誰よりも早く動きたい


速さへのあこがれ

最近読んだ本に、東海道新幹線を作るときに国民の超特急へのあこがれが原動力となった、と書いてあった。外国に対して速度でマウントをとりたいという国民みんなの思いが後押しして、新幹線建設の大事業が実現したという。

戦後の民族性がどうとか、ナショナリズムがどうとかは置いといて、スピードが誰にでも共有できる魅力であったということは間違いない。

身近な速度でいうと、小学校で足が速いとモテる、というのはそれと同じことだろう。あれ、なんでなんだろう。いま、歩くのが速い人が魅力的に見えるなんてことは残念ながら起こりえない。

とにかく、速く動くことによってどこに行くかとか何をするかは関係なく、スピードで勝負するのは、もはや人間の本能である。今回は、純粋な”速さ”を追求する方法を考えたい。

身近な最速

速い乗りものとして、新幹線が挙げられる。日本で一番速いのは、東北新幹線で時速320㎞らしい。一度新幹線が通過するところを郡山駅のホームで見たことがあるが、とてつもない風圧と音である。何百人もの人がそれに乗ってうたたねしたり、スマホをいじったりしているとは思えなかった。

地上を離れれば、飛行機はもっとスピードを出している。あまり飛行機の速度を気にすることはないが、だいたい時速800㎞ほどで空を飛んでいるという。地上から見た飛行機は空をゆっくりとまたいでいくし、飛行機からみる雲もそこまで速く流れているようには見えないが、猛スピードで飛んでゆく。

宇宙へ

人が乗る乗り物で更に速いものがある。ISS、国際宇宙ステーションである。地球を約90分で1周するというのだから、そうとうの速さだ。夕暮れ時に点滅していない光がゆっくりと空を流れていったら、それはISSだ。今なら野口さんがそこから地球を眺めているかもしれない。

ここまでは地球の中での話であったが、そもそも地球が自転し、地球自体が回っている。毎日日が昇って落ちるのは、空が回っているのではなく地球が回っているから、というのは頭でわかっていても理解しづらい現象である。天動説を信じるのは仕方のないことだ。自転速度を調べてみると、時速1700㎞。うーん、ちょっと想像が追い付かなくなってきた。

そういえば、地球は太陽の周りをまわっている。1秒で28㎞進んでいる、回っているという。そもそも1年で1周というのをまわっているととらえていいのか?と思う。公転は楕円軌道を描いており、冬至・夏至の日がもっとも速い箇所にいるとか。そうすると一番速い瞬間は・・・冬至(夏至)の最も太陽から離れる日の入りから日の出のど真ん中、深夜になる。そのときに、東に向かって全力疾走するのが、考えられる限り最も早く移動している。

そういえば、太陽系は銀河のなか、天の川銀河のなかを公転しているんだっけ。いまあなたが家で座っているとしても、宇宙船地球号は彼方へと向かっている最中だ。

想像上では何光年もの空間が膨らめど、ぼくたちの日常は結局数m、数㎝のことに振り回されている。パソコンの充電がそろそろ切れそうだけど、コンセントがちょっと離れていて、面倒だ。


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