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なぜ清浄国の日本で、今も狂犬病予防が必要なのか?

またまた更新がしばらく途絶えてしまいました。
冬の動物病院は閑散期で絶好の発信機会のはずなのですが、もともとの語彙力の乏しさに寒さによる血行不良が拍車をかけ、3行毎にフリーズを繰り返す旧式のパソコン状態に嫌気がさして逃げておりました。

でもそんな私にもようやく時代が味方をしてくれたようです。
というわけで、本記事はAIのサポートを得ながら作成してみました。
一般的な知見はAIで抽出し、解釈と主張は私の考えで構成しています。

今回は、「長らく清浄国を維持しているのに、未だに狂犬病予防接種が義務なのは時代錯誤なんじゃないの?獣医の利権でしょう?」という厳しい世間の目に真っ向から…ではなく、外角から差し込む変化球でお話してみたいと思います。

どうかぜひ最後までお読みください。


1. はじめに

日本は狂犬病清浄国であり、1957年以降、国内での発生は確認されていません。
しかし、海外からの動物の流入や渡航者によるウイルスの持ち込みなど、感染リスクが完全にゼロではないことを考えると、狂犬病予防接種の重要性は変わりません。狂犬病は発症すれば致死率がほぼ100%の恐ろしい疾患で、唯一の対策は事前のワクチン接種です。

「じゃあ狂犬病が日本に発生してから全国民にワクチン接種すればいいんじゃないの?」という疑問がでてきそうですが、それを可能にするためにも犬への狂犬病予防接種が重要になっています。
本記事では、"人を守るために"犬への狂犬病予防が必要な理由について解説します。

2. 狂犬病とは

狂犬病はラブドウイルス科に属するウイルスによる感染症で、中枢神経を侵し、発症後はほぼ100%の致死率を誇ります。感染経路は主にウイルスを保有する動物(主に犬、コウモリ、アライグマなど)に噛まれることによります。発症すると水を怖がる恐水症、神経過敏、意識障害などの症状が現れ、最終的に呼吸不全や心停止に至ります。

ちなみに、十字架による光の反射、聖水、ニンニクの刺激臭を嫌う吸血鬼は狂犬病患者がモデルになっていると言われています。(へぇ~×100)

くわしくはYouTubeにて🎥

3. 日本が狂犬病清浄国である背景とそれでも尚残るリスク

日本では、1950年に制定された「狂犬病予防法」に基づき、犬の登録・ワクチン接種が義務化されました。野犬の減少による感染拡大防止と、ワクチンによる発症抑制を徹底した結果、国内の狂犬病は根絶されました。
しかし、台湾などの清浄国でも、後に野生動物を介して再発した事例があり、日本でも感染リスクを完全に排除することはできません。ペットの輸入、海外渡航の増加、野生動物の移動などは、リスクを高めます。
検疫で管理されてるとはいえ、致死率の高い疾患故に二重三重の防御策が求められてます。

4. ワクチン接種の社会的意義

狂犬病予防接種に抵抗を感じられる飼い主さんの心情は、「愛犬に副反応のリスクを負わせたくない」のだろうと思います。
包み隠さずお伝えすると、狂犬病ワクチンは、個人のペットの健康を守るものではなく、人の社会(公衆衛生)を守るために行うものです。犬にワクチンを接種することで、もしウイルスが国内に侵入した場合でも感染拡大を防ぐことができます。

人間の都合で犬にリスクを負わせていると言えばその通りとしか言いようがありません。ですので獣医師(と飼い主)には接種を行える健康状態かどうかを見極め、且つ副反応に対応できる体制が求められます。
最近、屋外での集団接種が縮小されて動物病院での接種へ移行しているのはそういった理由でもあります。

清浄国(青)はごくわずか

5. 狂犬病予防接種の効果と課題

と、ここまでは広く周知されている狂犬病予防接種の意義ですが、ここからはもう一段踏み込んだ、より現実的な話をさせていただきますね。

5.1. 暴露後予防(PEP)の重要性

狂犬病には発症後の治療法がありません。つまり、発症したら余程の生命力と運がない限り、必ず死に至ります。
とはいえ、"感染犬に噛まれた=死"ではなく、発症までに対応することで救命することは可能です。その唯一の方法が《暴露後予防(PEP)》です。
ウイルスに曝露した後でも、迅速にワクチン接種を受ければ発症を防ぐことができるのですね。

しかし、日本では暴露後ワクチンの備蓄が限られており、供給体制の維持が課題となっています。
供給体制の維持とはつまり、狂犬病が発生した場合に備えて使用期限内のワクチンを十分に確保しておくことです。
課題というのは、清浄国の日本では人用に十分量の製造を行った場合、ほぼ全て廃棄になってしまいますので、無駄を承知で製造を続けるか、あるいは製造をやめて暴露後予防への備えを放棄するかの二者択一を迫られている。ということです。

さあ、どうしましょう??

5.2. 国内のワクチン製造維持

そうです。その折衷案が"犬への狂犬病予防接種"です。
狂犬病ワクチンの定期接種を義務化することで、国内のワクチン需要が一定に保たれ、製造業者が生産を継続できる環境が維持されます。
もし定期接種が廃止されれば、国内でのワクチン製造が停止し、いざ感染が発生した際に迅速な供給が困難になる可能性があります。

そうなった場合、狂犬病の拡大を阻止する方法は?

…おそらく感染者の隔離といった非人道的な方策が選択されるかもしれませんね。

5.3. 接種義務の効果

「狂犬病予防法」により、飼い主には年1回のワクチン接種義務があります。これにより、日本は長年狂犬病の侵入を防いできました。しかし、清浄国であるがゆえに飼い主の危機意識が低下し、接種率が低下している地域もあります。
これを改善するため、啓発活動の強化が求められますが、行政や獣医師が呼びかけたとて、任意であれば愛犬にリスクを負わせてまで他者を守るまではされないでしょう。
であれば、狂犬病が根絶されるか特効薬が出来上がるまで、接種義務が続くのは必要なのかもしれません。

接種証明に鑑札と注射済票が交付されます

5.4. 接種義務 vs 動物愛護

ここまで読まれて、頭で納得されても心で腑に落ちないというある方もいるのではないでしょうか。実は私もその一人です。
人間の都合で動物が割を食っている。(広く見渡せばすべての生物がそうなっていますが😢)
私に限らず、多くの獣医師はその葛藤を抱えながら、それでも公衆衛生のために狂犬病予防接種に取り組んでいます。

そういった声は行政にも届いていて、(法を犯すことはしませんが)接種による健康リスクが高いと判断される犬への『接種猶予』を申請することが可能になる自治体も増えつつあります。(法律上は義務であり、免除ではないことは強調しておきます!)
弱っている動物にまで強制的に接種を行うことは動物愛護に逆行しているという時勢の変化ですね。

打ちたくないから猶予を希望は通りませんのであしからず。

6. まとめ

日本が清浄国であることは、過去の徹底したワクチン接種と検疫対策の成果です。しかし、海外との交流が盛んな現代において、感染リスクを完全に排除することはできません。狂犬病は発症後の治療法がないため、唯一の対策は予防接種です。犬への定期的なワクチン接種は、人への感染拡大の防止と迅速な暴露後予防の実施のために、清浄国となった今でも継続が必要とされています。

いかがでしょうか。私たち人間の生活や安心が、他の動物たちの協力や犠牲の上に成り立っていることは紛れもない事実です。
「そのような恩恵なら不要!」と言いたくもなりますが、そうなると人は狂犬病に怯え、犬を敵視する世界線が待っていると私は感じてしまいます。

獣医師として私ができることは、狂犬病予防接種を機械的に行うのではなく、わんちゃんの体調をよく観察して、接種のタイミングとリスクへの備えを常に考えておくことです。
飼主のみなさんには、「私たちのためにいつもありがとうね!」と言って抱きしめてあげてくださいね。

いつもありがとうね!

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