僕は良い先輩ではない。韓国軍人ぼろぼろ日誌。
先日、SNSを見ていたところ、ウミガメの赤ちゃんが孵化して砂浜を必死に這って海に向かう動画が流れてきた。
僕らの手のひらにも及ばない大きさの赤ちゃんが、必死に、必死に、手足を力の限り動かしてもがいている姿を見ていたらなんか物凄く可哀想に思えてきた。
撮影者は「がんばれっ、もう少しだよ!!」と声援を。正直、僕は「なんで助けてあげないんだ?!」ともどかしかった。僕なら、ホイッと拾って海に放ってあげたであろうに。
あまりのもどかしさに、調べてみるとウミガメの赤ちゃんは「砂浜を這って、自分の力で海へ向かう」というのが大切なことだという。この行動によって、荒れた海で生き残る力を手に入れ、波に揉まれても方向を定めて沖に向かう方向感覚が身に付くのだそう。ウミガメの世界は本当に酷で、成体になれるのは5000匹に1匹だという。
納得と共に、反省させられた。
僕の「なんで助けてあげないんだ」という情けが、ウミガメの赤ちゃんにとっては致命的なことであるというのだ。
けど、これって人間にも当てはまると思う。
僕は、韓国陸軍の配属先の部隊で、普段の任務とは別に、カウンセリング兵というのを任されている。ありがたいことに、同期に後輩が相談係としてよく頼ってくれる。相談は、徹底的に秘密を担保した上で行われるため、人間関係の悩みや人生の悩みなどをよく打ち明けてくれるのだ。
具体的な内容は公開できないため、簡潔に言うと、先日入ってきたばかりの後輩が病んだ。彼は僕を訪ねて来ては、過対人恐怖症や鬱をかかえていた過去があり、克服して入隊したものの、その時の症状が再発したと告白してくれた。
けど、その事実を周りは知らない。
ここは軍隊だ。大変だった。
かれこれあって、一部の幹部も知ることになり、彼の症状も深刻化したということもあり、彼は隔離部屋で過ごすことになった。だが軍隊の特性上、何事も一人で行動を取ることは許されていない。そのため、誰かは彼と共にしなければならない。対人恐怖症を発動している彼に、誰でもむやみにくっつけては大変なので、幹部が彼に「一番、信頼できて話しやすい先輩」を選ばせたら、僕だと言うのだ。ありがたい感情と厄介なことになったなという複雑な感情を抱えたまま、彼と共に隔離部屋での生活が始まった。
辛そうな彼を見続けるのも大変だし、僕は彼を助けようと望みをなんでも聞いてあげた。これが負に作用したのだ。
僕は、とうとう彼にどうしてあげれば良いのかわからなくなり、カウンセリング専門家に頼ることになった。すると僕がとっていた行動は助けるというよりも、甘やかしていたということが発覚したのだ。
いくら精神的に病を抱えているとはいえ、克服はしなければならない。少しずつでも。情けが彼の今後の人生の致命的なことに至らすと考えると、ダメとはわかっているけど複雑な感情になる。だって可哀想だもん。
僕は良い先輩じゃない。
彼に限らず、他の後輩たちにも僕は甘々だった。体力をつくるトレーニングでも「人それぞれだしな」とそこまで後輩たちに強要しなかったし、したくなかった。結局は自発性が大事だと思っていたので、自分が一生懸命やっている姿を、背中で見せれば良いと見せていたつもりだったが、彼らも「せふぁんさんだから出来る」という思考になってきた感じがする。そうじゃない。こんな感じだと、メンタルは鍛えられない。何度も言うが、ここは軍隊だ。
人は、辛い経験を乗り越えるからこそ、その人の人生に味がでるし、一人前になる。
「自分に厳しく、人に優しく」は「自分に厳しく、人に甘く」ではない。優しさと甘さをごっちゃまぜにしたら危険だ。だからといって、やみくもに怒ったりして厳しくするのはしたくないし、性にあわない。
紳士のような"威厳を備えた優しさ"を備えたい。
とウミガメの赤ちゃんを見ながら思いに更けたのであった。
(↓僕が見たものじゃないけど、似たようなのがあったので)
D-301 #韓国軍人ぼろぼろ日誌