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トビタテ留学記@USC ICT

この記事は研究留学 Advent Calendar 2019 2日目の記事です。

こんにちは。NAIST(旧)情報科学研究科の知能コミュニケーション研究室で博士後期課程の学生をしている品川と申します。好きなものはニューラルネットワークで、好きな色はオレンジです。自然言語でコミュニケーションしながら成長するニューラルネットワーク(機械もしくは人間)に興味を持っていまして、博士課程では自然言語を用いた対話的な画像生成の研究をしています。

最近ときどき話題にもなっているトビタテ!留学JAPANという制度の未来テクノロジー人材枠に留学計画が採択されてロサンゼルスのUSC ICTというところに研究留学してきました(期間は2019年3月14日~6月19日)。

本記事では「トビタテって実際どうなん?」ということや「トビタテ留学やって良かったこと・悪かったこと」、「金銭面の工面」とか「留学前の準備(家探しとか)」について軽く振り返ってまとめたいと思います。(何か書いて欲しいというネタがあれば@sei_shinagawa (twitter)の方に連絡をいただければ暇を見て書こうと思うので気軽にご相談ください)

とりあえず、留学どうだった?

環境とか
ありえん良かった。まずアメリカ西海岸の気候めっちゃ安定してるんですよね。ほどほどに乾燥した常夏。コーラがマジでうまい。私のこれまでのコーラ体験はなんだったんや・・・

我々が日々、台風による大雨洪水・季節の変動による寒暖差とかにあえいでいる間にも、ここの人々は進捗を生み出してるわけですね。留学時期的にも日本では花粉症の舞う時期に来れたのもあって、私も研究に集中できました(まあアメリカにも普通に花粉はあるっぽいので、移り住んだところで完全に花粉から逃げられるわけではないようですが・・・)

家はホームステイ先を探してお世話になっていたのですが、とても良い方々にお世話になれたのは幸運でした。

食べ物もおいしかったです。基本は外食かキッチンを借りて自炊をしていました。あと、自分は日本食が無いと生きていけないというのも良く分かったのが大きな収穫でした。留学開始2週間程度で心身不安定になってましたが、日本食を出す定食屋で豚生姜焼き定食を食べたり、YOSHINOYAに通うようになって精神を安定させることができました。ロサンゼルスのYOSHINOYAはイイぞ。扱うものが牛丼というより丼ものにgeneralizedされてて、ティラピアという魚の丼が健康的でうまかったです。留学終わりまでに3kg痩せた。日本に帰ってからは日本食サイコー状態がしばらく続いていて、鬼のように大豆製品を貪る日々が続いています。

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↑original beefとティラピア。最初何度かTilapiaの発音がうまく通じなくてTeriyaki chickenが出てきて悲しみを得ていた・・・

USC ICTの研究環境や研究指導について
留学目的の一つとして、海外の研究室の研究環境や指導方法、学生の様子を見てみたいというのがありました。さぞかしワークライフバランスを考えて洗練された研究生活を行っているだろうと期待して。結果、

あ、逆ゥ!?ってなりました。研究科全体がcoffeeと炭酸カルシウムで全力で命を燃やすことをencourageしてました。逆に清々しい。ハードワーク上等って感じですね。

受け入れ先のボスも連日デモやら会議の準備やらで遅くまで忙しくされていて、なるほどこの厳しさを耐えて成果があるのか・・・という気持ち。まあでも気候が安定してるから体調も管理しやすいという地理的な利もあってできる芸当なのかもしれません。とりあえず、ここまでやってるのが普通なんだと思えたのは良い経験でした。

研究指導について。基本的に1週間ごとにプロジェクトごとに個別のミーティングをする形式でした。日本で私の所属している研究室では班単位のミーティングが基本なのですが、人数が多くなると認識の共有とかに大部分の時間を取られて深い話ができないみたいなところはあるので、このような個別ミーティング形式は重要な気がしています。著者を誰にするか問題も起きにくいでしょうし。

研究指導の方針も若干異なるような気がしました。私の研究室のミーティングでは、学生はできるだけ泳がせて助けを求められれば助言する感じですが、留学先のミーティングでは指導教員から「君の研究にはこういう問題がある、こういう問題もある」と先に全部思いつく限りの課題を提示されました。学生が自分で気づくべきか・そうでなくても良いかというのはもう宗教的なものだと思いますが、私は後者の方がありがたかったです。もっとも、これは私がもっと積極的に助けを求めていれば関係ない話ではあるので、帰国後はなるべく素直に助けを求めるようにしています。

学生側も積極的でした。留学先で少し親しくさせてもらった学生さんはちょうど研究計画を練る段階だったらしく、連日ボスの部屋に突撃しては議論するみたいな日々を送っていました。こういう図々しさというのは大事で、見習いたいなあと思います。思い返せば、我が研究室でも成果を出してる学生はだいたい図々しい(失礼)学生が多かったような気がします。

英語
最初やっぱ通じない(聞き取れない、発音が悪い)というのでコミュニケーション自体の困難さを感じていました。これはヤバいと思い、発音強制とディクテーションを始めて2週間くらいでそこそこまともにコミュニケーションがとれるようになりました。このレベルが必要、という目標が明確に定まってると人間って成長早いですね。環境って大事。

その他
ロサンゼルスはVenice Beachが近くて、その一角にMuscle Beachと呼ばれている場所があるので是非行ってみてください。感動的なレベルの筋肉を生で見ることができて大変良かったです。筋トレはイイぞ。

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トビタテって実際どうなん?

研究留学以外の目的でも自分で計画を立てて採択されれば留学できる、というのがトビタテの真骨頂だと思いますが、研究留学として行くという場合は他の一般的な留学支援制度(私は使ったことないので伝聞で聞いた限り)と比べてみると、以下のような違いがあるかなと思っています。

・異分野の活きのいい学生さん達と交流できる機会がある(見聞が広がり、意識が高まる)
・トビタテ生のコミュニティに所属することになる(留学のことでいつでも気軽に相談できるという安心感があった)
・留学中は海外に向けて日本を紹介するアンバサダー活動が求められる(できる範囲でいいらしい)
・帰国後は留学機運醸成に向けて国内に向けたエヴァンジェリスト活動が求められる(できる範囲でいいらしい)(本記事の作成はエヴァンジェリスト活動の一つになるのではという下心でやってる)
計画変更の融通が利かない(計画変更を通すため、結果的に指導教員に多大な迷惑をかけた)

何をメリット・デメリットと取るかは人によると思いますが、修士や博士の情報系の学生さんを想定すると、下記のことは強調しておかないとなあと思います。

まとめると、研究留学におけるトビタテ未来テクノロジー人材枠という奨学金制度は「申請しやすい、受かりやすい一方で、融通の利かなさから辞退する羽目になる可能性もそれなりにあるファンド」だと考えると良いかもしれません。 別記事:トビタテでも研究留学がしたい! 未来テクノロジー人材枠を最大限活用するために申請前に知っておくべきことを参照

上の記事を読んでいただくと分かると思いますが、未来テクノロジー人材枠は割と競争率が低いので狙い目ではあります。

留学自体はやって良かった良い経験になったと思ってはいるのですが、そのための労力はなかなか目に余るものでした。特に留学変更を余儀なくされた際はヤバかったです。私は最初、別の研究機関に留学に半年行く予定で研究計画を受理してもらっていたのですが、この計画変更には私だけでなく指導教員の先生方や秘書さん、トビタテ担当の方に多大な労力をかけることになってしまいました・・・私自身も留学直前まで本当に留学できるのかわからないふわふわした状態が続いたため、精神的に追い込まれましたし、家探しとかやることも多かったので研究がストップしがちでした。「そもそもそこまで周りを巻き込んでまで自分のエゴを通したい留学だったか?」と自分を責めました。(まあここまで労力をかけたので、いい留学にするぞという気概を持って留学臨めたのは良かったですが・・・)

一度留学計画変更をする必要性が出てくるとしんどいことになるので、現実的には、留学交換制度などの制度と合わせるか、もう行き先がほぼ確定している段階で申請するのが留学までこぎつけるためには安全ではある気がしています。もしくは最初から、ある程度めんどくさいことになりそうだったら見切りをつける前提で応募するのが良いかもしれません。

トビタテ留学やって良かったこと・悪かったこと

良かったこと
・いろいろな人に出会えて見聞が広がった(異分野で頑張ってるトビタテ生、運営の方々、留学先の人々)
・違う研究環境を体験したことで、今の研究室環境を相対的にみることができるようになった。自分のなすべき改善点が見えてきた
・向こうの研究仲間ができた
・日本食がないと生きていけないことが分かったが、それさえクリアすれば海外でも生きていけそうなのが分かった

悪かったこと
・途中で留学計画変更が入ったので、それをトビタテ側に通すのに思ったよりずっと労力を使う羽目になったし、周りにも迷惑をかけた
・研究ネタをもう少し進めてから行きたかった(留学計画変更で時間をとられたのが原因)

金銭面の工面

留学に必要な資金はトビタテから出る補助金の他に指導教員が持っていたファンドから補填していただきました。というのも、留学のビザ(J1)を取るのにトビタテから出る補助金だけだとビザの出る最低ラインに届かなかったのです・・・

この点も、ちょっとトビタツには高い障壁になり得ると思います。JASSOとかだと、確かトビタテ側の補助金が上回ると併用できないとかの制約があったと思うので、最初に見込みをつけられるかがトビタテに応募する上での判断材料になると思います。

留学前の準備など

家探しはcraigslistとかびびなび ロサンゼルスというサイトで探していました。あと持っていくものとしては耳かき、爪切り、常備薬あたりはあった方が良いかと思います。小青竜湯にはだいぶお世話になりました。また、私は首に古傷を持っていてデリケートなケアを必要としているので、愛用の枕も持っていきました。この判断は正しかったです。

トビタテ留学を通して学んだこと(留学の価値とか)

相対化できる、これに尽きると思います。決まりきった環境にずっと身を置いていると判断材料が少なくて身動きがとり辛くったりどうしたらいいか見当がつかなくなるという印象がありますが、留学はこれを解消するきっかけになるかもしれません。今すぐ役には立たないかもしれませんが、将来への投資としては悪くないと思います。少なくとも私は、今回の留学を通して、将来海外に住むことになってもやっていけそうかな、とか、今の研究指導でうまく立ち回るにはどうしたらいいのか、みたいな不安が多少払拭できましたし、色々な人との繋がりができたのは今後の人生に大きくプラスになると信じています。

私は海外の研究室に興味があったから留学しましたが、相対化するという意味では、海外留学でなくても日本国内でインターンに行くというのも良い選択肢だと思います。どちらがいいとかは個人の志向によると思いますが、海外に興味があって、かつ、

・他の異分野の学生にも会ってみたい
・アカデミックのインターンと現地の企業インターンを併せるなど、特殊な留学計画で留学したい
・留学相談できる人がいなくて一人じゃ不安だ
・時期的に応募できる留学支援制度が他にない

みたいなケースで、トビタテによる研究留学が有効な選択肢になり得るかと思います。興味のある方は是非ご応募下さい。良い留学となることを祈っております。

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