生産技術の種類と特徴について
以前に半分思いつきでツイートした内容で、生産技術者にも扱う製品によって大きく3種類あって、それぞれ求められるスキルが違うという話をしたら思いのほか反響があったので、より詳しく解説する。
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この記事でわかること
・生産技術は大きく3種類に分けられること
・それぞれの生産技術者に求められるスキルは異なること
・休日出勤はどの種類の生産技術者が多いのか?
1.はじめに
まず大前提として、この記事は完全に実体験をベースにした記事である。
あくまで自分自身(N=1)での話なので「自分の話とはあてはまらないぞ!」というケースは御多分にあることはこちらも重々承知している。
この点は自分自身もわかっているということを理解頂いたうえで読んで頂きたい。
2、生産技術の種類について
では改めて生産技術の種類について。
結論から言うと、
①量産系
②非量産系
③プラント系
これら3つ。
どちらかと言うとこれは「生産技術者の仕事」としての種類と言うよりも、「メーカーとして生産する製品」としての位置づけである。
まず最初に断っておくこととして、これらの区分けは誰かが定義しているわけではなく、自分が勝手に区分けしたものだ。(国や企業などが定義している様子は見つからなかった)
まずはイメージ合わせとして、次からの章を読んでほしい。
①量産系
まず量産系。
自分のイメージとしては「製品が固体で、見込み生産で大量に生産しそうなもの※」である。
※「しそうなもの」と表現したのは実際にそうしているかはわからないため
具体的には以下のようなもの。
・自動車
・家電
・(オーダーメイドでない)家具
・(固体となった状態のプロセスにおける)食品
・(固体となった状態のプロセスにおける)医薬品
②非量産系
次に非量産系。
自分のイメージとしては「製品が固体で、受注生産で少量を生産しそうなもの※」である。
※「しそうなもの」と表現したのは(以下略)
具体的には以下のようなもの。
・航空機
・船舶
・工作機械
・鉄道車両
・重機
③プラント系
最後にプラント系。
自分のイメージとしては「製品が流体または粉体で生産プロセスの大半が移送に費やしているもの」である。
工場のイメージとしては、「配管がうねうねしている工場」である。
具体的には以下のようなもの。
・素材(鉄、アルミ、樹脂材料など)
・化学(薬液など)
・飲料
・(流体または粉体状態のプロセスでの)食品
・(流体または粉体状態のプロセスでの)医薬品
3.それぞれ求められるスキルは異なる
自分自身は今回提示した種類全ての生産技術を経験している。
その実感として、それぞれに求められるスキルは異なる。
各種類で求められるスキルは以下と考えている。
①量産系
まず量産系に必要なスキルについて。
・FA知識
・IE手法
・フットワーク
量産系は大量にものを作るという性質上、自動化が進んでいる。そのため、FAに関する知識は必須である。
さらに、量産する製品というのは一分一秒単位で製品を速く作ることを求めるし、管理もする。そのため、IE手法に関する知識も必要である。
また、フットワークの軽さも求められる。その理由としては大量にものを作る性質上、ラインを止めると会社にとっての機会損失が大きいため、すぐに生産を再開したいためである。何かトラブったら、とりあえず暫定で流せそうな方策を考えて品を流し、その後恒久対策を考えるといったことが多い。
②非量産系
次に非量産系。
・公差
・マテリアルハンドリング
・金属加工知識
非量産系は①量産系と比べるとそこまで自動化していないため、FAに対する知識は求められることは少ない。もちろんFAによって生産することもあるが稀である。(数が流れない関係上、どうしたってイニシャルコストはかけにくい)
代わりに、自分が扱っていた製品は図面寸法をどのようなプロセスで守りながら組み立てていくか?という仕事だったので、図面の公差をどのような手段で守るのか?という観点で、公差とそれを守るための治具立ての知識が求められた。
また、完成品はもちろんとして、扱う部品ですら手で運べるようなサイズ・重量ではなかったので、マテリアルハンドリング(クレーン、ドーリー、トラニオンなど)に関する知識も求められた。
また、非量産系は大物が多いという事情もあり、その製品自身が金属で作られることが多い。そのため、金属加工に関する知識を求められることが多い。(鋳造、機械加工、板金、溶接など)
フットワークの軽さに関しては②非量産係はプロジェクトとしての期間は長く、①量産系ほど求められないという印象である。
③プラント系
最後にプラント系。
プラント系については①量産系や②非量産系とは少し毛色が異なる。
プラント系で必要な知識は以下である。
・流体力学
・材料力学
・化学
・施工方法
・(プラント関係の)法律知識
プラント系は①量産系、②非量産系と異なり、流体力学や材料力学、熱力学など基礎物理学が必要となってくる。
さらにプラント系は化学反応によってものを作る側面から、ある程度化学を知っておく必要もある。
また、プラントを建築、改造するための施工方法や、危険物法や建築申請の絡みなど、法律関係の知識を使うことが多い。
逆に公差に関しては考えることはほぼ無い、又はあってもかなり鷹揚である。理由として、プラントは現合合わせの文化なのでミリミリと公差を計算することはあまりないためである。
ちなみにプラント系は「機械の総合商社」的な仕事をすることも多い。そのため、仕事を通じて広い技術領域と扱えることは魅力である。(ただしFAに比べるとややローテク)
ここまで書いた通り、①量産系/②非量産系/③プラント系は仕事において違った頭の使い方を強いられる。
そのため「同じ生産技術だし余裕だろ・・」と油断していると冷や汗をかいたりするので注意が必要だ。
4.どの種類の生産技術者が休日出勤が多いのか?
生産技術者にとって切っても切り離せない休日出勤について。
まず大前提として、休日出勤でも2つのケースがあり、
(1)そもそも仕事量が多くて休日も仕事をしないと終わらないから仕事をする
(2)(ラインが止まっている)休日に工事などの要件で仕事をする
上記2ケースがある。
今回は(2)のケースの話をする。
結論から言うと、①量産系(コンベア生産)>>>①量産系(セル生産)>③プラント系>>②非量産系である。
(実体験からの感想)
①量産系に関しては既存の生産設備を止めて改造するようなことが多いため、どうしても工場が停止している休日に出勤して工事の対応や条件設定を行う必要がある。そのためどうしても休日出勤は多くなる。
ただしこれは①量産系でもコンベアによる生産方式を取っている企業での話で、セル生産方式を取っている企業はそこまで休日出勤はない。
②非量産系はとめどなくものを生産するということは無いので、生産準備をする時は既存の品を生産しながら平行して準備をすることができた。
そのため休日出勤は非常に稀である。
③プラント系についても、意外と休日出勤はそこまででもなかった。
メインで稼働させている系統を休日に休止させ、その間に工事をするというケースは考えられるが、自分はそのような経験はなかった。
以上であるが、扱う製品によっても変わると思うので、参考程度に認識していただきたい。
ちなみに自分自身のこれまで最も休日出勤が多かったときを調べてみたが、15回/年だった。(自分が①量産系のコンベア生産方式で生産する製品の生産技術者だったときの話)
一定の参考にしてもらえればと思う。
5.ここまでの各種類まとめ
ここまでをまとめる。
これから就職する方、転職をしようとしている方に一定の参考になれば幸いである。
最後に繰り返すが、これはあくまで自分が経験した中での話なので、個別の事情はわからない。自分の勉強のためにもtwitterで意見を頂けると幸いである。
終わり
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