工藤あゆみ『今日は自習にします』の今日のこぼれ話 vol.13
しあわせの計算、人生の作文、月のように満ち欠けする体と心……。
45の教科と学校の時間をキーワードに、日々を大切に歩むヒントを絵とことばで紡ぐ『今日は自習にします』(工藤あゆみ著、2023年6月下旬発売)。
本書の刊行を記念して、書籍掲載作品の一部と、その作品に著者が寄せたことばを「今日のこぼれ話」としてご紹介します。
中学校の保健の教科書には思春期の心と体について書かれたページがありました。
当時の自分の身に起こっている変化は、いくつかのキーワードと数行の文章で説明がつくようなことではないように思え、そして「苛立ち解消に運動を」と書かれているのを読んで運動が大好きだった私はそんなためにやってるんじゃない!と余計に苛立ったのを覚えています。
少しずつ丸みを帯びていく体に相反して心は鋭敏に尖り、些細なことに震えたり凹んだり。
思考には軸がなく、行動はいきあたりばったり、胸には何かがいっぱい詰まっているのに何ひとつ言葉にならない。
何もかもがチグハグでした。
「その膨らみ始めた胸はね、あなたがあなたに向けられた誰かの優しさに気付けるようになり、受け取り、そこに大切に仕舞い込んだからよ。」
例えば、そんな風に説明されてみたかったな。
子供から大人になっていく理不尽な過程の、思いっきり非科学的で非論理的でとびきり優しい解説がほしかったな。
そんなのもあってもよかったのにな。[保健]
書籍情報
今日は自習にします
著者:工藤あゆみ
定価:1,980円(本体1,800円)
アートディレクション:小熊千佳子
判型:180×140mm
製本:コデックス装
総頁:72頁
ISBN:978-4-86152-920-7 C0071
https://www.seigensha.com/books/978-4-86152-920-7/
著者プロフィール
工藤あゆみ(くどう・あゆみ)
1980年岡山生まれ。イタリア国立カッラーラアカデミア美術大学絵画科卒業。絵と文章からなる作品を中心に独自の世界観を展開、ヨーロッパや日本で発表を続ける。
2021年第14回岡山県新進美術家育成「I氏賞」大賞。
ボローニャ国際絵本原画展2012年、2019年入賞。
プレミオサンフェデーレ大賞2011/2012(ミラノ)2位。
2018年「はかれないものをはかる」2021年「キスの練習をしています また会える日のために」(ともに青幻舎)2022年「il sospiro della mamma」(Lazy Dog Press)を刊行。
2002年よりイタリア在住。現在、ミラノ近郊の街に彫刻家の夫と娘と暮らす。