「標本」歌詞解説
1.はじめに
なんとなくヴィジュアル系バンドの曲のタイトルにありそうなフレーズを、僕もオリジナル曲のタイトルに付けさせてもらいました。
まあオムニバス企画の名前が"NO VISUAL, NO LIFE"ですからね。
普段ヴィジュアル系バンドとは名乗ってない故、ここで僕の中に眠るヴィジュアル系マインドを形にしましたよ、ええ。
余談はこのくらいにしまして、早速歌詞について触れていきます。
詩世界のストーリーとしては、「想いを寄せる女性を永遠に監禁、磔にし、その美しい姿を目に留めておく」という内容。
この曲が出来る前から、そんな内容の歌詞のアイデアはありました。
そしてこの曲が完成し、歌詞を考えたときにもう「標本」しかないと、そう思いました。
何せ最初にサビのメロディーが思いついたと時に浮かんだフレーズの1つが「十字架」、仮タイトルも「十字架」。
磔になるという点では標本と一緒ですね（ここまで何度も出てきたのにタイトルにならない「十字架」というフレーズ）。
まあやや物騒なストーリーではあるんですが、ここで表現したいのはその「異常性」や「怖さ」ではありません。
個人的に、言葉にしてしまうとなんとなく安っぽく感じてしまうのであまりはっきりいいたくないのですが、「愛」というやつです。
後日どこかで説明することになるでしょうが、主人公が持つその「愛」の形について軽く触れていきます。
まずそもそも、正攻法（仲良くなる→付き合う（やがて結婚））で想いが届き、受け入れてくれるのであればこんな気色悪い手段を取らないことははっきり理解いただけると思います。
逆にいえば、主人公は正攻法では想いを叶えるどころか届けられない、語弊を恐れずにいえば「恋愛弱者」なわけです。
そんな現実を打破するための手段として、常識的な考えがあるなら「自分を磨いて目に留めてもらう」とか、「ちょっとしたところから関係性を築く」などが挙がると思います。
しかし、ここで僕が描きたかったのは「世間の『純愛（のイメージ）』に対するアンチテーゼ」。
これも後日詳しくお話しするつもりではありますが、「世間の『純愛（のイメージ）』」に関する例を挙げるなら、メジャーなアーティストが歌う「想いは叶う」という内容、フレーズ。
僕も大人ですし、それをまんま信じるほど純粋な心はもう持ち合わせてはいませんが、まあ叶わない時は叶わないんですよ。
なんなら一度も叶ったことなんてない。
そんな現実の中で生まれたストーリーが「罪を犯してでも想いを叶えようとする」というもの。
人一倍持ち合わせた、「執着」と言い換えられるほどの「想い」。
そして、それを「法律」や「道徳」、「倫理観」という人として守らなければならない一線を越えてまで叶えようとする。
それも、なんならそれこそが「純愛」ではないのか。
といった思考の流れがあり、「標本」の歌詞「も」書いてます。
まあ結論をいってしまうと、答えは「NO」だと思います。
なぜなら、道を外れた手段を取ることで「想い」は届けられたとしても、本当の意味で「想い」が「叶い」はしないから。
僕が物語として描く「世間の『純愛（のイメージ）』に対するアンチテーゼ」とは、その答えと理由を含めることで初めて、完全に表現されます。
「人として守らなければならないものを全て捨ててまで『想い』を伝えた、伝わったところで、叶うことなどない」という1つの事実。
僕はそれを歌詞という形で曲に載せてリスナーの皆様に届け、是非「喜劇」として楽しんでいただきたいと思っています。
なぜ「悲劇」ではなく「喜劇」なのか。
これに関しても後日語ることにします。
それでは皆様。
お待たせしました。
詩世界の解説を始めることとしましょう。
※歌詞解説における補足
＜貴女＞
詩世界において、主人公が想いを寄せる女性のことを一言で表す際に使う単語。
2.歌詞解説
箱の中
ただ1人囚われた
美しい蝶が嘆く
箱の中というのはお察しの通り「標本箱」(=磔、および監禁場所)ということです。
そして、「美しい蝶」とは「貴女」のこと。
この時点で「貴女」が監禁されているイメージ。
空を舞うその姿に
魅入られた僕は気づいた
その姿がいつの日か
腐る時が来るのだろう
名前も知らない誰かの手に
触れられて美しい
翅が汚れることなど
僕は許しはしない
ここからはしばらく、「貴女」を磔にするまでの経緯説明のような流れが続きます。
前述の通り、「貴女=蝶」として言い表しているので、その姿を「空を舞う姿」と表現しています。
そして、当然生き物なので月日が過ぎれば衰え、死を迎える。
それを主人公はここで改めて実感します。
また、「名前も知らない～許しはしない」というフレーズは、「貴女」が自分以外の男のもの（言い方は良くないですが）になることが本人にとって「害」になると決めつけ、勝手に腹を立てる様子を表現しています。
人としてちょっとやばいねえ。
また、「翅」は「貴女」の外見的な美しさをひっくるめて表現しています。
「貴女が美しいままで
いられますように」と
願いを込めこの手に
握った針を突き刺す
（拉致した）「貴女」を監禁するシーン。
「標本」というタイトルなわけですから、それらしい表現を用いています。
あくまで「貴女」のため、「貴女」が永遠に美しくあるためにこのようなことをするんだと、思い込んでいる主人公の心情も表れています。
蝶は言う
「また翅を広げ舞い、
あの空へ帰りたい」と
もう 二度と過去と同じ空には
戻れない
全て受け入れろ
まあ知らない男に監禁されて磔にされて、喜ぶ人はいないわけで。
「貴女」も例外ではなく、解放してくれることを望みます。
しかしながら、主人公はその望みを叶えることはなく、むしろ自分の想いを押し通します。
あくまで「貴女」のためではなく、自分のために行動を起こしたことがより伝わるパートではないでしょうか。
貴女よ永遠に
美しくあれと
願いを込めて
僕らの箱庭へ
ただ生きて死ぬ
運命は無価値
「貴女」を主人公のすぐ近くに置くことができ、「やれやれ。一仕事終えたぞ」的な感じで主人公が落ち着けるシーン。
空は貴女を啄み食す
鳥が飛び交う地獄だ
そこから僕は救った
永遠に美しくいる貴女には
側にいて
その翅で
夢を見せてほしい
「空」は外の世界、「鳥」は「貴女」を傷つけるような他の男達。
主人公は自身のことを、そんな醜い世界から「貴女」を救った「救世主」と自覚している心情が出る場面。
そして、「貴女」の気持ちなんてこれっぽちも考えず、ただただ自身の気持ちを押し通し続けます。
時は過ぎ
貴女が望んでいた
未来さえ
通り過ぎた
今残るのは僕との未来だけ
さあ共に
2人だけの楽園へ
「好きになった男性と大切な時間を過ごし、やがては結ばれ、その先も幸せな人生を送る」という、「貴女」が望んでいた未来。
主人公が「貴女」を監禁し続けることで、その機会を奪い去る。
しかし、主人公が「貴女」に抱く想いは変わらない。
「もう素直に諦めて、僕を選べ」と言いそうな、そして同時に、「『貴女』はそうせざるを得ない」と確信を持っている心情を描きました。
「さあ共に2人だけの楽園へ」というフレーズが、主人公にとっては愛する女性と時間を共にできる希望の未来、「貴女」にとっては救いのない絶望の未来が確定したという事実が表れていて良いですよね（自画自賛）。
腐ることもなく
ただ針に留められ
生き続けることが
運命と知ったとしても
自らその命
断つことさえできない
貴女の未来も
翅も僕のものになる
「自由を奪われ望む未来は来ない。絶望の果てに命を絶つこともできないため、ただただ主人公の思うがままの状態でいるしかない『貴女』」
という現状を表現したパート。
「腐ることもなく～生き続けること」というのは、「貴女」が死んでもそのまま飾り続ける、つまりは「標本」とする主人公の望みを表しています。
主人公は「貴女」を、死んでも離さないつもりでいるわけです。
また、身動きどころか生死も主人公が握っているという現状から、「貴女」の持つ全てが（言い方は悪いですが）主人公の所有物（もの）になって物語を終えます。
3.おわりに
この曲が世に出るまで19曲が形となって世に放たれました。
・・・・・・なんか動物の話してるみたいだ笑
冗談はさておき、しかしながら、その中のどの曲と比較してもアクの強い詩世界を持っているが今回の「標本」。
曲展開もやや特殊ですし、これまでずっと僕の曲を聴いてくれている人にとってもなかなか新鮮じゃないかと思います（オムニバスで僕のことを知った人は色々調べてみてね）。
逆に、「こんな暗くて気持ち悪い歌詞、貴方らしくない」なんていう人もいるかもしれません。
まあ気にしないけれども。
何がいいたいかというと、ある程度の要素は維持しつつ今後も色々な曲を出していくつもりなので、今後もよろしくお願いしますという話。
そしてそれ以上に、どこよりもヴィジュアル系らしいオムニバスアルバム「NO VISUAL, NO LIFE」をよろしくお願いします！！
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