成長を見ると、多面的展開を目指しグローバル化を推進したことが、規模の拡大に大きくつながっていると言えるでしょう。
 また、「飛び石は打たない」という稲盛さんですが、実は、飛び石を打っていますし、本人もそのように答えています。電卓のシステックとオーディオ・通信機器のサイバネットの合併、ヤシカの合併など。ヤシカの合併は、下手に資金援助をせず、従業員がかわいそうだから一発で「合併」をしたそうです。その後第二電電創設時には、ヤシカの人材に助けられたそうで、人助け、善を成せばいい結果が返ってくると語っています。

まとめ
 本記事からも慎重さと大胆さをあわせ持つ稲盛さんを垣間見ることができました。結局飛び石は打たないけど、必要な時には飛び石を打っているんですよね。まさに、塾長理念にある「両極端をあわせ持つ」があって、京セラの多角化は成功してきているのだと思います。今回は以上です。


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