Livin' Underground 〜freeform breaks remastered 2022 〜 前編
seietsu / freeform breaks
リマスター版 再リリース
2022年現在、リリースより約10年の月日が経つこの作品の再リリースに際して、自ら当時を回顧してみようと思う。
まず、この作品を作った経緯を。
2005年に自主制作盤として「reconstruct-logy」というepを製作し、disk union経由でリリースした。
当時のjazzy hiphopなるシーンとサンプリングミュージックに対する畏敬の念という様な「何か」がそうさせたと言えるかもしれない。
兎角、ただただ、忘我的にサンプリングとプログラミングを繰り返していた様に思う。
アングラとは、ビートとは、サンプリングとは何なのか?
無論、未だ答えは見つかってはいない。
話を戻す。
reconstruct-logyのリリースから数日経ったとある日に当時、渋谷にあったレコードショップtribeから「ウチでレコードを作らないか?」といった連絡が入る。
DJやヘッズとしてなど、夜の街に繰り出していた人間なら、訪れた事がある人も多い場所だろうかと思う。
ただ僕自身は店の関係者の事を多くは知らなかったし、レコードショップとしてのイメージしか無かったが、数度のメールのやりとりの後、店舗に出向いた。
tribeを訪れた事のある人は、その景観を懐かしんで貰えると思うが、サイドにある試聴機や厳選されたレコードに気をとられつつ、店舗にいたスタッフのFK氏と話すウチに、自分の作品の構想や製作の意図に興味を持っているという事が伝わって来た。
無論、オーナーのnujabes氏も含めての話であるという事も。
瀬葉さん。
と僕はそう呼んでいた。
これも時代と言えようが、彼がtribeのポストカードの裏に、自身で連絡先と共にその名を書いて僕に渡したからだ。
nujabes
言わずと知れた傑物であり、僕の様な無名のアーティストとの関わりを知るものは、ほぼ居ないだろう。
ただ、この作品の完成は、彼無くしてはありえず、彼がこうした僕の様な無名のアーティストへのサポートもしていたという事の、一つの論拠として役立つ事を願い、彼との事も記しておこうと思う。
僕が彼に初めて会ったのもtribeだった。
僕は渡辺信一郎監督作品のファンであるので、監督の作品のテーマを担当した人物との邂逅は、いささか緊張していて、最初の会話の全ては鮮明には記憶していないが、製作に関する事...
特にフレーズの使い方に関して聞かれた事を覚えている。
それからは、幾度か彼の自宅でリリースに関する作業をこなしたり、カフェで段取りを話したりという形で事が進み、reconstruct-logyや製作中だった曲の中から、瀬葉さんの希望の曲がtribeより7インチとしてカットされた。
この間に色々と会話を重ねた訳だが、今思うとその中で個人的に印象深かったのは、カフェにいる時に、彼の曲がかかった事があり「あ、これ僕の曲、嬉しいね」と言いながら、僕に笑いかけたその笑貌である。
その顔は本当に嬉しそうで、何だか自分も嬉しくなってしまい二人で笑った。
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