進行形JR乗りつぶし日記(少しのオマージュ)#18~さんふらわぁ僥倖旅(4)【苫小牧→札幌】
左舷からは遠くに下北半島の低い山々が見えている。爆弾低気圧による大揺れを覚悟していたが、航路がうまく隙間を縫っていたのか、フェリーのスタビライザーが優秀だったのか、いずれにしてもさほどの揺れに遭遇することはなく、2023年2月2日(木)午前11時、船は予定通り真っ直ぐ北に進んでいる。
しかし私はフリースペースとして解放されているレストランで頭を抱えていた。今日は苫小牧入港後、日高本線を1時間強で往復した後はすぐに新千歳空港に向かい、空港内にある温泉でまったりとして夕方のピーチで帰阪する予定としていたのだが、何と肝心のピーチが欠航してしまったのである。フェリーにはあまり影響はなかったが、やはりさすが爆弾低気圧と言うべきか、北海道の交通網は昨日夕刻からズタズタになっていて、JRはほぼ運行停止、飛行機もまともに飛んでいるものはない。
何はともあれ対応策を検討せねばならぬ。まずはピーチの振替だが、明後日の朝まで振替可能な便がない。ANAやJALは今日夜遅くの便は飛びそうだが、目の玉が飛び出るほど高い。やむなく三番目の選択肢であるジェットスターの明日夕刻便を電波状態の悪いスマホから何とか予約した。本当は明日は小用があって帰宅しないといけないのだが、戦う相手が天気とあっては如何ともし難い。
北海道に近づくにつれて、また少し波が高くなる時間もあったが、全般としては天気は回復傾向のようだ。13時30分に街から遠く離れた苫小牧西港にフェリー入港。積雪は10センチ程度、うっすらと陽が射している。フェリーで初めてくる苫小牧で、本来ゆったりと入港風景を楽しむはずだったのだが、入港直前までスマホで天気やら交通機関の情報収集に忙殺され、入港を堪能できなかったのは全くもって痛恨の極みである。
フェリーターミナル前のバス乗り場はとんでもない長蛇の列となっていた。フェリー半額キャンペーンでそもそも乗客が多いのか、道内の交通混乱の影響なのか分からないが、とにかくとてもバス一台に乗りきれる人数ではないので、さてどうしたものかと思いながら並んでいると、やってきたバスの運転手が「いま後続のバスを一台手配しました! 20分後に来ますので少々お待ちください!」と叫ぶ声が聞こえてきた。
当初予定時間から30分以上遅れて、私は2台目のバスにようやく乗り込んだ。車内は大混雑だったが何とか座ることができたので、改めてこれからのプラン再検討に取り掛かる。冬の北海道は何かあるかもしれん、ということで当日16時までキャンセル無料のホテルを出発前に予約していたのが結果的に功を奏した形になった。バスが北上するにつれ、また雪が激しくなってきているし、今日はもうホテルから動きようがない。
急遽予約した明日の飛行機は17時35分発で、それまでは時間に余裕があるので、昨年秋の北海道5日旅で乗り残した線区の攻略を考えてみるが、天気がどうなるか分からないし、フリー切符もないので経済的にも二の足を踏むところである。そうこう悩んでいるうちにバスはひどい渋滞の苫小牧市内をようやく抜け高速に入った。
バスは南千歳を経由して札幌まで行く。相変わらずJRダイヤはグダグダのようなので、少々高くはなるが、私はそのままバスで札幌まで行った。しかし高速を降りるとまた札幌市内の激しい渋滞に巻き込まれ、結局時計台前に降り立ったのは苫小牧港出発から2時間近くたった午後4時であった。
まだ夕方なのに既に空は暗い。苫小牧ではさほどでもなかった積雪も多く、歩道や横断歩道は凍結してツルツルになっている、少しメイン道路を外れると50~60センチはあろかという感じである。そしてまた横殴りの雪が降り始め、雪道に慣れていない私はおっかなびっくりのヨチヨチ歩きで何とか進み、這う這うの体であの巨大な札幌地下街に潜り込んだ。
地上とは打って変わって暑いくらいの地下街を歩く。機能不全に陥っているJR札幌駅を過ぎて、地下街の北の終点から再び地上に出ると、雪は一層強まっていた。夕食をコンビニで仕入れて北大前のホテルに辿り着くまで、さながら八甲田山死の行軍のような形相で私は進んだ。地元の人にはなんてことはない雪だろうが。
ホテルで一息ついてから、Cさんに今日のあれこれを報告する、というか愚痴る。位置的・時間的には未乗の札沼線・室蘭本線(岩見沢~苫小牧)・日高本線に乗ることが出来る絶好の機会なのだが、フリー切符の倍以上の費用がかかるし、途中でまた天気がどうやらこうやらとなると又も飛行機に乗れない可能性がある、そんなこんなで悩んでますねん、というようなことを取り留めもなく報告すると、Cさんからは少々の出費になっても行けるときに行っとくべきだと忠告された。それからもあれこれと考えてはみたが、結局私はその言葉に背中を押される形で未乗3線区を乗りつぶす予定を立て、天気等の不測の事態が発生した場合は直ちに計画を断念して飛行機搭乗を優先することを決意した。