トライブ紹介 ハードノマド【2/2】
前回に引き続き「ハードノマド」ついて、3. インタビューでわかったハードノマドにとっての「外部環境」、4. インタビューから発見したインサイトの一例についてご紹介します!
3. インタビューでわかったハードノマドにとっての「外部環境」
ハードノマドは基本的に激務の人たちだと説明しましたが、とはいえ物理的にずっと働き続けることは不可能です。それでも、次の仕事が待っているというときに、彼らは移動を効果的に使うことで激務をこなしていました。適度に気持ちの切り替えをおこなう必要があり、それが移動に結びついているのです。
ハードノマドは移動がひとつのフォーカスポイントですが、その中でも、ある地点からある地点に移動しなければいけないときに、「目的に合わせて移動手段を変える」という行動がみられました。
たとえば、カジュアルな打ち合わせのあとにフォーマルな会合がある場合、フォーマルモードに切り替えるためにあえてタクシーという移動手段をとることで自分のモードを切り替えています。逆に、カジュアルな打ち合わせに向かう際は、発散のため景色を見ながら歩き頭を整理したり、プライベートに戻る際は電車でカジュアルな本を読むなど意識的に移動手段の切り分けをおこなっています。
このように、常にさまざまな自分の役割(モード)になる必要があり、移動の間にモードの切り替えを徐々におこなわけなければいけないので、その手段として移動体験を利用しているのです。
一般的な人はオフィスとプライベートという2軸ですが、「プライベートと仕事の区別があまりない」という点もハードノマドを理解するうえで大きなテーマといえます。
ハードノマドは所謂オンとオフ、地方と都内というような二軸ではなく、すべてが仕事につながっているため、その中で少しプライベートよりな仕事、フォーマルな仕事、インプット作業、アウトプット作業という風に、生活と仕事が溶け合っていて、その中でモードに合わせて自分を変化させていく必要がほかの人に比べて高いといえるでしょう。
そこで移動手段や作業場所といった外部環境を意図的に変え、自分のモードの切り替えに役立てています。
また、スケジュールもすべて自分で管理する必要があるため、「〇曜はこの作業」「〇曜は定例打合せ」などスケジュールを先に決め、それに従うように働いているという特徴もありましたが、スケジュールも一種の外部環境のように捉えているといえます。つまり、
〇〇な移動体験をして〇〇なモードになっていく
〇〇な作業環境で働いているから〇〇なモードになっていく
〇〇なスケジュールなので〇〇な働き方をする
という風に、この調査を通じて分かったことは「自己マネジメント」がハードノマドたちにとっての大きなテーマになっているということです。
4. インタビューから発見したインサイトの一例
彼らは周囲の環境に対する敏感さを持っていて、作業場所ひとつとっても、
・少し人目があったりザワついているほうがやりやすい作業
・静かなほうがいい作業
・照明や空調がこうだからこういう作業
など、細かいレイヤーで作業場所を把握し、モードの切り替えに役立てています。
モードの切り替えということを考えるときに、「どうして同じ場所では作業できないか?」という疑問があるかもしれません。これはフリーランスたちが「自宅では仕事がはかどらない」ということと同様で、オフィスであれば電話対応や同僚との雑談、自宅であれば趣味や家事など、少し気を許すとほかのことに気が飛ぶ要因が周りにいくらでもあり、やらなければいけないことや、やりたいことが多すぎるという問題があるためです。
一方カフェなどは、それらを気にせず、自分のやりたい作業のことだけを考えられる空間になっているため、彼らにとっては価値があるのです。
ハードノマドたちはその中でもさらに細かいレイヤーでやりたい作業が細分化されていて、それに応じて場所が紐づいています。
ハードノマドの調査から得られたプロファイルのひとつに「あえて長居しないために、負荷がかかる環境に行く」というものがあります。
最近のコワーキングスペースは24時間いられるところも多く、居心地のよさこそが大切と思われがちですが、落ち着きすぎるとずっとダラダラいてしまい、結果作業効率は落ちてしまいます。
この観点でみると、Yahoo!が運営するコワーキングスペースの「ロッジ」は、22時に閉店してしまうため、終了時間を逆手にとって強制力にしているワーカーも多いかもしれません。
決められた時間までに終わらせなければいけない環境にあえて身をおき、自己マネジメントしているのです。
今後ノマドワーカーが増加していくことは明らかですが、仕事とプライベートを分けないような働き方をする人が増加した未来のオフィス環境において「人が集まって働ける場所だけ」という場所の価値は薄まっていくでしょう。
たとえば、アーリーウォーニングサインとして、ジムがオフィス内にあったり、オフィス内に睡眠スポットがあったり、境目がなくなってきている人のプライベートにオフィスが寄り添いサポートしている事例もあります。
また、興味深い事例として紹介したいのが「バスハウス」というワークスペースです。
ワークスペースとして運営していますが、銭湯とクラフトビールにフィーチャーしていて仕事ができるという価値はあとにきています。
最近、とくにミレニアル世代の間でみられる、仕事とプライベートの明白な差を作らず、趣味のように働くという考えかたをSEEDERでは「チルワーク」と呼んでいます。
これまでのように仕事が終電で終わらず仕方なく会社に泊まるワークスタイルではなく、仕事中も少しプライベートなことをしたり、プライベート中は仕事にいかせることを探したりするようなうまく融合したハイブリットな働き方が広がっていくのではないでしょうか。
実際、副業も収入のためだけではなく、気分転換や情報収集のためにあえて別の仕事をしているという人も増えています。
気分転換としておこなえる仕事があるように、自宅でもなく会社でもない場所でゆるく働くスタイルを選択する人が増加していくことが予想され、すでにそのニーズに対応した飲食店の事例も登場しています。
ハードノマドのリサーチから得られたのは、「移動はせざるを得ない消極的なものではなく、リフレッシュのための積極的な時間になる」という未来です。
この分析から考えられるインフラ系のビジネスチャンスとしては、同じ移動手段を使っている人は実は目的意識が近い可能性が高いため、たとえば、同じ新幹線に乗っている人同士の話すきっかけ作りなどは、新しいサービスを生み出すヒントになるのではないでしょうか。
最近ではフェスに行く際の車の相乗りサービスなども人気ですが、自分の興味分野と同じ、もしくは異なるが話しかけたいと思えるような雰囲気や仕組み作りができれば、移動時間に新たな価値を生むことができるでしょう。
今回は「ハードノマド」についてご紹介しました!
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