K-BALLET「ラ・バヤデール」鑑賞
2024/6/9(土)、Kバレエ カンパニーの「ラ・バヤデール」@オーチャードホールの千秋楽を鑑賞。初めてのKバレエ、初めてのラ・バヤデール全幕。
全身全霊を吸い取られる素晴らしさでした。
きっかけは娘のバレエレッスン
バレエ教室に通う長女が、ラ・バヤデールに取り組む機会がありました。(彼女はバレエ歴2年目に差し掛かったところ。習い事としてのバレエについては、また別の機会に記したいと思います)
彼女が関わる作品に興味を持つのは私の趣味で、あらすじを大まかに調べ、楽曲を聴き、有名バレエ団の映像で予習。
ちなみに、ラ・バヤデールのあらすじは...
そして迎えた発表の場。小学校1年生、演技時間は数分ですが、スカーフや光るボールなど、バヤらしいモチーフを手に、堂々と披露していました。高学年はコンクールに出場するメンバーもいて、とても見応えがあります。壺の踊り、スカーフ、オウム、太鼓、ブロンズアイドル、影の王国…。全幕ではないものの、その世界観を楽しませてもらいました。
レオン・ミンクスにハマる
本番を終え一安心。しかし、私は取り憑かれたままで、翌日からも変わらずにバヤの楽曲を聴き続けました。作曲者のレオン・ミンクスは19世紀のバレエ作曲家を代表する一人で、ドン・キホーテやパキータも作曲しています。バヤを聴いていると、続いてパキータが流れることがあり、これもまた素晴らしい。
この音楽を、直接堪能したい。バヤをもっと知りたい、そう思い、バレエ公演がないか調べ、Kバレエのチケットを購入するに至りました。
バレエ鑑賞は初めてではないものの、ダンサーについて知ることはほとんどないため、直感で、配役から日程を選び(この時から、私は日髙さんに惹かれていたのでした)、音響に定評があるオーチャードホール、2階席の中央あたりに。
予習、予習...
朝晩バヤを聴く日々は続きます。加えて、映像で予習。
ふロシアのマリインスキー・バレエの全幕。
(後から知ったのですが、ラ・バヤデールの初演はマリインスキーで、長きに渡りマリインスキーでしか上演されなかったとのこと。)
影のコール・ドや、ソリストのバリエーション、パ・ド・ドゥは、他のバレエ団の公演や、パリ・オペラ座の練習風景の動画などもチェック。
いよいよ開幕、というところで、Kバレエ公式から、影の王国のリハーサル映像が公開され、ますます胸が膨らみました。
楽しみがあるから頑張れる、という感覚は、本当に久しぶりでした。
「ラ・バヤデール」感想
さて、本題です。
迎えた当日、気持ちが急いて、予定より早く到着。来場客が溢れそうになったためか、会場時間前にロビーまで入場可に。パンフレットを購入し、開演までじっくりと読む。オーケストラが音出しをし始め、聴き慣れた旋律が響く。
間も無く、と姿勢を正すと、微かに体が震えてきた。緊張というより、武者震いに近い。いざ、開演。オーケストラが私のために鳴っている!という感覚が自ずと湧いて、涙が滲んだ。「音が届く」ってこういうことなのか。
終始、ずっと観ていたい、終わらないで欲しいと願っていました。特に惹きつけられたシーンをいくつかご紹介。
舞姫ニキヤ/日髙 世菜さん
ソロルへの愛を真っ直ぐに示す、フレッシュで透明感溢れるニキヤ。
この世のものではない美しさを放つ幻影のニキヤ。
唯一の望みを叶え、慈愛に満ちた麗しいニキヤ。
どのニキヤも、登場した途端に空気の色を変える。たくさんの素晴らしいダンサーを目の前にし、しばしニキヤのことを忘れても、再び現れると一瞬にして惹きつけられて、会場がニキヤに包まれる。
優雅で上品。静かで揺るぎない引力。
日髙さんの美しさは格別だった。
この方の、雪の女王(くるみ割り人形)やオデット&オディール(白鳥の湖)を拝みたい。必ずや。
影の王国のコール・ド・バレエ(群舞)
ラ・バヤデールといえば、のコール・ド。
素晴らしかった。様々なバレエ団の「影の王国」を予習したけれど、ここまで息のあった「影」はなかった。正確なアラベスク、間断のない緊張感が、柔らかで冷たい世界に誘ってくれる。
衣装もまた、ひとさじの可愛らしさと、透明感溢れるふわんふわんとした白の質感が絶妙。これがKバレエらしさなのかな、流石でした。
コール・ドに続くパ・ド・トロワ、3つのソロも、大変な見応えでした。それもそのはず、成田紗弥さん、小林美奈さん、岩井優花さんはプリンシパル・ソリストで、別の公演日でニキヤやガムザッティを演じている方々。眼に、心に、幸福が過ぎる。
最高のオーケストラ
そして、バイオリンソロに乗せる、ニキヤとソロルのパ・ド・ドゥ。
↓バイオリンの旋律をぜひ...
2階中央あたりの席で、影のコール・ドがより美しく見え、オーケストラの音も申し分なかったのですが、もし次の機会があれば、バイオリンソロが見える席を切望します。2階上手側バルコニーでしょうか。(果たしてそのような席を手に入れられるのか)
バレエ鑑賞にあたり、あらすじと楽曲の予習は強くお勧めします。音を知っていると、より楽しめる。即ちストーリーであり、没入感が高まります。何よりも、音楽そのものが素晴らしいのです。200年近く、人々を魅了し続けるのも納得。チャイコフスキー、プロコフィエフ、レオン・ミンクス...
バレエに出会い、彼らの音楽に浸る日々を送っていることは、大きな幸せです。
終わりに
その他に、ドラムダンスリーダー(吉田周平さん)、そして、ブロンズ・アイドル(石橋奨也さん)は、会場の空気をその一色にする強烈さが飛び抜けていて、限られた時間で爆発するに至るまでの鍛錬や集中力は、私が一生を懸けても想像すら出来ないと思います。
そして、終盤の演出は大変ドラマティックで、これもまたKバレエならではなのだと思います。細部まで、始まりから終わりまで、楽しませていただきました。
幕が下りてからずっと、帰宅してからも、全身が熱っぽく、そして、どよんと重たい疲労感。芸術を過剰摂取したようです。
今年の冬は、Kバレエの「くるみ割り人形」を観るのだ。その時は娘も一緒かな。