「無色透明」(フォトポエム10、以前自費出版した詩集よりピックアップ)
「無色透明」
絵の具を小川に投げ込んだ
波紋が広がり
ストッと落ちた
キャップはきっちりと閉められたまま
ラベルだけが剥がれていき
いつまでも銀のチューブは残った
赤は赤
青は青
黄は黄のまま
ずっと残っていた
ずっと残っていたかった
それでもチューブが破れた瞬間
絵の具は自己主張を始める
自分の色に染めたくて
チューブの中の練り状の物質は
川の中に放出されていく
強烈な色を撒き散らしながら
ぐんぐん溶け出していき
全てが溶けてしまったあとで
水の中には
銀の破片が鈍く光った
自己主張した色は
全て水に溶け込んで
全体の中のひとつになる
無色透明なひとつになる
★今回1箇所、文字換え
後で→あとで
尾瀬へ行った夏の写真を添えて
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