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トライブ紹介 モバイルレジデンツ【1/2】

私たちSEEDERは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。トライブレポートの詳細については、まずはこちらの記事をどうぞ!

トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング、支援を行っています。

今回は「モバイルレジデンツ」をご紹介します。


「モバイルレジデンツ」は、居住空間の今後の所有の仕方や、人びとが今後どのような暮らしを求めるかといった「住まいの未来」を知るために調べたトライブです。

1. 「持たない暮らし」と「旅をするような暮らし」

まず、彼ら、彼女らに注目した背景として、2つの大きな社会変化を抑えておく必要があります。

ひとつめは「持たない暮らし」が増えてきたということです。これまでSEEDERでは「モノの所有の未来」を見るために、「シャリオ」「オンラインフリマ」「エニカ」などを調べてきましたが、サブスクリプションサービスやシェアリングエコノミーが広がっていくと、人はどんどんモノを所有しないで暮らせるようになってきています。この流れの中で「家を持たない」という選択をする人も現れ始めています。

ここでいう「家を所有しない」というのは「戸建てを購入しない」「マンション、アパートなどの賃貸物件を借りて暮らすことをしない」という意味です。

最近いちばんポピュラーな形で現れてきているのが、個室はあるが台所やお風呂、トイレなどの水まわりは全員でシェアして使うシェアハウスやソーシャルアパートメントです。

これまで当たり前のように、生活空間として誰もが家を所有していましたが、所有しないという選択ができるようになった一例といえるでしょう。

シェアハウスを活用しているのはミレニアル世代が中心ですが、この世代の中には「人とモノをシェアすることで、広々としたリビング、アイランドキッチン、シアタールーム、ジャグジーなど、自分では買うことができない豪華なものを使用できるメリットがある」という価値観がありました。

ふたつめの大きな変化が「旅をするように暮らす」という価値観の登場です。

この背景にはフリーランスが増え、デザイナー、エンジニア、ユーチューバーなど、パソコンがあればどこでも仕事をすることができる職種が増え、リモートワークが可能になり、場所を固定せず人が働けるようになってきたという要因があげられます。

必ずしもひとつの場所に家や拠点を決めて住む必要がなくなり、実際にリュックサックやスーツケースひとつでAirbnbなどを利用して海外を移動しながら生活している人も存在します。

このように、モバイルレジデンツたちは「家という箱の中に必ずしも生活に必要な機能を備えている必要はない」「必ずしも同じ場所に帰る必要はない」という価値観を持つ人たちです。

2. 調査対象者

実際調べたのは、ホテルやゲスハウスを毎日点々としながら暮らす人や住機能を持たない空間(バン、タイニーハウスなど)で暮らす人たちです。彼らは生活に必要な機能を自分で持たず他人とシェアしたり、掃除や洗濯などはアウトソースするなどしています。

そもそも、何故彼らが「家を持たない暮らし」を選択をしているのかを理解するうえで、彼らの根本にある大きな価値観を知る必要があります。

モバイルレジデンツは30代前半のミレニアル世代が多く、このような行動がひとつの世代に集中していることには原因があり、1992年のバブル崩壊に始まり、その後の阪神大震災、米同時多発テロ、リーマンショック、東日本大震災、大企業の倒産・リストラといった、経済成長の崩壊や安全神話の崩壊、終身雇用の崩壊という出来事を立て続けに体験しています。

「家は一度買ったら一生暮らすことができる安心安全な絶対的なもの」と思われていたものが、津波で一瞬で流れるシーンを目の当たりにしたり、大企業の一斉リストラで職を失うなど、「当たり前のもの」が一瞬で壊れることを痛感しているのです。これらの経験から、彼らは終身雇用で働くことや、家を買うことなどこれまでの「当たり前」に疑念を持って生きています。

また、データからも分かるように実際持ち家を購入する人は年々減少傾向にあり、逆にシェアハウスに住む人は増加傾向にあります(データ参照)。民泊やAirbnbも増え、家がなくても泊まる場所がないという状態はなくなってきているといえるでしょう。

3. インタビュー対象者のセグメント

今回調査したのは以下の3セグメントになります。

アドレスホッパー

住まいを所有しない生活者。完全に居住空間を持たず、ホテル、ゲストハウスなどシェアリングスペース、Airbnbを毎日点々としている。

「アドレスホッパー」という名は自身もアドレスホッパーであるIさんが命名し、広がってたもの。

ダウンスケーラー

お風呂など住まいの機能を外部化する生活者。

家は持っているがコンテナのようなそぎ落とされたスマートな家やタイニーハウスで生活する。タイニーハウスは車輪がついている移動可能な家。

バンライフ

バンやトラックの上に家を設置したモバイルハウスで暮らす生活者。

駐車場で寝泊まりしたり、コワーキングスペースの駐車場に止めて住んでいる人もいる。

4. アドレスホッパーの価値観

アドレスホッパーのIさんは日本で初めてのこの暮らしを始めた第一人者であり、リュックひとつで生活していて、その日行きたい都合のよい場所を選んで点々としています。

彼からは「Googleでホテルと調べれば絶対出てくるから、帰る場所がないなんてありえない」という象徴的な発言がありました。たとえば、飲み会が渋谷であった場合、「家が遠いから行くのやめよう」など、場所に縛られて何かができないことが嫌で、自分の直感や感性にしたがって生きていたいという考えを持っています。

居住地が固定されていることは「フレキシブルになれないリスク」と考え、そのような言い訳をしないためにも家を持たないといいます。

また、「家はただの箱でそこにコミュニティはないため、ただの箱にお金を払うモチベーションはない」ともいいます。シェアハウスはそこにコミュニティがあって人がいるので、どうせお金を払うならコミュニティのある空間を選びたいと考えていました。

移動生活のため、荷物はほとんどありませんが、段ボールに荷物を入れて送ると写真で一覧にして見ることができる「サマリーポケット」を使用しているため不便はないといいます。

自分でモノを持ち歩かなくても好きなときに取り出すことが可能なため、Iさんはそれを「四次元ポケットのような感覚」で使用しているといいます。


次回は「モバイルレジデンツ」の、5. ダウンスケーラーの価値観、6. バンライフの価値観、7. インタビューから発見したインサイトの一例についてご紹介します!お楽しみに!

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