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Photo by
_kei_
いのちの砂/散らかる文 青紗蘭
久しぶりに朝の空気を全身で感じ取ることができた。私は、生きている。
私には、愛しい人がいた。
大切な親友は、守るべきもの為に戦場で亡くなった。
盆栽の師匠は、日本の固有種を守り自然と共にあることを教えてくれた。
あらゆる人が自分より先に旅立つとき。
私の周りに沢山の魂魄の輝きが集まり、手のひらで受け取るような感覚がある。
ありがとう。
あなたと出会えてよかった。
いい弟子になったな。
きみは優しすぎるから厳しくなりなよ。
泪するしかない私に。
震えて葉にのせて紡ぐことできずにいる私に。
優しい暖かさが 手のひらにさらりさらり。
想いが降り落ちてくる。
懸命に生きた命が、私の指の隙間を通ってゆく。幾度通り過ぎてゆくの。大切なのに。
どうして私の命と交換できないの。
かなしい かなしい。
私は、ずっと苛まれてきた。
こんな話は、信じてもらえない。
あるいは、ほんとうに幻覚や妄想かもしれない。
けれど、ようやくわかった。
私にはそう確かに感じる。それで十分だと。
みんな先に旅立ったけれど。
指の隙間から美しく舞ったあと。様々なところに鏤められ、私の中にもそっといてくれると。
私は、生きることに挫けそうになるときがある。人間の倫理無き姿を見つめ続けるのが、余りにも苦しくて、私自身も人間は淘汰されたほうがいいとさえ思うことがあった。
だが、生きている。活きている。
私の中に鏤められた想いが、私の中で輝きを放つから。苦しいときほどあたたかくなるから。
だから、私は。
どんなに千切れそうになっても、人の可能性を信じ、人を生きてゆく。
先行く人が、そうしてくれたように。
この灯火をけさない。
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