イルルカSPにおける無霧・白捨て身
序論
先日の記事で無霧・白捨て身構築が3DS時代に大きな力を持っていたことは述べた。本稿ではそれをイルルカSP仕様に合わせて改変を加えたパーティの内容と、SPにおける環境変化で対戦や立ち回りにおいてどのような変化が生じたかについて記述する。尚、無霧・白捨て身構築の基本的発想については3DS版を前提に詳細な議論を既に行ったので本稿では省略する(参考を参照)。
SPにおける無霧
セバスチャン
スキル、武器の鍛冶共に3DSとほぼ変わらない。但し、邪竜神の叫びに対ししっぺ返しが機能しないことから身代わり+しっぺ返しの運用は難しくなった。赤霧パーティでしばしばスモボ名もなき闇の王や超速リーズレットのようなマインド耐性の埋まらない異常使いが採用されることからお色気を採用。また絶対零度や煉獄火炎(特に前者)が増加した為マインド耐性を重視し、狭間の闇の王よりもねぶた魂を優先している。系図は当然HPと攻撃力を上げられるドラゴン系で、執事っぽい雰囲気のある杖持ちモンスターとして竜博士系統を並べた。4枠に対して無霧で相打ちを狙う際に亡者の執念SPのお陰で無理なく通常攻撃を選べるのは強化点(3DSでは諸刃斬りするか亡者に追い込まれる読みで他の技を使うか判断が必要だった)。無霧は表に置かれ、裏でもメガザルダンスを使う訳でもないので秘めたる力はSP化しない。
キラーマジンガ
SPにおけるステータスインフレ(両親のレベルや先祖の系統によるステータスの割合増加)を受け攻撃力アップSPの価値が低下。火力の確保はそれに代わっていごっそうを採用。いごっそうによって3DSでは武器に付けていたスタンダードキラー、メタルキラーが不要となった為、マインド耐性と混乱耐性を上げる。これでマインドは無効となり超速での行動が安定し、混乱弱点を塞いで邪竜神の叫びの脅威を減らす。個体値は3DSと同様。系統補正も当然ドラゴン。機械のモンスターということでメタルドラゴンとメカバーンを系図に入れ、金ぴかのメカバーンの近くにグレイトドラゴン、黒っぽいマジンガの近くにブラックドラゴンを配置。特性は当然暴走機関を強化するとして、残りは捨て身4枠を重く見てギガキラーと常にマホカンタ。
ティコ
スキル、個体値、武器、どれも3DSから変わりなし。但しステータスインフレによってHPが1000を超え、最後の足掻きに1発は確実に耐えられるようになった。またMPの向上により、武器の消費MP節約をスタンダードキラーに変える選択肢も浮上。系図は個体値で上げたいステータス(HP、MP、素早さ)と完全一致するゾンビ系。死神貴族系の色違いを網羅した家系図。
スライム
オンライン他国マスターで仲間にした個体はレベル1、ステータスはその種族の最低値になるということを利用して入手した個体。そのような入手法であれば配合の過程で苦労して素早さを下げる必要がないので、個体値調整や両親のレベル、系図のモンスターの系統によるステータス補正を完全にかけることが出来る。個体値はHMadsWで、他に上げたいステータスも特に無いので系図はHPとMPを上げられるドラゴン系。ゾンビ系でも同じことだが、系図を魔竜ネドラで埋めたかったからこうなった。焼け付く息を吐きドルマ呪文を唱えられるというのがネドラとこのスライムの共通点。状態異常攻めをするのが仕事というのは3DSと変わらないが、ため息のスキルはSPで新登場したアルダララに変更。モンスター追加によりリバースパーティに対し死神の息吹の効果が期待し難くなったことと庇う+体技予測するはぐれメタルの庇うを解除出来る作戦封じの息を覚えるのが目的。これに伴い眠り耐性も落ちてしまっているが、特性強化によって眠り激減の信頼性がほぼ無くなっている為許容範囲と判断。それに応じて武器の眠り耐性+も消している。MPが3DSより増えているのでイオグランデ、メラガイアー、ドルマドンの攻撃呪文もAIに許可させている。スライムを配布してくれたのは小梢佑治さん。
SPにおける白捨て身
ベビークラウド
特性強化によってパーティ内で1匹だけ発動すれば十分な凍て付く波動持ちのモンスターの人数を増やすメリットが小さくなったこと、異常耐性が高いモンスターの使用率が増えたことからゾーマズデビルではなくベビークラウドを採用。スキルもそれに応じて標準的なものに。ステータスインフレによって幻魔の獄で削らなければならないMPも増えたのでバイシオンの価値は上がっている。個体値はHmaDSw、ゾンビ系図。HPと素早さを上げるのは当然として、守備力はスクルトによるロック性能を高める為に選んだ。MPは消費の激しい特技を使わないので低くて困らない。武器はマインド耐性+、邪竜神対策の混乱耐性+、麻痺弱点をパーティに複数作らない目的の麻痺耐性+を選択。
ダークドレアム
個体値は同様だが、スキルに関してはSP環境に応じて大きく変更。特性強化によってブレイクからの異常撒きが強くなった為、梅干し女王とSP新登場のJESTERによって眠りと混乱を無効に。修羅の獄は無くなるものの、グランドネビュラとヒュプノスハントを得る。ヒュプノスハントは眠りや混乱を使うベビークラウドと相性が良い。リバースに対して使えるアンカーナックルも有用。残る1つはリーズレットの吹雪呼び対策でマヌーサ耐性を埋める白虎の進撃。チャンピオンSPを削ったことで失った回し蹴りの代わりの森羅万象斬、天衣無縫斬の他、仁王斬りを習得。武器に会心出易いとメタルキラーを付けているのは通常攻撃ではぐれメタルを倒す為。連続の3ヒットのうち1発でも会心となれば粉砕することが可能。スクルトで守備力を高めたメタルを突破する手段を用意したかった。はぐれメタルを会心で倒せれば赤庇う相手に戦って得点勝ちを狙えることもある。その代わりスタンダードキラーは失われているが、狙い通り眠り・混乱が通りヒュプノスハントする場合にはダメージ999カンストは容易なので無くても問題は小さいだろうと判断。系図はドラゴン系。闇、光、時空の竜を祖父母に置いた上で両親はDQ6と3、SFCのDQ本編の隠しボス同士の配合。拘りの逸品。
オルゴ・デミーラ
特性強化によって凍て付く波動を浴びる可能性が高まり、オルゴ・デミーラのバイキルト(バイシオン)という次ターン以降の火力アップを狙う行動はアドバンテージにならなくなったこととアンカーナックルの有用性から、オリハルゴンをJESTERに変更。焼け付く息は相殺でカバーする前提で武器の麻痺耐性+はマホトラ耐性+に変更し、ギガ・マホトラ使用者の増加に対応。特性強化はカウンターSPは役立たないので、ベビークラウドで眠らせた相手へのダメージ増になる眠り攻撃SPに。系図はドラゴン系で、オルゴ・デミーラにギガントドラゴンやしん・りゅうおうを配合しているのはGBCのDQM2においてその配合がオルゴ・デミーラ(変身)を作る方法であったことに由来。個体値は変更無し。
大魔王ウルノーガ
エルギオスから変更。時々白い霧は無くなるが、状態異常への耐性が高い。それだけなら行動遅い新生エルギオスでも良いが、こちらは武器込みでマホトラ耐性激減に出来るのが魅力。火力インフレに対応する為にブオーンでHPバブルを習得させ、スモボから焼け付く息が無くなり、またダークドレアムの麻痺耐性を上げる余裕も無いのでアストロン習得スキルも焼け付く息が得られるスラ忍ブラウンに変更。HPバブルがあるので個体値でHP上げの必要が薄くなったと判断し、個体値はhMaDsW。守備力を上げるのはスクルトによるロック性能を高める為だというのは他のモンスターと同様。系統補正はMPと守備力を上げられる悪魔系。ウルノーガと同じDQ11出身のフェアリーバット系の色違いで揃えた。闇の波動等で呪文封じになると厄介なので呪文封じ耐性弱点は武器で消している。
SPにおける環境変化
以上述べてきたように、無霧・白捨て身を構成する個々のモンスターはステータスインフレやスキルの追加によって性能が3DS時よりも上がっている。であるならば、SP環境においても強いと言えるかというと、これは難しい。SPの新規要素をより活かしたパーティには不利を取ることが多いからである。具体的にそれがどういことなのか、無霧の先攻制圧、白捨て身のスクルトや幻魔の獄によるロックという戦法のコンセプトの実現難化という観点から議論する。
無霧の先攻制圧というコンセプトについてであるが、これは①先攻を取るのが難しくなった②先攻を取っても制圧し切れない、という2点で厳しくなっている。
先攻し難いということに関しては、1枠捨て身と超行動速い物理アタッカーの双方の価値が落ちていると言い換えることが出来る。3DS環境ではスモボのステータスは低く、2匹で捨て身を使えば1匹のスモボを倒すのは容易であった。アタックカンタを持つスモボも理論上は存在したが、行動回数が少ない、或いは超行動速いを持てない為、有用性に乏しく採用されなかったり超速マジンガの幻魔の獄で無力化可能であるのが通例であった。しかしSPにおいてはその常識を覆すモンスターとして超行動速い、常にアタックカンタ、AI2~3回行動、超ガードブレイクを併せ持つスモボとして、スモールボディ新生した名もなき闇の王が登場した。彼に対しては捨て身も超行動速いも先制することは出来ず、異常耐性が完全ではない無霧のメンバーは状態異常で容易に止められてしまう。唯一上を取る手段としてセバスチャンに新生したお色気やティコのラブリーがあるが、確率的であって確実とは言えない。
また、超速スモボを除いても、キラーマジンガは物理アタッカーという時点で超速の中では素早さが劣り、相手に先制され易くもなっている。物理耐久を落とさずに攻撃力を上げる代償として素早さ個体値を下げているのは3DS時代も同様であるが、SPではそれに加えて先祖の系統によるステータス補正という概念が追加されている。攻撃力を上げられる系統で先祖を構成すると素早さを同時に上げることは出来ず、攻撃力を上げる必要の無い魔法系モンスターよりも素早さで劣ることになる。SPで素早さ勝負になるそのような仮想敵として代表的なのが超行動速いを新生されたリーズレットである。更にリーズレットの場合、時々赤い霧の特性を持つ為、捨て身によって素早さを無視して先制するという手も取り難い。素早さ勝負をするにしても、幻魔の獄が使えない等技の選択肢が制限される。加えて、吹雪呼びの特性によってマヌーサをかけてくるので、マヌーサで命中率の下がる物理攻撃主体のモンスターは尚更動かすのが困難となる。赤霧パーティでは先述の名もなき闇の王と同時採用されることもあり、不利な読み合いを強いられる。
先制の難しさと言うと、これまで述べてきた通常の行動順(主に赤霧)における先制性能の低下だけでなく、シャッフルパーティの増加についても述べなければならない。3DSにおいてはスモボは無属性攻撃手段が少ない為メタルや大型等の高耐久モンスターには手も足も出ず、高い息耐性やカウンター、アタックカンタの採用された黒予測に対して何も出来なかったが、轟雷滅殺剣の登場や特性強化による火力インフレによりSPでは十分、というより作中ほぼ最上位の破壊力を得るに至った。それ故にシャッフルパーティが増え、捨て身でしか物理アタッカーは先制出来ない場面が増加した。捨て身で素早さの高いスモボを落としてからティコでラウンドゼロするという動き自体はSPでも可能ではあるが、3DSと異なりシャッフルスモボにスモボ以外の高耐久モンスターが採用されるようになったり(典型的には司令塔モントナー)、ゼロの衝撃や捨て身を覚えたモンスターの増加、また試行回数が嵩めば当然増える素早さによる行動順のランダム性による事故等、不安定性が増した。
そしてシャッフルパーティに関して述べると、先攻しても制圧し切れないという側面までも持っている。スピンスライムやどんぐりベビーのような最後の足掻きを持つモンスターを相手にする場合、その性質上、相手に全く行動を許さなかったとしてもこちらもダメージを負うことになる。1匹だけなら最大でも999ダメージに止まる為死者は出ないが、2匹以上存在するとティコはまず間違いなくやられてしまう。
次に白捨て身のロック性能の低下について述べる。白捨て身のロックは超速スモボによる先制異常撒き、捨て身、幻魔の獄による複合的なものである。幻魔の獄を使うのは行動順操作特性を持たないスタンダードボディのモンスターである為、異常耐性が高く捨て身でも倒し難いスモールボディの行動を阻止する能力は高くないと言える。3DS時代には異常耐性が高く1回の行動で大きな効果を発揮するようなモンスターはいなかったが、SPにおいては耐性の異様に高いモンスター(ぶちスライムベスや妖魔軍王ブギー)が多数登場し、攻撃では轟雷滅殺剣、回復においてはHPバブルSPからのメガザルダンスが追加され、そうはいかなくなっている。特にメガザルダンスで確定復活が狙えるようになったのが大きく、表に4枠モンスターを置いてそれを復活させて使い回す構築は、表の無霧で相打ちにしてでも4枠を倒しそれ以上は4枠対策を考えていない無霧・白捨て身にとって厳しい。白霧とスクルトによるロックも攻撃力非依存技で出せる火力が飛躍的に伸びたSP環境では強力とは言い難い。3DS環境では異常耐性が高いモンスターは行動順が遅いものに限られ状態異常攻めと幻魔の獄の相性が良く、異常が通らなくても1ターンでは致命的な事態には陥らない、加えて捨て身によってそれに関係した事故要素も減らせていたのだが、その当時と比較すると隔世の感がある。
とはいえ3DSで強力だった構築だけはあり、SPにおいても生半可な構築相手であれば寄せ付けない程度の強さはある。環境構築であっても、赤庇うくらいまでであれば一応勝機はある(瀕死会心採用型でなければ)。以下の画像はそれぞれリバース、赤チェイン、シャッフル、捨てゼロ、赤庇うとの試合例(対戦時期の都合上育成がこれまで記述してきた最新状態ではない)。
結論
本稿では3DSからSPへの変化に応じて改変した無霧・白捨て身構築の内容を記述し、その後イルルカSPでこのパーティが置かれた逆風について述べた。但し、元が3DSで強かった構築である為に全くの弱構築という訳ではなく、一定以下までの相手となら十二分に戦えることについても触れた。
参考
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