乃木坂46「好きになってみた」の名曲ぶり――坂道サウンドと80年代ポップスの融合
5期生の加入や10thバスラを控えて上り調子といきたい乃木坂のはずが、件の不祥事で何かと騒がしい。
でもそんなの関係ねえ。
「やっぱ乃木坂だなー!」と思わせる名曲に出くわしてしまった。
「Actually」通常盤CP曲の「好きになってみた」だ。
とにかく一度聴いてみろ。
これぞ日本のアイドルソングだ!という透明感と幸福感に包まれている。何せ「La La La…」の甘美なコーラスで始まるAメロとBメロの80年代感が凄い。もはや日本にとっての「ベル・エポック」になってしまったあの古き良き時代への郷愁を誘うサウンド、薬師丸ひろ子さんや斉藤由貴さんが歌っててもおかしくないんじゃない?そんなイメージすらちらつく。
ついでに松本隆さんやユーミンや来生たかおさんの幻影も。あの頃の曲ってこんな風にエコーがかかったり、ギターが入ってる感覚があるので。
80年代風のナンバーというとシークレットグラフィティーやまいちゅんの「あなたからの卒業」も該当するが、このへんよりレトロ感は薄いもののその代わりに春の風のごとき清新なサウンドが耳から入ってくる。(ついでに言うとタイプA/B収録の「深読み」も60年代歌謡曲を若干意識していると思われる)
サビこそ坂道曲の王道という印象だし、MIXが入れやすい落ちサビはいかにも21世紀のアイドルソングだが、1番サビからまた間奏でコーラスが入るのでどこか懐かしく甘美な雰囲気でいつまでも聴いていられる。何というか、当時のポップスのエッセンスと坂道らしいコード進行をこんなにも巧みにミックスできるものなのか!と兜を脱ぐしかなかった。
スキャンダルで思わぬ形で5期生の知名度が上がってしまい、口さがない外野ではActuallyや絶望の一秒前の方が話題になってしまっていると思うが、当事者たちはこの曲に参加していないし、ソコは色眼鏡で見るべきではなかろう。
選抜メンバー、本当にいい曲もらったねえ。久保ちゃん・かっきー・柚菜ちゃんという歌唱メンも揃ってるし、彼女たちや他にもさくらちゃんやさぁちゃん(掛橋)・まゆたん(田村)あたりもこういう80年代のレトロな空気感が似合う。乃木坂の、いい意味でお人形的なアイドル性にフィーチャーしきった名曲だ。乃木坂スター誕生じゃないが、ザ・ベストテンみたいなセットのスタジオで歌う光景を思い浮かべても違和感ナッシング。
「好きになってみた」というタイトルもメタい。曲の主人公は無名の少女だが、アイドルとしてのメンバーたちを「好きになってみた」とファン・オタクが仮託できる仕掛けが巧みである(この曲に限ったことではないが)。スキャンダルがあろうがなんだろうがまた推してみるのもいいんじゃない?と思わされてしまう。
youth caseの快進撃が止まらない
で、この曲の作曲はyouth caseのご両人(編曲は石塚知生さんと共作の由)
最近このユニットの曲と言えばI see… Out of the Blue、君に叱られた、Wilderness world、他人のそら似…
いや、凄すぎでしょ!!
I seeとOut of the Blueはすっかり4期生のキラーチューンでライブやDJイベントでもアンセム的存在、Wilderness worldのサイバーな世界観もよし、他人のそら似もエモかった。
乃木坂といえば杉山勝彦さんがヒットメーカー筆頭だったが、ここにきてyuoth caseのお2人の存在感が急速に増している。杉山さんが大谷翔平ならyouth caseはさしずめ佐々木朗希か。
が…例えば今度のバスラでも聴ける保証はない。2日間しかないし。「Hard to say」や「他人のそら似」もそうだけど、表題曲でもアンダー曲でもないってのはいつライブで披露できるかわからないってのが勿体ない。一応一昨年のバスラからそれなりにライブも見ているが、「でこぴん」「ロマンティックいか焼き」「Rewindあの日」など巡り合わせが悪くてお目にかかれていない良曲も多々ある。
野外だし日産の広さなら神宮と秩父宮で同時開催した時みたいな工夫もできるかもしれないので、できるだけいろんなナンバーがかかるといいね。
ともかくも、表題曲だけで乃木坂らしさとか人気がどうとか騒ぐのもナンセンス、それぞれの収録曲にメンバーがいて作家がいる。それらが全て合わさって今のグループがあるのだから、言いたい奴には言わせておけ。彼等にもこの曲聴かせてやれば黙るだろ。
そう思わせるだけの魅力が「好きになってみた」にはある。
それでは日産スタジアムで会いましょう。