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はるか昔に生まれた、1点ものを作るガラス技法
「パート・ド・ヴェール(Pâte de verre)」という言葉をご存じでしょうか。
古代の技法を、アール・ヌーヴォー期にガラス作家たちが蘇らせ、花開かせたガラスの成形技法です。日本語では「練りガラス」を意味します。粉状にしたガラスをのりで練って、耐火型に貼り付けて焼成していたためこのように呼ばれました。
ひとつひとつ型を作るため量産には向かず、隆盛と衰退を繰り返したため「幻の技法」などと称されることも。
この「パート・ド・ヴェール」技法を、幻ではなく誰でも作れるように、詳しく丁寧に紹介しているのが書籍『パート・ド・ヴェール』です。『ガラス工芸の基本技法』シリーズ第1弾の『ガラスフュージング』に続く第2弾となります。
ガラスフュージング同様、電気炉は家庭用のものも多数販売されているのでご自宅でも作ることができます。
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パート・ド・ヴェールの肝は、「型」
粘土などの原型から鋳型を起こし、ガラスの粉や粒を調合して型に詰め、電気炉で焼成、型どおりに熔けた作品を最後に型から出し、磨いて……ようやく作品が完成します。
たくさんの工程を経て作られるわけですが、つまりは型を作ってガラスを入れて焼く、というもので、一つ一つの作業はシンプル。
そのなかで肝となるのは「型作り」です。原型には、粘土のほかスチレンボード、シリコン、ワックスのほか、自然物なども使います。
本書ではバナナやピーナッツ、レンコンが登場しますが、ピーマンや貝殻なども面白いものができるそうです。そのままの形がガラスに置き換わる楽しさを味わえますね。
それらの原型から耐火石膏型を取り、求める色合い・透明度になるよう調合した粉や粒などのガラスを詰めていきます。
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繊細でやわらかい表情は、他にない魅力
こうした、古くからの技法で作られるパート・ド・ヴェールの作品は、やわらかく繊細な表情となめらかな質感の美しさにあふれています。
いっぽう、これまで一般の方々に向けてパート・ド・ヴェール技法について詳しく紹介した書籍はほとんどありませんでした。
本書の担当者は、かつてテーブルコーディネートの書籍を作ったさいに、著者の方からこの技法について教わり、いつかこの魅力を多くの方に伝えたいと考えていました。
ガラス作家・由水直樹先生が根気よく丁寧に紹介してくださったことで、本書が実現しました。
多岐にわたる一連の作業を文字にしてわかりやすくお伝えするために、スタッフも何度も改稿し工夫を重ねました。
本書でパート・ド・ヴェールの奥深い魅力に触れていただき、ご自分でも作ってみようと思ってくださったら光栄です。