私がママにこそ、一人旅をすすめたい理由
子どもを産み母親になると、圧倒的に1人の時間が減ります。
子どものため、家族のため、仕事のためと色々と優先しているうちに、自分が本当に何をしたいのかわからなくなってしまうこともあります。わたしの場合は、もともと読書が大好きだったのに、気がついたら読みたい本さえも分からないという状態になっていました。
そんな中、いろいろな偶然が重なり、今から2年前、子どもたちが7歳と3歳のときに、1人でバリ島に行くチャンスに恵まれました。
行くかどうか悩みましたが、思いきって自分のためだけに使う時間を大胆にとってみたことで、不思議と生き返ったような感じがしました。今振り返ってみると、少しだけわがままになって一人旅をしてみたことはすごく大切なことだった気がします。
いろんな事情で遠出をすることが難しい今日この頃ではありますが、お子さんの手が、ほんの少し離れたな……というママやパパたちにも届くといいな…などと思いながら書いてみたいと思います。
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2年前の6月、わたしは2人の子どもを夫に託し、バリ島行きの飛行機に1人で乗り込みました。仕事のためではありません。観光のためです。
飛行機のその小さな窓から見える街並みが、どんどん小さくなっていき、雲が見えてきた頃、気がつけば頬に一筋の涙が伝っていました。
それは、とても複雑な気持ちの涙でしたが、一時でもいいから完璧に1人になれたという嬉しさから、こみあげた涙でもありました。
その年の春、わたしは長年つとめていた会社を退職してフリーランスになることにしました。会社勤めのワーキングマザーをしていた時は、子育てに仕事にと毎日が目が回るように忙しかったのです。
でも会社を退職して、まだ新しい仕事も本格的に始まる間に、ほんの少し余白ができました。そして旅に出ることにしたのです。
お母さんブロックで、行くべきか散々迷う
そもそものキッカケは、夫の一言でした。
私が退職することになって、「これからは思いっきり自由な時間が増える!」と喜びに満ちた気持ちで、これから何をしようかと考えていた時のことです。
「せっかく退職するんだから、1ヶ月か2ヶ月か留学してきたらどう?やっぱり英語ができるのは大事だと思うしさ」
夫が、こんな事を言い出して、びっくりしました。
ちなみに夫は、あんまり後先の事を深く考えず、物を言う人です。私が1ヶ月いなくなって、子どもたちの世話をするのはどうするとか、あまり深く考えなかったのでしょう。やりたいことや、やるべきことがまず先にあり、後から、それをどう実現するか考えるというタイプの人です。
夫は、私の今後の仕事のためにも英語を身につけておいたほうが良いという信念のもと、どうやら、そう発言したらしいのです。
私は、それを聞いて「子どもの事を考えず、よくそんな無責任なこと言えるよね……」という呆れるような気持ちと、「やろうと思えば留学だってできるのかぁ……」という夢のような話にワクワクもして嬉しい気持ちにもなりました。
ずっと憧れていた留学。心から行ってみたいなと思いました、、、。
けれど、今はやっぱり、まだ幼い子どもたちのことが心配で、長くは離れていたくないという気持ちのが強かったです。子連れ留学も考えたけど、私は1人の時間が欲しいと思いました。
というわけで具体的に海外旅行に3泊くらいでいくのはどうかな?と計画してみることにしました。
3泊であれば、子どもたちがいても一生に一度のわがままくらいな気持ちで、許されそうな気がしました。それに、これまで何度か夫は海外出張にいっています。その度に、私が子どもたちを見てきたので、それなら借りも返してもらえる気がしたのです。
夫は、語学留学ではないことに多少不満を示しながらも、旅行については「そうなの?うん、いいよー」という感じで快諾してくれました。
というわけで、もともとアジア旅行が好きで、ずっと行ってみたかったバリ島ウブドに行くことに。バリの芸術の村としてずっーと訪れてみたかった場所です。ここならば、今まですっかり遠ざかっていた大好きな美術館めぐりやアートを堪能する時間が存分にとれるのでは?と思いました。
でも、日程を決めても、まだ少し迷っていました。留守中は、近所にすむ義理の両親に、困ったことがあったら助けてもらえるだろうから、少しは安心でした。でも、ちょうどその頃、小学生が路上で襲われるというニュースがあったりして、私が留守中に、もし仮にそんなことがあって子どもたちを守れなかったらどうしよう……みたいな気持ちもあり、まだクヨクヨと悩んでいました。
でも、友人などに相談して、「ぜったいだいじょうぶ、いきましょう!」と背中をおしてもらい、勇気を出していくことに決めました。
離陸の飛行機で嬉しくて、こぼれた涙
離陸した飛行機の中から外を眺めていたら、なぜだか泣けてきたのは私としてはとても意外でした。泣くほどに、1人きりになることを切望していたのだと思います。
もともとは、わりと1人でいることが好きなタイプです。周りの人がいると、相手の人の気持ちにひっぱられたり、気を使ったりして自分の意見を言えないことも多いです。集団行動も小さい頃から苦手で、自分の思う通り動けないことに、いつもストレスを抱えていました。
そんな私が母親になり、乳児期は授乳のために、ほんとうにまるっきり24時間子どもと離れない生活に入りました。(正確にいえば、わたしの場合、授乳できないとおっぱいが張って死ぬほど痛むので、離れられない状態だった)その後も、仕事と子育てに追われました。たまに数時間とか半日とか、自分のための時間をとったりもしていましたが、それでも何かしら我慢をしていたんだなと気がつきました。
もっと、こうなる前に定期的に子どもと離れて、友達と旅行したり、頻繁に自分のためだけの1人時間をとっても良かったのかもしれないとも思いました。
けれど、子育て渦中の私は、子どもたちが病気になれば、病院通い。不機嫌になれば、あれやこれやと右往左往し、どうしたら健康的な食事ができるか?すやすや心配なく眠れるか?学校や保育園行事を滞りなく回せるか?などに毎日奔走していました。平日は仕事で、あまり子どもと向き合えないので、たまの休日くらいはと、、自分のやりたいことは我慢して子どもとの時間を大事にしました。それが、間違っていたとも思わないのです。
でも、その中で気がつけば、すっかり自分というものを後回しにしてしまっていたのだと思います。
ウブドでは、何に遠慮することなく、自分のやりたいことだけを気ままにできます。それが、涙が出るほど嬉しかったのだと思います。
私は、さっそくウブドの棚田、美術館めぐり、ウブド王宮でレゴンダンスをみる、ウルワット寺院でケチャダンスを見る、ガイドブックに書いてあった美味しい豚肉料理を食べてみるなど、などなど、やりたいことを詰め込んだ旅程を立てました。
ウブド王宮でのレゴンダンスは、本当に幻想的でした。↑↑
1人でやりたいことを思いっきり味わって起こった変化
飛行機の中で、旅のお供に持ってきた本を読みました。長距離移動の時に、本を読むなんてことは、小さな子どもがいたら全くできません。
気ままに本が読めることに感動。飛行機の中で、自分の寝たいタイミングで眠れることに感動。いちいち感動しました。
バリについて、ガイドはメトリさんという女性にお願いすることにしました。いろいろ話すうちに、メトリさんにも娘さんが3人いるらしいということが分かりました。
私にも息子がいることを話しましたが、彼女から「息子さんたちは誰がみているのか?」と聞かれることは一度もありませんでした。「息子さんいるのね、ふーんそっか」と流してくれることの、ありがたさ。
絶対、誰かに聞かれると思ってひそかに警戒していたのです。でも、旅の最中で誰からも聞かれませんでした。ほんと良かったです。
ウブドでは、ネカ美術館で見たい絵をゆっくり見ました。ネカ美術館はほんとうに、素晴らしい美術館でした。
他には、拙い英語でシルクのろうけつ染めのワークショップに申し込んで、人生初のろうけつ染め体験したりしました。こんなにゆっくりと、絵と向き合うなんて久しぶりで本当に楽しかったです。
Silk Batik Painting @Capung Art Studios.
日本に帰国する日、私が泊まっているホテルまで出来上がったシルクハンカチを、先生がバイクにのって届けてくれました。
他には、夜、ウブド王宮でレゴンダンスをみたり、ウルワット寺院でラーマヤナとシータ妃の物語のダンスとケチャダンスをみて魅了されました。ちなみに家で、ケチャダンスの動画を息子たちに見せたら大受けでした。良いお土産になりました。笑
ウルワット寺院の夕日は綺麗でした↑
ケチャダンスの様子。観客も会場にぎっしりで、熱気がすごかったです。↑
夜は、旅の道連れに持っていった、エリザベス・キューブラー・ロスの『人生は廻る輪のように』を読みながら毎日眠りにつきました。いつもは子どもを寝かしつけしながら寝落ちしてしまうことも多く、夜、紙の本を読みながら寝るということもなかなかできません。なんだか本を読みながら、眠れるだけで幸せでした。
泊まったのは、KupuKupuBarong Hotelです。
鬱蒼とした山の中にあるホテルで、飾り気がなくて居心地が良いホテルでした。ホテルの敷地内には、至るところにお供え物がされています。
朝日が上るぐらいの時間帯には、どこからともなく山の奥の方から不思議な音が聞こえてきました。たぶん僧侶の方の唱えるお経らしきものだったのですが、それがとても神秘的でした。
このホテルのロゴは、偶然にも蝶のロゴで、持っていった本も「蝶」がテーマになっているのですが、このバリ島の旅は不思議と「蝶」にご縁がある旅でした。
旅行中は私の方が寂しくて、毎日、家族に電話していました。夫からは、そんなに電話かけなくても大丈夫だよと言われるほどでした。子どもたちは、もっと私の不在を寂しがってくれると思っていたのに、私が電話しても、薄ーい反応なのは予想外でした。笑
どうしたら、子育て中でも一人旅が叶うのか
いや、もう、これは、すべての子育て中のお母さんやお父さんにプレゼントしたいと思うような体験でした。というか、この体験をしたことで、私は、家族に以前よりも優しく接する事ができるようになったと思います。それもすごく良かったなと思っています。
でも、まずは泊まりでなくても、1日朝から晩まで、たっぷり自分のために時間をとるというのも意外とできないことだと思うので、そこから始めてもいいのかもしれません。
なかなか海外旅行は難しくなっているので、その次の段階では、近隣の県の高級ホテルや温泉旅行に一泊で行くとかも考えられますね。
どちらにせよ、家族の協力がなければ、実現するのは難しいところが一番のハードルですよね。今回、夫の両親にも協力してもらえたのは、ありがたかったです。とはいっても、一番ハードルが高かったのは義理の母に、私の旅行について告げる事だったのですが、それは私から直接ではなく、夫から伝えてもらいました。結局、旅行について特にとやかく言われることはなかったのはありがたかったです。
この、なぜ、私が旅行にすんなり行けたかについて考えてみたのですが、私が妊娠中のときから、夫が仕事とはいえ、何度も1人で海外に行っていた……ということは大きかったと思います。
それを見る度に私はうらやましかったし、その度に、1人で子どもたちを見なくてはならなくて大変でした。そういう点で、夫は私に負い目があったのではないでしょうか? だから、すんなりOKも出たのかも……なんて思っています。
というわけで、自分がもしそういう時間を取りたいと思うなら、相手にまずその時間をプレゼントしてしまう!というのもありかもしれません。そして、次は私の(ぼくの)番ね!とやるわけです。
ちなみに、日本では、子どもがまだ小さいうちの母親の1人旅というのは少ないと思います。でも、フランスではそういう時間は絶対必要だと思われており、母親の一人旅は当たり前らしいです。昔、聞いた友人の話が面白かったので、シェアさせてください。
友人は関東に住み、実家は沖縄です。友人は2人娘がいるのですが、上の娘をフランス人の夫に預け、まだ1歳の下の娘だけを連れて沖縄に帰省することにしたらしいのです。その話をフランス人の義理の母に話した所、「なぜ2人とも夫に預けなかったの?せっかくだから1人のほうがよかったんじゃないの?」と言われて、びっくりしたというのです。
それくらいスタンダードは違います。というか、国は違えど母親であっても父親であっても、一人の時間は必要なのは変わらないのではないかと思います。
というわけで、多くのお母さんお父さんが一人の時間を楽しめるように願っています。