見出し画像

タワマンの夜明け。/「サンドリオン記念日」感想

2020年10月9日にKT Zepp Yokohamaで開催されたライブ、「サンドリオン記念日 ~センキュー!よろしくっ☆~」に参加しました。それの感想です。


公演概要・セットリスト

公演名 :サンドリオン記念日 ~センキュー!よろしくっ☆~
開催日時:2020年10月9日(金)18時半開場/19時半開演
出演  :サンドリオン(黒木ほの香、小峯愛未、小山百代、汐入あすか、成海瑠奈)
公演時間:約2時間半
会場  :KT Zepp Yokohama
備考  :2020年3月8日(日)に神田明神ホールで開催予定だった3周年ライブの振替公演

00.Ouverture
01.Familiar base
02.恋フルシルシ(Re-arrange ver.)
~MC1~
03.Go!Action(Album mix)
04.ブランコリック
~MC2~
05.Imitate Fiction ※新曲
~幕間映像・全力階段&座談会~
06.肯定的思考Time ※メドレー
07.illuminatons ※メドレー
08.無重力ランデヴー(PSB Remix) ※メドレー
09.ひとりひとつ  ※メドレー
10.Sun!Sun!dream on!  ※メドレー
~幕間映像・座談会~
~サンドオブチキン映像~
11.READY STEADY GO ※サンドオブチキン・カバー
~MC3~
12.タワマンのうた ※サンドオブチキン・新曲
~幕間映像・全力階段&座談会 ~
13.未来地図
14.キラーチューン
~MC4~
15.告白星 ※新曲
~MC5~
16.メグル・オモイ・メグル(Album mix)
17.Zodiac Sign(Album mix)
18.Never give upをもう一度(Album mix)
19.Wander Future
20.タイムトラベル(Album mix)
En1.僕らのSailing!!
~MC6~
En2.がむしゃらリテイク(Re-arrange ver.)

私とサンドリオン(まえがき)

 昨年8月に小山さんを知り、9月に配信ライブを視聴し、12月にイベント(トーク&ライブ形式)に初参加。今年に入ってからは、4月と7月の配信ライブを視聴していました。

 そのほか、気が向いたらWebサイン会に参加したり、気が向いたら毎週水曜の配信番組を見たりするくらいの、熱烈なファンではないけどにわかとも言えない、中途半端なファンです。

 昨年12月のイベント感想ブログはこちらから。今回に繋がる内容もあったりなかったり。以下の文中で、特に引用元を記載していないものは下記からの引用でございます。
 ちなみにだいたい5,000文字くらいの文量なので、読むには暇と根気が必要です。

20191223サンドリオン「聖☆ドリオンパーティ2019」


ライブ全体についての感想(本編①)

 ひとことで言うと「楽しかった」です。ふたことで言うと「驚くほど楽しかった」です。

 私が唯一サンドリオンを生で見た昨年12月からの変化として、パフォーマンスのレベルが格段に上がっていましたね。歌唱力とかダンスの上手さとか、全然違ったもんな。
 今年7月の配信ライブの時点でも相当良かったんだけど、ライブハウスの魔法っていうんですかね、7月よりも更にひとつ凄みがあったように思います(個人的にも2月以来の生ライブだったので、そういう意味でも「魔法」はあったのかもしれない)。
 3周年のこの機会に、サンドリオンとしてのカバー枠を排除して、全てオリジナル曲で勝負してくれたのも本当に良かった。しかも持ち曲の全てを披露。

カバーに頼らなくていいんやでというのも感じた。
俺はお前らの曲が好きなんスよ……だから自信持ってくれよ……とね、憤りプラスもどかしさみたいなのを感じました。

 ありがとう、これを待っていた……!めちゃくちゃカッコよかったです。

 そして、それ以上に精神的な成長を感じました。
 黒木さんが最後の挨拶で仰っていた、

前までは「自分がいちばん楽しもう」という気持ちだったけど、時間が空いたこの期間で「みんなを楽しませよう」という意識が強くなった

 みたいな言葉が、その本質だったのかなと思います。

 今までのサンドリオンのイベントや番組には、良くも悪くも常に内輪感があって、新参者として「これはこういう空気感を楽しむものなんだろうな」と思っていました。そして現に、1年と少しサンドリオンに触れてきた結果、それを楽しめている私がいるので、ちゃんとひとつの正解なのだと思います。
 ただ、今回のライブにはその内輪感が無くて(反面、同日のお昼に開催されたファンミは引くほど内輪だった)(たのしい)、あれどうしちゃったのサンドリオン、と困惑していたのですが、ライブの中でその答え合わせもしてくれました。

 それが、幕間映像で明言された「メジャーデビューを目指す」という目標。

 受け手側の私からしたら、それに何の意味があるの?という気持ちも実はあります。インディーズでもメジャーでも音楽届けてくれたらそれでいいよって思っちゃうから。なので、メジャーデビューを目標にしたこと自体よりも、それを口に出して共有してくれたことが嬉しかったし、そういうことをするユニットだとは思っていなかったから驚きました。
 ただ、メジャー目指すなら「写真集を複数冊買って当たり前」みたいな空気感を演者が出すのはダサいなぁと思ったね。1冊買うか迷ってる人(例:私)からすると拒否反応が出ちゃうんだよな。まぁ私が意地っ張りなだけかもしれないが……みんなは写真集買おうな……。

 余談気味だけど、お花についても少し。
 以前、小山さんが出演した舞台を観たとき、贈られたお花のひとつひとつに直筆でコメントを書いていたんですよね。ほかのメンバーも、ライブで贈られたお花に対してインスタやブログでまめにお返事をしています。
 それ自体は大変素晴らしいことなんだけど、実際には限界があるじゃないですか。つまり、「メジャーデビューして人気になって、もし1000人からお花来たらどうするんだろう」と思いまして。一部にだけ返すわけにはいかないし、どこかのタイミングで「もう返すのはやめよう」とするのか、それとも「1000人に返したるわ」と貫くのか。
 小山さんのこのブログを見ていると、少なくとも小山さんは貫くのかなぁと思ったり。それができたらめちゃくちゃリスペクトしちゃうなぁ。それぞれ、どれだけの覚悟を持ってお花にお返事してるんだろう。ちょっと気になっちゃった。

サンドリオン結成前に 舞台に出たときなんか
周りの子たちは楽屋花で 華やかになってるのに 私には親戚からの一つで。
小山より、って 明らか身内からで少し 恥ずかしかったり…………

今ではライブや舞台やイベントで
綺麗に彩られた楽屋花を いただけるようになって…………

そんなことを考えていたら この3年はかなりの変化があったなあ。

サボテンの秘密。小山百代

*****


 サンドリオンの現場は、オルスタ特有の熱量に支えられている、と思っています。

 やっぱりオルスタでぎゅうぎゅうにされながらワイワイ騒ぐことで高まる人はいるし、ぎゅうぎゅうにされなくても声出して汗かいてたら楽しい気分になってくるし、言い方は悪いけどパフォーマンスの雑さが誤魔化せる部分もあるし。先述した「ライブハウスの魔法」はそういうところにもあると思っていて。
 ですが、今回のライブは沢山のスタッフさんのご尽力のおかげもあり、コロナウイルス対策が施された中で行われていました。マスク着用・声出し禁止・席は1つずつ空ける、などの基本的なことね。
 それはつまり、誤魔化しがあまり効かないということなんだけど、公演中の笑顔だとか終演後の拍手だとかを見聞きする限りみんな楽しそうだったし、「魔法」がなくてもそういう戦果を得られたことを大きな自信にしてほしいなぁと。こういう形式のライブになったのはコロナウイルスが理由だけど、自信を掴むきっかけを見つけられたのは良かったと思います。

 私の好きなバンドは、「ロックは身体ぶつけて騒がないと楽しめない?んなわけあるかボケ」というマインドで、以前からライブハウスだけでなくホールでもライブをやっていたんですが、その延長(と私は勝手に受け取っている)として、今は着席ライブのツアーを開催しています。そして、現に着席ライブでも観客はめちゃくちゃ楽しそうだし、身体は揺れるし、音楽を全力で浴びてるんですよね。それは、バンドが長年かけて観客を育ててきたことで得られた結果だと思っています。
 それと同じで、今回のサンドリオンのパフォーマンスからは「ぎゅうぎゅうになってなくても、声出せなくても楽しいじゃん」と教えられた人が多いような気がしています。めちゃくちゃ観客を育てていた

「ステージ上から届けたいものを届けた結果、受け止めてくれる人が私たちのファンです」的なマインドも非常にカッコいいし個人的にはそういう表現者も好きなんだけど、一方で「演者がファンを育てる」という事実もあって。
彼女たちの仕事はステージ上でパフォーマンスを見せることなので、その本域のところで示していけると、より説得力があって良いんじゃないかなぁと。

 目標を言葉にするには勇気と覚悟が必要。心構えをパフォーマンスで示すには努力と実力が必要。どっちも大事で、どっちも簡単にやれることじゃないのに、それらを1日で叩きつけられたのは結構な衝撃でした。

*****


 2019年末のコミケにて寄稿した、2ndアルバム『WANDERLAND』のディスクレビューで、私はこんなことを書いていました。

あら~イントロから凄いね。確実に『わ』を超えてくる確信が持てる曲です。サビのテンポ感も合いの手のわちゃわちゃも良い。サウンドも強い。一聴するとポップソングなんだけど、それだけじゃなくてちゃんと寄り添ってくれる曲。まさにサンドリオンだなぁという印象。や、にわかだから分からんけどな。天気雨とか泣き笑いが似合う曲ですね。うーん、言うことなし。―― Never give upをもう一度
天才ミュージック。最も新しい曲を最も素敵だと感じられるのは、このユニットにとって何より大切なことなんだと思います。最後の「重なり合って君と描くの」で号泣不可避。「ワンダーランド」ってタイトル、一見ワクワク感があるんだけど、「WANDERLAND」だから直訳すると「さまよう土地」なんですよね。「回り道も選択のひとつでしょ」という歌詞がその表れで、さまよった果てに見つけたのが「君と描く」という選択肢なのがめちゃ良い。―― Wander Future

 そう。私にとってのサンドリオンって、「天気雨みたいなユニット」なんです。眩しいのに雨が降っていて、雨が降っているのに眩しいユニット。そして、常に最高を更新するユニット。

 個人的には、こんなふうになってしまった世界をとても楽しんで生きていました。
 確かに不便はあるけど、川村元気も村上春樹もどっかの偉い人も予想しなかった世界が訪れて、みんな横一線で面白いこと考えようぜゲームが始まった感じがしたんですよね。そんな世界を生きていることにワクワクが止まらなかった。人生でいちばん楽しい半年間だったとすら思います。
 そんな中、「オンラインライブ」という新しい試みの環境が整ってきて、私の好きなアーティストもたくさんのライブを届けてくれて。
 私には「演者は演者で完結していてほしい」「観客がいなくても音楽やれたらOK!でいてほしい」という理想のアーティスト像があるから、配信ライブでも全然満足していたし、なんなら家で飲み食いしながら観られるのサイコーじゃんって思っていました。

 でも、サンドリオンが現場感を大事にしてくれているのも理解していて、コロナウイルスによる精神的なダメージが大きいんだろうなと想像していたから、本当のこと言うと、ちょっと心配してたんですよね。「大丈夫かな、折れてないかな」と。でも、その心配は杞憂に終わってくれました。
 そう。この長雨や回り道をきちんと正面から受け止めたことで、晴れ間に、夢に向かって一緒に踏み出すことができたんです。「重なり合って 君と描くの」に辿り着いたんです。
 だから、5人には「こんな世界も案外悪くねぇな」って思ってほしいんですよね。どの立場で言ってんのって感じだけどさ。
 この先だって、雨は降るけどいつか晴れるよ。一緒に進んで、一緒にタワマン住もうな。


個人についての簡単な感想(本編②)

 黒木さん。もともとの印象は「理想の自分像を持っている人。でもその理想に届く力がまだ無いことを知っている人」でした。

思い描くイメージを届けられるほどの歌唱力がないなぁと思っていて、それは恐らく黒木さん自身も感じていることで。だから黒木さんは自分の理想を表現し続けようとするし、それができない苦しさも理解しているんだろうなと。

 そんな人が「みんなを楽しませようという意識」を手に入れたら、もう敵なしなんだよな。 頭がとてもいい人だから、その意識を色々な手段で具現化してこちらを楽しませてくれそう。それができるのが黒木さんだと思います。

 成海さん。内側のファンを大切にしてくれるサンドリオンの中で、外向きのパワーを最も強く感じるのが成海さんでした。
 メドレーパートでは「大サビ前変調〜大サビ」が使われがちだったんけど、歌い出しは成海さんが多かった印象で、その瞬発力のあるパーソナリティや場を変える太陽感は圧倒的な才能だと思います。きっと、サンドリオンが次のステップに行くために、成海さんの力がとても大事になってくるんだろうなぁ。

 汐入さん。いろいろなところで成長を感じたんだけど、特に新曲にしてサンドリオン史上最高レベルにカッコいい曲である「Imitate Fiction」のときの表情が、震えるほど良かった。

ライブ中にぽろっと零した「ロックが好きだけど、声質的に苦手」というお話が本当に良くて。彼女は本当に、こう、うーん、自身の弱さを強みに変えられる方だと思う。

 昨年12月のMCを考えると泣けてくるな。本当にドラマチックな方ですね。応援し甲斐が半端ない。

 小峯さん。ドライな人かと思ってたんですけど、幕間映像での「私がもよを溶け込ませるんだ」の発言や、最後のMCでの涙にすごく愛を感じて
 過去にはメンバーの脱退もあったし、最年長のお姉さんとして色々抱えなきゃいけないものがあったんだろうけど、それだからこそ小峯さんが包み込んでくれるのは大きいなぁと思いました。

 小山さん。5月ごろに喉の手術をして以降、初めての生歌(だよね?)。
 昨年12月、こんなことを書いていました。

印象的だったのは、彼女の目なんです。閉じていなかった。ちゃんと観客を見ていた。

 今回は違ったんです。目を閉じていた。天井を、その先の空を見上げていた。歌える幸せを、舞台に立てる喜びを噛みしめるようなその姿がとても印象的で、馬鹿みたいですけど「なんか小山さんが楽しそうだから俺も楽しい!」みたいな気持ちになりました。
 あと、メジャーデビューに対して、

遠い未来ではないような、
それでも簡単には掴めない、
大きな大きな夢ができました。

もっと。小山百代

 と書いているのも本当に良かったです。
 夢を叶える最も簡単な方法は、夢が叶うまで続けることだと思っているんですが、小山さんはそれができる人だし、それをやり続けてきた人なんだろうなと思います。


サンドリオンと「人生」(余談)

みんなのしあわせが、わたしのいちばんのしあわせ!
だから、みんなに楽しんでもらいたくて、とか言ってるけど、
それって本当は自分のため なんだよなあ…
キミに、しあわせにしてもらっています。

かけがえのない瞬間抱きしめて。しお

 これと似たことを、ずっと思っていました。

 私は自分のことが大好きです。自己肯定感の塊だと思っています。
その私がいちばん楽しい瞬間って、私の大好きな人が楽しそうにしているのを見る瞬間なんですよね。

 一方で、私はいつでも自分の心が踊る方に進んできて、いつでも自分が楽しいと思うものを選んできました。それを変えたくなかったし、変わらないことがカッコいいとも思っていました。

広がった世界もいいけど 一本道にこころ惹かれるのなんでだ

LiVE DiVE MHz!! (featuring LiSA)

 これってつまり、自分を変えようとせずに、周りの人には楽しそうにしていてほしいと願っているということで、めちゃくちゃ自分本位なことなんです。汐入さんと似ているようで全然違う。私は自分のことしか考えていなかった。

 それに気付かせてくれたのがサンドリオンでした。

 サンドリオンを知ったのは昨年の9月。初めて見たのは12月。1年経って、サンドリオンは見違えるほどに変わりました。
 きっとこの期間、特に世界が変わった春以降、サンドリオンはすごく長い時間をかけて話し合って、「メジャーデビュー」という目標を掲げて、それに向かって進むために色々な決断をして、時にはいちばん守りたいものを守るために何かを切り捨てて、私たちを楽しませるために変わってくれたんだと思います。

 じゃあ、その期間の私は?なにも変わろうとしていなかった。カッコよくなんてなかった。ダサさしかない。背すじを伸ばされちゃったな。

 今の私がいちばん守りたいものは明確にひとつだけなので、それを守れるように、未来に向かって変わっていきます。

 ひとつのライブで大袈裟な、と思われてしまうかもしれないけど、少なくとも私にとっては、人生観を揺るがされるほどのユニットだったし、ライブでした。


まとめ

 『Wander Future』を生で聴けたけどまだまだ死ねない。

いいなと思ったら応援しよう!