校庭に地上絵を見た
グーグルマップは航空写真で見る派である。ぱっと見の色味でどんな街かわかるのでお勧めします、異論は認める。
とにかく写真で地図を見ていた時に、学校の校庭に目が行った。
典型的な学校の校庭である。中央に200mトラックがあり、運動会の用意だろうか、レーンがいくつか設けられている。もちろんこれらは白線を引くやつ(ラインカーというらしい)を使った先生の力作である。
トラックのほかに、西側に少し歪んでいるがボール投げの測定のための線があり、東側にはドッジボールかバスケに使うのか、かなりゆがんだコートが2つ引かれている。
「そっちとこっちでコートの大きさが違うじゃん!」
「じゃあお前が線引き直せよ!」
言い合いになること待ったなし。
一つの学校の白線だけでこの情報量なのだから、もっと多様な白線のカタチがあるのではないか。各地の校庭を集めてみたので、白線をみてほしい。
まずは福生の小学校。200mトラックの内側に白線が引いてある。
六芒星に似た形だ、これも運動会の準備だろうか、対角線上に人が並んでいて何かのフォーメーションをとっている。白線はとても対称に引かれていて、先生の几帳面さがうかがえる。
次の斜めの線は何だろうか。
この学校では200mトラックを貫通する長い直線がある。線は校庭を対角線に結んでいる。同じものが千葉でも、
東京でもある。
100m走のレーンである。それにしても、レーンごとに均等に分けられ、美しい直線となっていて、200mトラックが見事に串刺しにされている。対角線に引くことで、100mを稼いでいるのだ。100mは対角線でレーンを作りましょう、とでも書いてあるマニュアルがあるのかな?
一方狭い校庭では。
さすが23区である。50mのレーンが対角線上に設けられている。校庭の狭さは都会の弊害である。せめてもの罪償いとして、校庭は土や砂ではなく樹脂でできている。ぼんぼんである。
ボール投げの白線にもさまざまなものが。まずオーソドックスな形を見よう。
投げるサークル、そこから投げる範囲を指定する線が伸び、10mごとに白線が引かれ大まかな距離がわかる。
しかし几帳面な先生の手にかかればこうだ。
1mごとに線を引いてしまった。春日部の先生、これはやりすぎですよ、つい凝りすぎちゃったのかな。
しかし、上には上がいる。寄居にて。
なんと2つ作ってしまった。長い方は男子用、短い方は女子用だろうか。距離の数字が測定する側から見やすいように書かれているのがいじらしい。ところで2つとも埼玉県だが、埼玉県の先生の間では白線を正確に引けるかの競技会でも開かれているのだろうか。
今度は新潟である。
先の二つより角度が小さくて、体育テストの正式な基準に沿っているか怪しい。そして枠線がなく、範囲外がはっきりとしていない。
きっとここの先生は寛容で、少しボールがそれても測定してくれるだろう。
さて、ここからは創作絵画部門。春日部にて。
等高線のようにも見える。こんなにたくさんの種類のトラックが必要なのか疑問だが、どのトラックも使われている痕跡が見える。グラデーションが美しい。
次に京都。
マルがいくつか、等間隔のようなそうでないような。空に向けての暗号か何かかもしれない。でも、それならもう少し丁寧に書いてほしい。東端のうねうねした線もよくわからない。
次は明らかに空へのメッセージである。
「6」
6は安定や繁栄を表す数字であり、学校が末永く続いてほしいという願いが込められている……
……交通安全教室である。自転車の安全な乗り方を教えるアレである。右折するときは右手を横に出して…とかやっていたのを思い出した。
でも空から見ると、そんな文脈は一切見えず、6にしか見えない。それも、丁寧に縁取りがされた6である。
次は渋谷区の代官山。
さすがおしゃれの街、代官山である。白線までもアーティスティックである。こうした小学校からの英才教育が、道行く人の華やかさを作り出していくのである。
屋上の〇と線でできた図形も謎だが、南側の屋上の網状の白線がすごい。巨大なクモの巣である。何の比喩かわからないけど、きっとアートなんでしょう。
続いてゲゲゲの鬼太郎の街、境港から。
芝生に白線を引いているだけでも特徴的なのに、その線が躍動している。〇から延びる曲線が役割もなくうねっている。もうわけがわからない。これはさすがに小学生の作品かもしれない。彼らは航空写真で見られることを想像して描いたのだろうか。楽しかったに違いない。
少し奇妙なものを見すぎた。原点に戻ろう。
大分は別府。
シンプルである。きれいに整地された校庭に、美しいトラックのみ。これぞ校庭である。この校庭を汚さないで文化財として保存して欲しい。足跡をつけてはいけません。校舎から観覧することだけが許されます。
最後は田園調布小学校。
ごった煮。校庭の白線のオールスターズである。校舎の屋上も使っている。しかもすごいのが、樹脂製の校庭・屋上であり永続的であること。ほかの学校は一時的なアートであるがここのは永久保存である。ただ、プールは汚い。
校庭の白線の多くは石灰で引かれていて、時間とともに薄れていくものである。地上では先生が線の役割を考えながら苦心して描いているが、航空写真でみるとただの図形である。
しかしその図形は街の中で大きな面積を占めていて、巨大である。何も知らない宇宙人が校庭の地上絵を見たら何を思うだろうか。
おまけ
どこかの街の卒業式
出典:GoogleMap