トライブ紹介 バーチャルショッパ【1/2】
私たちSEEDERは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。トライブレポートの詳細については、まずはこちらの記事をどうぞ!
トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング、支援を行っています。
今回は「バーチャルショッパー」をご紹介します。
バーチャルショッパーは、VR空間においてスキンと呼ばれるアバター用着せ替えサービスを購入していたり、VRヘットセットを通じてVR空間でコミュニケーションをとっているなど、先進的な消費行動、コミュニケーション行動をとっている人たちです。
VRやARといった先進的技術は、現在はまだキャズムを超える少し前で、アーリーアダプターが市場にいる段階です。そもそもVR用のヘッドセットなどの機器の価格は、まだ一般層が気軽に購入できる価格ではありませんが、今後さらにコンテンツが増え、ニーズも増えていくことで、VRの機材も価格が下がると予想されます。VRがキャズムを超え、今より一般的となった時、どんな事業やサービスに応用できるのかという視点で今回調査をおこないました。本記事では、VRだからこそ得られる体験、その体験が消費財や耐久財の販売プロモーションにどのように応用されていくのか調査した内容の一部をご紹介します。
1. バーチャルショッパーの示す未来
VR(virtual reality)とは、コンピューターによって作られた仮想空間を現実にいるように体感できる技術と括られており、VRヘッドセットをつけて視覚情報を限定するため、視聴するコンテンツの没入感が非常に高いことが特徴です。現在は視覚的な技術がメインですが、遠隔でも触覚や嗅覚のフィードバックを得ることができる技術も研究が進んでいます。
VR以外にも、現実世界にコンピューターで作られた仮想のものを重ねて投影表示する、AR(Augmented Reality)、所謂「拡張現実」と呼ばれる技術も調べています。
今後、MR(Mix Reality)といわれる技術によって、VRやAR技術と現実世界が統合されていくと言われてます。現実から生み出された仮想現実を、再度現実世界に持ってくるという考えのもと、ホログラムやARグラスなど、現実世界にいながら仮想世界の情報が体験できる技術が研究されています。
仮想現実と現実の境目がなくなっていく未来を見据え、リアルなゲーム体験はもちろん、購買、旅行などの購買行動にどのような影響を与えるのかをリサーチしました。
今回のレポートでインタビューをおこなったセグメントは以下のとおりです。
バビニスト
VTuberとして美少女キャラのアバターをに男性が着用、美少女になりきり(バ美肉)、仮想空間で現実の自分とは異なる存在として、別人格を持って生活している人たちです。
アバタイザー
VRやオンラインサービス上で、自身の分身となるキャラ操作を行う人たちです。
現在VRを用いたゲームでは『フォートナイト』『荒野行動』『あつまれどうぶつの森』などが人気を博し、仮想空間上では今後もさまざな自身の分身と言えるキャラクターが登場すると考えられます。このような仮想空間における、自分と容姿は異なるが、自分と同一視しながらキャラクターを操作する際の体験や行動を調べました。
ライブライダー
VRやオンライン上での映像視聴を行うライブライダーですが、まずは視聴という簡単な行動からはじめ、VRに興味を持てば徐々に、キャラクターの操作、ボディトラッキングと、画面の中に没入していく行動の変容が追えるのではないかと見立て、調査しています。
2. VR機能の4つの価値
前提として、VR機能を活用すると4つに分類して機能価値が生まれます。
①現実空間を代替する空間の機能
人と人が対面でコミュニケーションをする際の空間演出など、空間自体を仮想的に作り出すことが可能になります。
②身体シミュレーションの機能
センサーを装着してボディトラッキングすることで、身体を使った作業のシミュレーションが可能に。例えば触覚フィードバック技術の進歩は医療領域において、執刀の感覚を遠隔でも得られるため、正確な遠隔手術ができるようになると期待されています。
➂物理的シミュレーションの機能
現実に起こる現象を仮想空間で再現できます。さらに、現実空間の変数をいじれることが特徴で、重力や速度をいじれば、投げたボールをスローに見せるといったことも簡単にできます。
また、ボタンを押すだけで仮想空間に表示されるものを切り替えることが可能です。たとえば、卓球のサーブを打ち返せない人がいるとして、相手のサーブの軌道や速度を瞬時に処理できずに打ち返せなかったという結果になりますが、仮想空間では、ボールの軌道や回転はそのままに、自分でも打ち返せる速度に変更可能になります。
④異世界への没入機能
さらに、①~➂を組み合わせることで、④異世界へと没入していくことができます。
ポイントは、身体の動きが正確に仮想空間に反映、現実空間にフィードバックされ、現実だとできない瞬間的な映像の切り替えなどが組み合わせられることです。その結果、空間内で求められる振る舞いの学習や、反復練習による身体能力の獲得などができます。
3. VR空間におけるの苦手分野の反復学習
今回特にご紹介したいのが、身体能力の向上や身体を活用する技術取得についてです。
インタビューを行ったバ美肉としてVTuberとして活動している男性は「VRは脳をどれだけ密度高く、短時間で上書きできるかだと思っています」と発言していますが、彼は仮想空間で数分でけん玉ができるようになったといいます。
現実空間でけん玉ができる訳ではなかった人なのですが、VR空間では重力や加速度の調整ができるため、自分がけん玉をふっている感覚がVR に反映され、けんを刺す感覚をリアルに感じられ、リアルでもけん玉ができるようになったそうです。
また、VRでは、トライ&エラーがおこないやすいという特徴があります。
何故なら、自分が打てる落下速度、あるいは自分の動かし方の癖などの外部の変数をVRに入力することで、結果として映像に出力されてフィードバックデータが返ってきます。これにより、仮想空間では現実空間よりも自分がラーニングしやすい形で練習することが可能となります。現実では決してできないことを仮想空間で練習、体験することができ、タイムパフォーマンスは現実空間よりはるかに高いのです。
ほかにも、バレーのサーブを打つのが苦手な人であれば、現実空間では球拾いが必要ですが、その必要もありません。入射角、反応速度などを入力することで、プロが打ち出すサーブのカット練習も永遠と練習が可能になるのです。
あらゆるスポーツの分野で、自分の苦手分野を取り出して反復練習ができるのがVRの利用価値のひとつといえるでしょう。
現在の技術では、既に現実空間の身体感覚とほぼ変わらないレベルでVRに反映させることが可能です。
次回は「バーチャルショッパー」の、4. VR空間におけるコーディネイト学習、5. 自分の能力の限界値を引き上げるために仮想空間で練習をおこなうようになる、についてご紹介します!お楽しみに!
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