【思い出】今晩の月は懐かしい色だった。
今夜の月は「更待月」。昇り始めを見ることができた。黄色のような、橙色のような。栗ご飯の栗の色が一番近い気がする。写真じゃ上手く撮れなかったから、どうにか色を残したいと思って月を眺めながら考えていた。あれでもないこれでもないと考えているうちに、ふと幼い頃の寝る前の「豆球」の色に似ているな、と思った。
幼い頃、我が家では寝る時は真っ暗では無くて「豆球」が付いていた。布団を並べて、母が隣で。私を寝かしつけるはずの母親が先に寝てしまう日もあった。そんな日はなんだか置いて行かれたようで、少し寂しさを感じながらあまり見慣れない母親の寝顔を、不思議な気持ちで眺めてたりしていた。寝顔に向かって「眠くないんだけど」って小さく呟いてみたり。
母親の寝息を間近で聞きながら、寝返りを打って仰向けになると、豆球の明かりで天井がぼんやりと照らし出されている。眺めているうちに天井の模様が動いたように見えたりして、ちょっと怖くなって。母親の布団に潜り込むと、寝ているはずなのに背中に手を回して、とんとん、と叩いてくれた。そして大抵、そのリズムと母の寝息に誘われて眠ってしまうのだった。
そんな記憶があるからかもしれないけど、今晩の月の色はなんだか懐かしい色だった。幼い頃のあの夜が戻ってくることはないけれど、今夜はよく眠れそうな気がしている。