トライブ紹介 eスポシューマー【2/2】
前回に引き続き「eスポシューマー」ついて、6. インタビューの中でわかったeスポーツの特徴的な楽しみ方は何か?、7. インタビューから発見したインサイトの一例についてご紹介します!
6. インタビューの中でわかったeスポーツの特徴的な楽しみ方は何か?
身体拡張ゲーマーの特徴的な発言は「ARでプレイしていると自分自身がコントローラーになって自分を操作しているような感覚になってくる」というものです。
たとえば今回調査した方がプレイしていた「HADO」というゲームでは、ARキットと腕にもガジェットをつけ、フィールド上で腕からビームを出して相手を倒すことができます。
このように自分自身を操作することに対してのおもしろさや、三次元の自分をバーチャル上に投影しながら「自分の能力を拡張している感覚」に醍醐味を感じていることがわかりました。「自分が動いてはいるが、客観的に自分自身を操作しながら勝負をすることが特別に感じる」というのは実に興味深い考え方といえるでしょう。
また、eスポーツ全体の特徴として、対人のほうが圧倒的におもしろいという意見が多くありました。では、AIではなく対人にしか存在しないものは何なのかということを深掘りするため、「AI対戦と対人戦のどちらがいいですか?」という質問をしました。あるトライブからは「AIで対戦するときには行動の予測ができるからこそ、自分が極めたい特定のスキルを専門に覚えるためにAIと戦っている」という回答がありました。
一方対人戦には、一戦一戦行動の予測ができない点におもしろみを感じるとのことで、だからこそ自分で相手はこういう行動するのではないかと予測=戦略を立てるのです。予測できない中で相手の行動を予測してそれにあわせて行動してぴたっとはまった瞬間がすごく楽しいし興奮する瞬間だといいます。
これはスポーツとも共通することですが、eスポーツはどちらかというとゲームのテクニックやスキルを競うゲームと思われがちですが、スキルではなく、どちらが相手の思考を上回ったかというような思考の優劣を決めることが、ゲームとして消費されているのは非常にユニークな発見でした。
7. インタビューから発見したインサイトの一例
ここで、このリサーチから得られた大きなインサイトをひとつご紹介します。
ゲーム性といわれているものは「世界観」に置き換えられます。この世界観をゼロから自分で作っていくのではなく、「ある程度決められた制約的な環境の中で、自分が限定的に創造したい、その中で戦略といったクリエイティビティを楽しみたい」というインサイトを発見しました。
つまり、ユーザーがゼロから世界観を作るのではなく、ゲーム提供側が世界観そのものをプレゼントし、その中で彼らなりの工夫で楽しむことができるようなエンターテイメントの設計は非常に重要になっていくでしょう。
たとえば、すでに出ているゲームの中では「マインクラフト」などが好例です。ある程度ルールは決まっていますが、自分で集めた素材で何を作るかや、人の作った家を壊すなど、どういうプレイスタイルで楽しむかは自由です。
マインクラフトをゼロから作るのではなく、マインクラフトという環境下の中で自分の行動を決めたり何を作るか決めたりする遊び方は、今後一般の生活者にも広がっていくでしょう。
もうひとつは「スーパーマリオメーカー」です。ゲームの基本ルール自体は変わりませんが、ステージをどう作るかは自由で創造性があるため、プレイするよりゲームの環境を作るほうが楽しいという人たちに刺さっているのです。
一方、何かを作るではなく思考や戦略という部分でプレイする人たちが存在するため、今後は作り手側とプレイ側、双方で創造していくゲームにさらになる需要が出てくるのではないでしょうか。
既存のゲームは作り手起点で考えられているものが一般的ですが、今後の生活者の求めるものとして、プレイヤーの自由度を高めていくことは主流になっていくでしょう。
このインサイトはゲーム業界だけにとどまらず、たとえばアプリやサービスを提供する会社や、どんな要素を含めば継続要素があるのかなど、体験をデザインしているような会社であれば活用することが可能です。
今回は「eスポシューマー」についてご紹介しました!
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