パッケージに包まれたなら(前編)
”パッケージに包まれたなら きっと
目にうつる 全てのことは メッセージ”
ムリヤリ感ある書き出しですが、なるほど商品のパッケージというのは、製造者のメッセージでもあります。また、時にパッケージデザインは時代を色濃く反映することも。
そう、全てのことは、パッケージ。(ムリヤリ感)
というわけで、2013年にモスクワデザインミュージアムで開催された、「パッケージデザイン made in Russia」展のレポート。以前某所に掲載したものを加筆修正して再掲です。
まずは帝政時代。
1861年の農奴解放以降、急テンポで資本主義経済化が進むロシア帝国では、技術革新の波が印刷分野にも及んで、質の良いパッケージが生まれます。これら、1860~1910年頃のパッケージデザインは、豪華で繊細な装飾や、スペースを余さず使う描き込みが特徴です。
有名な、エリセーエフ兄弟商会のもの。商品名はありません。右側にちょっと見切れ気味ですが、電話番号が4ケタなのが時代を感じさせます。
大型で凝った意匠の菓子箱は、店のウィンドウを彩る装飾と宣伝材の役割も担っていました。
ピロゴフ工場製のお菓子(ハルヴァ)の容器。
ボグダノフ商会製のタバコ。
キャンディーの容器。並んで飛ぶ飛行機と、それを見上げる人々という構図。航空機時代の幕開けの頃の高揚感が感じられて、とても素敵。
製菓業の雄、エイネム製菓工場の菓子箱。のちの「クラスヌイ・オクチャブリ」社です。クレムリン河岸通りから、エイネムの工場を望む構図が誇らしげ。
印刷分野の発展は、書体の発展をも促しました。キリル文字の新しいフォントが多く開発され、積極的にデザインに活かされたのもこの頃です。
ジューコフ製菓工場の、たぶんポスターでしょうか。斬新なフォントを散りばめ、人物も静物も入れて盛り沢山。これでしっかり調和のとれた鮮やかな画面になるのだから、見事です。
また、展示品にはありませんでしたが、当時の飴やチョコの包み紙にはナゾナオや占い、ことわざが印刷される事も多かったとか。現代と通ずるものがありますね。
上段右端は煙草の包み紙、他はお菓子の包み紙。戦争モチーフで、下段は「英雄たち」シリーズ。
やがてパッケージデザインには、フォークロアや民族衣装などのモチーフを取り込む伝統回帰的な動きも出てきます。
何の容器か分かりませんが、一筋縄ではいかない人物らしいということは伝わってきます。
チョコ菓子の包み紙、民話に登場するニワトリの図柄。この図柄は現在も受け継がれています。
同様に、革命前から商品名やパッケージの図柄を受け継ぐお菓子は少なからずあります。「慣れ親しんだ図柄」が大事にされており、それだけ消費者への訴求力があるということなのでしょう。
すみません、蛍光灯めっちゃ映り込んでいます(撮るの苦労したのよ…)。
こちらは化粧品のパッケージ。人物や、重ね着した衣服の模様も見事です。
19世紀末からはモダニズムの影響も顕著になってきます。特に製菓業者や化粧品関係ではモダニズムの影響が強かったとか。
オリエンタルも好まれたモチーフの1つ。この2つはお茶の箱。
製菓業者は購買意欲を煽るため、お菓子のパッケージにシリーズ物を導入するなど、パッケージデザインの役割は大いに注目されていました。また、他社による引き抜きを警戒して、デザイナーの名は秘匿するのが常でした。
オーデコロンのボトル。お酒にも見えます。
前編は以上です。後編はいつになるんだか、見当もつきません。
追記:
中編と後編はこちら↓
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