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5時間のセッションで生まれたカバーデザイン

1996年から現在まで、およそ25年の出版文化をカバーデザインの変遷から読み解く書籍『現代日本のブックデザイン史 1996-2020』。編者にデザイナーの長田年伸さん、川名潤さん、水戸部功さんをむかえて制作を進めました。

この企画の大元になったのは、デザイン誌『アイデア』No.387(2019年10月号)の特集。そこに最新のブックデザインの事例や新規コンテンツを加え、増補改訂して書籍化したのが本書です。書籍化にあたって装いも新たに、川名さんと水戸部さんによる“共作でカバーデザインをつくることになりました。

梅雨に入り、夏らしさが日に日に増す2021年6月の昼下がり。都内某所にある川名さんの事務所に集った制作陣。取り組むのは本書のカバーデザイン。8月の書籍刊行に向けて、本に収録する原稿類がいよいよ揃ってきたタイミングです。

カバーデザインを共作するということは決まっていたものの、イメージやデザインの進め方は直前まですべて未定。世間話を交わしていくうちに、PCや組版ソフトは川名さんのホーム環境で作業することから、先手はビジターの水戸部さんに。ここからは写真を交えながら当日の様子を紹介します。

5時間ほどのセッションによる即興での“共作”は、川名さんも水戸部さんも初めての試み。

「考えていることが互いにわかる感覚があり、それが楽しかった。でも序盤、川名さんがデザインをガラッと変えてくることも想定していました」と振り返る水戸部さん。

一方、「初めに水戸部さんが整然と並べたところで、俺の役割は決まった。これはオセロじゃなくて五目並べだなって。オセロをやったら永遠にひっくり返せちゃうから」と川名さん。

その後、デザインの仕上げは水戸部さんがすることになり、さらに手を加えて完成したのが冒頭のカバーデザインです。