マイナースポーツ観戦の可能性を探れ
皆さんは、セパタクローという競技をご存知だろうか。
セパタクローとは、東南アジア発祥のスポーツで、バレーボールのように、ネットを挟んで両チームが、足を使って相手のコートにボールを落とし合う、サッカーとバレーボールをミックスしたようなスポーツだ。
日本代表の愛称が「猿飛ジャパン」と言われていることからもわかるように、ネット上でアクロバティックなプレーが繰り広げられるのが、他にはない大きな魅力だが、国内の競技者は数千人にとどまっており、日本国内での認知はまだまだ低いマイナースポーツの一つといえよう。
そんなセパタクロー界だが、2018年8月には、世界最高峰の大会と称される「第18回アジア競技大会(インドネシア・パレンバン)」で、「猿飛JAPAN」は、競技史上初となる銀メダルを獲得。セパタクロー関係者にとっては念願だったメダル獲得であり、大きな快挙を達成した。一方で、それを報じるメディアは一部にとどまるなど、日本国民のマイナースポーツへの関心の低さ、さらにはスポーツ報道のあり方や課題をさらけ出す格好となった。
※本記事についても、執筆料を出すメディアはないだろうという予測のもと、それでもスポーツ界のために発信すべきと考え、自らのnoteで掲載することに決めた。
そして、本日、僕は、かねてからお付き合いさせていただいている、セパタクロー日本代表の寺島武志選手にお声がけいただいて、セパタクローの試合を観戦しに行った。しかし、試合が行われた会場は、なんと渋谷のライブハウスだった。寺島選手に声をかけてもらった試合は、ただのスポーツ観戦イベントではなかったのだ。
エンタメ型スポーツ観戦イベント「蹴 kelu」とは
僕が観戦したのは、「蹴 kelu」という、セパタクローと音楽を融合した、エンタメ型のスポーツ観戦体験イベントだ。
「蹴 kelu」とは、究極の足技球技であるセパタクローを、新たなエンターテイメントへ進化させようという試みのもと、セパタクローをエクストリームスポーツとして昇華させたイベントだ。
第一回目の2008年3月以来、8年間で6回に渡って開催され、のべ1万人以上の観客動員を記録したが、2015年11月を最後に、このイベントが開催されることはなかった。その「蹴 kelu」が、今夜一夜限りの復活を遂げたのだ。
僕がこのイベントを見て、脳裏に真っ先に思い浮かんだのは、昨年、スポーツ界で大きな話題をさらった東京グローブ座で行われた第71回全日本フェンシング選手権だった。
全日本フェンシング選手権が「劇場×スポーツ」だとすると、この「蹴 kelu」というイベントは「ライブハウス×スポーツ」。
付加価値をつけて、スポーツ観戦の価値を高めつつ、新しい顧客層へアプローチするという手法は、フェンシング全日本選手権と全く同じだ。しかし、この手法を、セパタクロー界では、2008年から行ってきていたということに、正直驚いた。 僕は、恥ずかしながら、長い間、音楽やスポーツ興行の世界にいながら、このイベントを知らなかったのだが、こうしてスポーツに注目が集まる時代になったからこそ、今一度、このイベントを再評価してもいいんじゃないか。もしかしたら、やっと、時代が「蹴 kelu」に追いついたと言っても過言じゃないのかもしれない。
「蹴 kelu」がスポーツ界に示した可能性
日本のマイナースポーツ界は、今こそ、この「蹴 kelu」を参考にすべきだ。
特に、卓球や3on3など、コンパクトサイズの競技は、ライブハウスでのスポーツに向いているということは、想像にかたくない。
さらに言えば、既存の競技をデフォルメしてコンパクトサイズでできる競技に仕立てられるかどうかも重要だ。その点、「FUTEBOLiSTA 天下一武道会」というイベントが参考になるかもしれない。このイベントは、サッカーやフットサルのように、ボールを足で扱うという特性を残しながら、コンパクトな競技スペースで勝敗を競えるようにルール設計されている。
いずれにせよ、このようなエンタメ型スポーツ観戦イベントが再評価されれば、新たなスポーツ観戦の可能性は広がるし、競技自体の価値や、競技をしているアスリートの価値も高められるはずだ。
今後のスポーツ界の動きに注目したい。