私たちを魅了する、ガラスを透過する光の輝き
ステンドグラスと聞いて思い浮かぶのはどんなものでしょうか。
教会の荘厳な窓、ティファニー・ランプ、駅や公共施設のアート…どれも、ガラスを透過して輝く光と色は本当に美しく、思わず見入ってしまったことのある方もいらっしゃるのでは。
ガラスそのものの歴史のはじまりは4000年前以上前といわれ、古代オリエントで生まれたとされています。ガラスは古い古い歴史を持っているのです。(これについては、書籍『ガラスフュージング』でもご紹介していますので、ぜひご覧ください)
ステンドグラスは着色された(=stained)ガラスのピースを鉛の枠でつなぎ合わせて絵や模様を表したもので、12世紀から16世紀にかけてヨーロッパで黄金期を迎えます。
文字が読めない人々にも聖書の教えをビジュアルでわかりやすく伝えるために用いられ、多くのゴシック建築の大聖堂の窓を飾りました。
そのため、ヨーロッパには教会の地下にステンドグラス工房があったりもするのだそうです。
ステンドグラスで描かれた物語からあふれる光は幻想的で、見るものを圧倒し異世界へといざないます。
ステンドグラスの2つの工法
この黄金期を支えたのが、ステンドグラスの技法のひとつである、鉛線(ケイム)を使った工法です。窓や大きな空間を彩る作品で使われることが多い伝統的な工法で、ヨーロピアンスタイルとも。
ちなみに日本へは近代建築とともに伝わり、明治時代には日本国内でも宇野沢辰雄氏や小川三知氏などによってステンドグラスが製作されるようになりました。
いっぽう19世紀末には、“ティファニーランプ”で知られる、アメリカのL.C.ティファニーによって、カッパーテープ(コパーフォイル、銅テープ)工法が考案されました。小さなガラスピースを銅製のテープで巻いて、ハンダでつなぎ合わせて組み立てる工法で、繊細で立体的な表現ができるのが特長。書籍『ステンドグラス』では、このカッパーテープ工法を用いたガラス工芸の作品づくりをご紹介しています。
工芸として楽しむステンドグラス。長く親しめる趣味としておすすめです!
著者の青木健さんはステンドグラス作家として、お父様の青木正さんとともに、工房でのステンドグラスの製作と、全国の教室で指導を行っています。
公共施設や教会、学校、アミューズメントパークなどの大きな作品も手掛けており、実は目にされている方も多いかもしれません。
日本に数多くあるステンドグラス工房では、それぞれの制作方法で作品が生み出されています。
書籍のオファーを何度も断り続けてきた青木さんですが、『ガラス工芸の基本技法』シリーズ第3弾となる今回の書籍では、これまで多くの生徒の方々を指導してきた実績を生かして、青木さんが培ってきた技術を惜しみなく、懇切丁寧に公開してくださっています。
シャープなアクセサリーからノスタルジックなランプまで、さまざまなテイストの作品を作っていただきました。
青木さんのアトリエにはステンドグラスの材料となるさまざまな色・模様・質感の板ガラスが。これを見ているだけでも時間が経ってしまいそうです。
ガラス工芸の中でもハードルが低く、趣味として長く親しまれる方の多いステンドグラス。光と色が織りなす、ステンドグラスの奥深い世界にぜひ触れてみてください。