
短編小説「夜空に星を投げた」
(子どもの頃、母さんがよく話していた。
「死んじゃった人はみんな、星になって僕たちを見守ってるんだ」
って)
近くの高校に入学し、2年生になって3ヶ月が過ぎようとしている。
1年生の頃がとても楽しかったので、まもなく進級を迎える僕はその時が近づくにつれ、抱く不安も大きくなっていった。
いざその時が来てみれば、1年生の時に同じクラスで仲良くしていた友達も何人かいた。
安心した。
きっとまた、去年と同じように楽しい未来が待っているのだろう。
未来に対する不安が期待に形を変え、それが僕を突き動かした。
しかし、その行動が結果として僕の世界を変えてしまった。
これまでも何度か指摘されることはあった。
記憶に新しいのは中学生の頃。
元々小学生の頃は物静かと言われ、休み時間も教室の隅で本を読んでいることが多く、その様子を見かけた妹に心配をかけることもあった。
それが地元の中学に進学してから明るく、口数が多くなったようだ。
家庭訪問に来た担任の先生に母さんがそのことを話したら、「話せる人ができたのだと思う」と言っていたのを覚えている。
それがただ明るいだけであれば良かったのだが、少々度が過ぎていたようで同じ部活の同級生には「うるさい」と陰口を叩かれていた。
ただ、それでこの性格が治ることは一切無かった。
中学生の頃と変わらないまま高校に進学し、その性格で1年間問題なく過ごせてしまった。
そのおかげで2年生になった今、周りから人がいなくなった。
1年生の頃に仲良くしていた友人は僕以外で集まるようになった。
新しく同じクラスになった人達からも距離を置かれるようになった。
他でもない、僕自身のせいだ。
それでも学校に行かなければならない義務感と、家族に心配をかけたくない気持ちから憂鬱な気持ちを抑え込んで学校に通い続けた。
しかし、どうやら自分が思っている以上に限界が来ていたようだ。
日曜日の夜、残り少ない安息の時を大事に過ごすためにベッドへ横になる。
そして、思いつくままにスマホで好きな音楽を流す。
「終わってほしくないな」
そろそろ電気を消し、眠りにつこうとふと頭を上げると、窓からほんの少し夜空が見える。
星なんて1つも見えない。
けれど、その景色が昔、母さんが僕にしてくれた話を思い出させる。
そして、僕の中で何かが吹っ切れた。
家族の愛。
それが僕を止めてくれていた。
一線を越えようとする僕を食い止める足枷。
それを外し、僕は今自由になる。
さあ、新しい世界へ行こう。
時々喧嘩することもあったけど、頼もしい父さん。
明るくて優しくて、僕の悩みを聞いて支えてくれていた母さん。
僕よりしっかりしていて、時々厳しいけど僕を大事に思ってくれている妹。
僕は空からみんなを見てるから。
「今までありがとう。じゃあね」
僕は今、夜空に星を投げた。
原案:夜空に星を投げた
5th Single「夜空に星を投げた」収録
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