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「名画の色」に触れて気分転換を! 3分でわかるマティスの色彩 —『新装版 色の知識』試し読み
不安な状況が続き、どうしても気分がふさぎがちになりますが、こんな時こそ色の持つパワーが気持ちを豊かにしてくれる気がします。名画の色や歴史、国の色、550色を紹介する『新装版 色の知識』(城一夫・著)から「色の魔術師」と呼ばれたアンリ・マティスに関するページを無料公開します。気分転換に役立てば嬉しいです。
アンリ・マティス(1869〜1954年)
フォーヴィズム(野獣派)を代表するフランス人画家である。最初、法律家を志すが、 病気療養中に絵画に興味をもち、象徴派の画家のギュスターブ・モローに師事する。その後、新印象派のシニャックとの交流を経て、原色の鮮烈な対比による大胆な画面構成を試みるようになる。1905年にはサロン・ドートンヌに「帽子の女」や「緑の筋 のあるマティス夫人の肖像」などを出品し、マティスやその仲間の原色調の絵画によって「野獣派」と評判をとった。以後、マティスの絵は、師のモローが言ったという「君は 絵画を単純化するだろう」の予言通り、三次元の絵画を二次元に単純化していった。
マティスの特徴は、1西洋絵画の伝統であった透視画的三次元空間を単純な二次元平面に還元したこと、2物体を固有色から解放し、自由な色彩を使用したこと、3 空間、物体、色彩など全ての絵画的要素を単純化し、抽象化したことなどをあげることができる。例えば1に関していえば、初期の代表作「赤の調和、赤い室内」や「赤いアトリエ」では、伝統的な三次元的絵画空間を否定して、室内空間の奥行きがなく、連続的に赤が一面に塗られたままで処理されている。また2については初期の代表作「生きる喜び」や「水辺の日本娘」では、形態は非定型で明快ではなく、任意の原色 調の色彩が自在に塗彩されているだけである。また3についても「音楽」「ダンス」を見れば分かるだろう。ここでは、マティスは人物を輪郭線で括り、デフォルメするとともに、 色彩を単純化し、「空の青、人体のピンク、丘の緑」の3色に絞っている。20世紀の絵 画革命は、「色彩の魔術師」といわれたマティスから始まる。「私は自分の感覚を表現するように色を使おうと努めているだけなのです」は、1949年のインタビューの言葉である。
『色の知識 新装版』は4月下旬発売予定。マティスだけでなく、フェルメール、モネ、ゴッホ、ゴーギャン、ロートレック…などなど、世界の名画の色彩をわかりやすく解説しています。
編集:田中