桑島智輝 写真集 『我我』『我旅我行』に寄せて
写真家・桑島智輝は、その妻で俳優の安達祐実を、毎日撮り続けている。
レンズを挟んで営まれる夫婦の赤裸々な日常をおさめた、写真集『我我』。
その続編で、4度の旅と、2020年4月以降、世界が変わったその後の「旅」のような日々を記録した『我旅我行 GA RYO GA KO』。
この2冊の写真集をより多くの人たちに知ってもらい、読んでもらいたい。
その共感の輪を広げたいと考え、各界の著名人の方にコメントを寄せていただきました。写真集をちょっと覗いてみるつもりで、ぜひご覧ください。
武田砂鉄さん
どこかを見ていた人が、こちらを向く。
こちらを見ていた人が、どこかを向く。
安心するのに、不安にもなる写真集でした。
武田砂鉄(ライター)
辛酸なめ子さん
何ヶ月かに一度、そういえば安達祐実さん元気かな……と全く知り合いでもないのに、ふと、気になることがあるのは、彼女が「国民の妹」的な存在だからでしょうか。写真集「我我」を開くと、ただ「元気」という単純な言葉では表せない、私たちと同じように体調がいい日も悪い日も、明るい日もダウナーな日もある、リアルな日常が目の前に現れます。「我旅我行」は、旅先で美しい自然に負けないほどの彼女の存在感に圧倒されますが、「我我」を見返して、普段の素の姿も知っているという親近感に満たされます。2冊の写真集を何度も見ていると、友人の家族みたいな感覚に……。桑島智輝さんは安達さんと結婚したという武蔵美の星。安達さんは芸能界の星。でもその星は地球とかなり近い光年に存在していていつでも行き来できるのです。
辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト)
青葉市子さん
窓辺の鳥をそっと見入るように。
声をかける代わりに、写真機があるように。
同じ食べ物や、同じ景色、同じ室温で生き、究極に近く交わることのできる、しかし、死ぬまでそれぞれの身体と心をもったもの、同士。
窓辺に便りを届けるように。
雨、風に並ぶ、写真機の音。
青葉市子(音楽家)
北村匠海さん
相愛とは。
2人の間に流れる愛しさに溢れた空気が写真からダバダバと駄々漏れている。
それを隙間から覗き見している感覚にさせてくれます。
例えるならそれはもう''ジョンとヨーコ''のような。。
愛だなぁ。
ずっと抱きしめられている感覚。
夫婦という形だけではなく、男と女の愛の渦巻。
大好きな2人の大好きな作品です。
北村匠海
カツセマサヒコさん
写真集というものを、普段あまり買いません。そこに物語や生活を感じられないと、ただ「きれい」で感想が終わってしまうから。『我我』と『我我旅行』には、物語があり、生活がある。桑島智輝と安達祐実は、夫婦であり、子にとっての両親であり、撮影者と被写体であり、プロの写真家とプロの俳優であり、個人と個人である。その関係性が、写真ごとに変化して、うねりを見せている。『我我旅行』では、さらにそこに、『旅先』と『自粛期間中の自宅』という対比も交ざる。これだけ立体的になると、一本の映画を観たような充足感が走る。何度でも見返したい。写真は生活の記録であり、物語の束なのだと教えてくれる。
カツセマサヒコ(ライター/小説家)
能町みね子さん
こんなふうに撮ってほしいなんて口が裂けても言えない、もし桑島さんに撮ってもらえる機会があったとしても拒否してしまうかもしれない。満たされているのに気持ち悪い、つるつるしているのにべとべとしている。この写真集の存在を知ってしまったら手に入れるしかないでしょう。この本に宣伝文句を書くのは無理なのでこのくらいで勘弁。
能町みね子(文筆業)
続木順平さん
まず言っておくと、この写真集は安達祐実目的で見ないほうがいい。そういう人はこの本で時々出てくる男に、あ、なんだなんだ、これが桑島か、いいな嫁さんが安達祐実で好きに撮れて、なんだ風呂でも撮りやがって畜生、などと悪態しか出てこないため、本来この写真集が表現している“カメラマンと女優の「我」”、“夫と妻の「我」”が対峙する緊張と緩和のある生活について穿った見方しかできないばかりか、やがて出産を経てあらたに“父と母の「我」”が芽生える心の動きひとつにも共感できないという、まるでピントの合わない感情しか持てないからだ。
ここで感じるべきは、ああ俺は家に仕事を持ち込んでいなかっただろうか、自分勝手な優しさを押し付けていたかもしれない、幸せはいつも近くにあったのだと、ページをめくっては自分の生活への思索に耽り、さて、今日ははやく家に帰ろうかなどと家族、ひいては誰かを大切にする気持ち、しかし仕事も同様にかけがえのないものだと、その入り混じった感情が日常の風景をいっそう際立たせているという気づき。だから安達祐実目的で見るとダメなのだ。自戒を込めて。
続木順平(『Quick Japan』編集長)
池田エライザさん
とある夫婦の黙示録。視界に映る他者の人生。それは誰の視点だったのかわからないあまりに生々しい夢のようで。
2人は時たまこちらを見つめながら、それぞれの幸せの形を静かに問いつづける。
池田エライザ(女優)
書誌情報
書名:我我
著者:桑島智輝 安達祐実
構成・デザイン:町口景
□ 判型:A5
□ 総頁:168 頁
□ 製本:上製
□ISBN978-4-86152-756-2 C0072
定価:2,750円(税込)
https://shop.seigensha.com/collections/photograph/products/978-4-86152-756-2
書名:我旅我行
著者:桑島智輝 安達祐実
構成・デザイン:町口景
□ 判型:A4
□ 総頁:104ページ
□ 製本:並製
ISBN978-4-86152-815-6 C0072
定価:2,860円(税込)
https://shop.seigensha.com/collections/photograph/products/978-4-86152-815-6
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