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近藤壱来選手について。考察。
今年の都市対抗野球大会で一躍注目を浴びた選手がいました。
JR四国の近藤壱来選手です。
昨年まで四国アイランドリーグplusの香川オリーブガイナーズで活躍した選手で、個人的にも関わりのあった選手でした。
主観ですが、野球をやっていた立場からすると昨年の都市対抗野球大会を準優勝、一昨年は優勝を果たした東京ガスを相手に、11回を投げて被安打1の完封勝利はとてつもない投球内容だと感じます(しかも10回、11回はタイブレーク(回の最初から無死1・2塁)。)。
ただ、去年までの彼を見ていた立場からすると、やっぱりやってくれたね、とも思う結果でした。
少し生意気な物言いをしましたが、近藤壱来という人間は能力的にも人間的にもそう評価できる選手だと思っています。
そこで今回は、JR四国で活躍する近藤壱来選手について、その活躍までに至った理由を僕なりに考察していきたいと思います。
近藤壱来について。考察①
まず最初に特筆すべきは、四国アイランドリーグplusでもトップレベルの奪三振数、奪三振率を誇っていた近藤壱来選手が、東京ガスから奪った三振が4でしかなかったということ。
一見、奪三振能力が落ちてしまったようにも思いますが、恐らく意図的に三振を奪いに行かなかったのではないかと思います。
そう思った記事がこちら。
「わざと甘いところに投げた」と書かれている通り、意図的に打ち取るスタイルを狙ったのではないかと思われます。
では、どのように彼は打ち取るスタイルを狙ったのか。
ここで注目したいのが、「カットボール」という球種。
東京ガス戦で近藤選手が投じた116球の割合はこちら。
・ストレート 52球(約45%)
(平均球速:約146km/h)
・カットボール 33球(約28%)
(平均球速:約138km/h)
・スライダー 15球(約13%)
(平均球速:約131km/h)
・フォーク 11球(約10%)
(平均球速:約132km/h)
・カーブ 5球(約4%)
(平均球速:約112km/h)
※データはスポーツナビ(Yahoo!JAPAN)の一球速報から抽出。
香川オリーブガイナーズ時代(特に2022年)の近藤選手は、
・140キロ台中盤のストレート※最速152km/h
・130キロ台前半のスライダー
・130キロ台中盤のフォーク
・120キロ台のカーブ
を投げる印象でした。
香川オリーブガイナーズ時代の投球スタイルは速いストレートと曲がり幅の大きいスライダーを軸に多くの三振を奪うイメージでした。
(あくまで去年までの印象を過去の一球速報を見て擦り合わせた程度のイメージですが。。)
しかし、130キロ台後半のカットボールが増えたことで、打ち取る投球スタイルが確立されたように思います。
球種割合を見ても、最も多いストレートが約45%、次に多いのがカットボールで約28%と、この2球種で7割以上を占めています。
軸はストレートであるものの、次に高い割合でカットボールを織り交ぜたことで、球種を絞らせない投球スタイルを披露しました。
これらに曲がり幅の大きいスライダー(約13%)、スライダーと同じ球速で落ちるフォークボール(約10%)があるとなると、今回の結果も頷けます。
更に近藤壱来選手のストレートは、回転数が2,000回転にも満たないという特徴もあり(本来はマイナス要素。NPB選手の平均が2,200前後と言われています。)、若干垂れるようなストレートとカットボールの相性が合致し、東京ガス打線から凡打の山を築いたのではないでしょうか。
意図的に回転数を抑えている、とは考え難いですが、自分の適性を理解した上での投球だとすれば、度胸の裏にある緻密さを感じさせる内容だったように思います。
近藤壱来について。考察②
次に、なぜ近藤壱来選手は三振を奪うスタイルから打ち取るスタイルに変えたのかでしょうか。
まだ若干20代中盤で150km/hを投げられ、奪三振率の高い快速球投手が自分の投球スタイルを変えられるというのは、かなり珍しいことだと感じます。
大げさかもしれませんが、この投球スタイルを変えられる柔軟さこそ近藤壱来選手の魅力であり、今回の活躍の裏にある根底だと思います。
これについてはこの記事から考えます。
(昨季まで3年間在籍した)独立リーグと(都市対抗)は全然違った。独立は1年間のトータルでどれだけいいピッチングができるかだが、ここでは1試合でどれだけ価値のあるピッチングができるかが求められている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c668f164dad2783480bfb966914154ab7f098016
記事の通り、香川オリーブガイナーズでの経験が今回の投球スタイルを誕生させるきっかけとなったように思います。
独立リーグはリーグ戦であり、長いシーズンを戦い抜くための調整や戦術が必要となります。
更に選手個人の大目的としては、NPB球団からドラフト指名を受けること。
そのためにはNPB球団のスカウトに魅せるピッチングが求められます。
自ずと評価されやすい球速や奪三振数を追い求める理由でもありました。
近藤壱来選手は香川オリーブガイナーズで過ごした3年間、ドラフト候補選手としても名前が上がるほどの活躍を魅せました。2021年には年間最優秀選手にも選ばれたほど。それでも、最後までドラフト指名を受けることはありませんでした。
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近藤壱来選手の成績
(OmyuTechの一球速報から引用)
そして最後まで指名を受けなかった2022年のシーズン終了後、近藤壱来選手は引退を決意しました。
しかし、彼の現役続行を後押しする方がご縁を繋ぎ、JR四国の野球部員として野球選手として再起を図るまでに至ったようです。
JR四国の野球部員となったことで、一発勝負のトーナメント戦での試合となり、立場としても一企業の社員となりました。
トーナメントという絶対に負けられない戦いを強いられると同時に、企業や四国代表という看板を背負った戦いに、これまで以上に勝つこだわりを考えたのではないでしょうか。
その結果、打ち取る投球スタイルという発想に至り、更にはこれらの経緯があったからこそ、近藤壱来選手自身が変わろうとしたように思います。
最後に。
ここまで、昨年まで四国アイランドリーグplusに関わりのあった近藤壱来選手について考えてみました。
全てを事実確認したわけではないため、考察として間違っていることもあるかもしれません。
それでもOBの活躍、ましてや悔しい思いをしていた姿を見ていたからこそ、今回の活躍を本当に嬉しく思いました。
もちろん香川オリーブガイナーズ在籍時に本人の夢が叶っていれば、、、という思いもありますが、こればっかりは仕方がありません。
僕自身、1人の選手にスポットを当てた発信をあまりしてきませんでしたが、彼のように熱量をもって野球に取り組める人間を応援したいという思いで今回の記事を書きました。
この記事が何かにつながるかはわかりませんが、少しでも近藤壱来という人間を知ってもらうきっかけになれば嬉しいです。
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これからの近藤壱来選手について、まだまだ活躍してくれる選手だと思います。
なぜなら近藤壱来選手は、活躍できるだけの能力に加え、多くの経験値を持っているから。
彼には応援したいと思わせる力、柔軟に自分を変える力、そして野球に対するパッションがあります。
これからも、陰ながら近藤壱来選手の活躍を見守りたいと思います。
ご精読ありがとうございました。
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