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甘えんぼうさぎは寂しいとしぬ
人は一人では生きていけない。
そして、うさぎもまた、ひとりでは生きていけないらしい。
「うさぎは寂しいと死ぬ」という話はたまに聞くけれど、しょせん都市伝説やろと人は言う。
ネットで検索すると、「そんなの嘘に決まってんだろコンチクショー」といった記事がズラズラ出てくる。
でもちょっと黙って聞いてほしい。うちのうさぎの話を聞いてほしい。
うちのうさぎは甘えん坊だ。かまって〜! と寄ってくる。
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寄ってくるだけならカワイイけれど、「あぁヨシヨシ、なでなで、かわいいかわいい、いいこいいこ」と唱えながら入念になでなければならない。右手で丹念に鼻先をカキカキするとなお良い。
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うっとりした顔で鼻をぐぐ〜っと押し付けてくるので、気持ちいいんだなとわかる。うさぎって鼻がピクピクするから、鼻の筋肉が凝るのかなぁ。でも歴代のうさぎはこんなとこ気持ちよさそうにしてた覚えがないけど。
なでてくれアピールだけではなくて、ちょっとかまい方が足りないとすねる。
すね方がまたタチが悪くて、じっ……と座って、ごはんを食べなくなる。ちなみにうさぎさんは常に食べて腸を動かしていないと命に関わる生き物だ。
食べて。お願い。頼むから。
そんなこんなで、今日。
夜、ケージを覗き込んだら、夜の分のラビットフードも食べずにじっと座っている。
耳を触ると冷たい。
人間は風邪を引くと熱を出すけど、うさぎは体調が悪いと体温が下がることが多い。以前、腸が詰まって病院通いをしていたときは、よく耳が冷たくなっていた。
救急病院に連れて行って応急処置をしてもらって、次の日かかりつけに連れて行ったら、「危なかったですね」と言われた。そのときのことを思い出して血の気が引く。
大好きなシソの葉を差し出しても知らんぷり。
やばい。食べないのは本当にやばい。伝わらなくてもどかしいけど、好物さえも興味を示さないのは本当にやばいのだ。
お腹痛いの? 食欲ない? と話しかけてみるが返事が返ってくるはずもない。
時間は夜の10時半。救急に……連れて行く……?
でもまだこの家に引っ越してきて、良くも悪くも一度も救急病院のお世話になっていない。だからうさぎを診てくれるかもわからない。早く、早く調べなきゃ。
と、そこまで頭をフル回転させて、例によって「あぁよしよし」となでていると、なんとなく耳が温かくなってきた気がした。
これは……もしかして。
「ちょっと外へ出してみようか」という夫の提案に従って、ケージの扉を開けてみる。
本当に調子が悪いと出てこない。出てこれたとしても動かず座り込む。
でも、どうやら動く元気はあるみたい。トコトコ歩いて部屋を一周した。ちょっと離れてこっちを見ている。
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わかった。わかったよ。お腹が痛いんじゃなくて、怒ってるんでしょう?
今日の朝は、出張に出かける夫を駅に送るために、いつもより外で遊ばせる時間が少なかった。
昼間も牧草を足す時間が1回しかなくて、夜も会議で。
寂しかったんだね。だから怒ってるんだね。
お願いだから機嫌を直して。
命に関わるから。
かいぬし、もというさぎさんのしもべは、床に座り込み、すっ……と両手を広げた。
すっ……とこちらを一瞥して、すっ……と近寄ってくるうさぎ。
やがて、私のひざの横で、すっ……と横になった。
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歩み寄りに成功したらこっちのもんである。
「よしよし、かわいいかわいい。だいすきだよ、しってるでしょ? ごきげんなおして」
としもべはひたすらうさぎさんをなでまわす。絵に描いたような猫可愛がり、いや、うさぎ可愛がり。
しばらくすると、目がきらきらしてきた。立ち上がって、椅子の上に登ったり降りたりして積極的に動き始める。耳を触るとあったかい。
さぁ、もういいでしょ?
ソシをお食べください、うさぎさま。
差し出すと、つんつん、と鼻で触ってから、今度はゆっくりと食べ始めた。
わしゃわしゃわしゃ、とシソの葉が小さなお口に吸い込まれていく。
よかった。もう大丈夫だ。
バタバタ走り回りはじめたので、すっかり安心して、しもべは床に転がってnoteを開いた。このうさぎさまとのできごとは、ぜひ書き残しておかねばならない。
で、しばらくして我に返ったときのうさぎさまが、こちら。
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見てる……ッッ!!
「まだあたし、ゆるしてないんだからね」
っていう声が聞こえてくる……ッッ!!
ごめん、ちゃんとなでるから……!!
そんなわけで、今週のnoteはここでおしまい。
うさぎさんとは、ちゃんと愛が伝わるように接しましょう。
うさぎに限らず、人間含めあらゆる生き物に必要なことだと思うけど。そばにいて当たり前の存在なんて、ひとつもない。だから毎日入念に愛をそそがないといけないんだよね。
今週もお読みいただき、ありがとうございました!
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それではまた、来週の木曜日に。
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