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トライブ紹介 エニカー【2/2】

前回に引き続きエニカーついて 4. Anycaの特徴的なオーナーたち、5. 自分の好きなものに共感してもらえることがシェアリングエコノミーの付加価値についてご紹介します!


4. Anycaの特徴的なオーナーたち

Anycaを調査していくと、オーナーそれぞれが工夫して車を貸し出すことでシェア数を伸ばしていることが分かります。今回はその中でも特徴的なオーナーをご紹介します。

ワゴン車とBBQセットのレンタル

8人乗りの日産セレナを格安の3750円でレンタルしている。ファミリーで車に乗って行楽シーズンを楽しみたいという方にさらに楽しんでもらいたいという思いからBBQセットを無料で貸し出している。このサービスは借り手の評価も良く、沢山の回数貸し出されている。レンタカーにはない、おもてなし精神もAnycaの特徴の1つである。

Anycaで車を売買し新車もAnycaでシェア

中古車をAnycaでシェアリングし、その車を高値で売却、のちに新たな中古車を購入し、その車もシェアリングしている。貸し出しているのは日産のセレナ、いわゆるファミリーカーで家族や、大人数の仲間とドライブする際にとても使いやすい。都内という好立地でありながら5000円以下で貸し出すことが出来ているのは中古だからである。現在シェアリング中の車をAnycaで売却することも視野に入れている。

ステーションワゴン痛車

1日6000円で痛車の貸し出しを行なっている。オーナーはデザイン事務所を経営しており、この痛車もオーナーがデザインしたものと思われる。痛車のベースの車はスカイラインとほぼ変わらないエンジンが搭載されているSTAGA。爽快感のある走りに人気がある。借り手のコメントを見ると、「イベントに行く際に乗った」「会場で注目を浴びることができた」という満足げな声が多数ある。

内装にこだわったキャンピングカー

一番の魅力は一目でわかる大改造された内装。anyca初のキャンピングカーというキャッチフレーズで貸し出しを行なっている通り、後部座席は全てソファー席、真ん中にテーブルが設置されている。14800円とanyca内では高いものの、レンタルで30000円~が相場のキャンピングカーと比較すると圧倒的な安さ。快適さに惚れ込みリピーターも多い。

圧倒的存在感のスポーツカー

アメ車スポーツカーの代表格のスーパーカーであるコルベットを貸し出している。世界で最後のリトラクタブルライト(前照灯を格納できる車)であるC5は「最高に美しいフォルムのスポーツカー」が体現されている。車のカラーはイエロー。そのフォルムとカラーが圧倒的な存在感を放ち、乗る人に快感を与えると記載している。所有するには恥ずかしいスポーツカーも1日借りられるなら夢の体験といえる。

超レトロクラシックカー

マツダのクラシックカーAZ-1を平日3000円という破格の安さで貸し出している。壊れたら終わりともいえる年式のものであるが、プロフィールには出来るだけ多くの人に乗ってもらいたい、との記載がある。また、借り手側にも感動の声が集まっており、リピーターも多い。Anycaの開催する多数のイベントにも参加しており、車を貸し出すことでお金を稼ぐだけでなく、コミュニティでの関わりを楽しんでいる様子が伺える。

5. 自分の好きなものに共感してもらえることがシェアリングエコノミーの付加価値

今回調査したエニカのセグメント以下の3つです。車をC2Cでシェアすることで生活が豊かになるという価値観は共通で、何が好きかというアプローチは異なります。

シェアリング・ラバー

便利さではなく、共有すること自体に魅力を感じ、Anycaを利用し続けているオーナー、またはドライバー。車を共有することで自身の経験をもシェアすることも求めている。

シェアリング・コミュニティスト

単なる車好きというわけではなく、利用者同士のコミュニティに魅力を感じてAnycaを利用し続けているオーナー、またはドライバー。

ビジネスロールプレイヤー

Anycaをビジネスの一つとして利用し続けているオーナー、またはドライバー。自分の蓄えたビジネスナレッジを生かす場所としてAnycaを利用している。

シェアリング・ラバーの男性はエニカーのアンバサダーにもなっていて、最初はオーナー側としてAnycaを始め、そのうちドライバー側にもなったそうです。彼のように、借りる側、貸す側、入口はどちらでもサービスを知ることができ、どちら側にもいけるのがC2C系のシェアリングエコノミーのおもしろい点といえるでしょう。

ただし、シェアリングエコノミー系のビジネスをデザインする際は、借り手、貸し手両方のインサイトとサービスデザインを丁寧にしなければいけません。また、サービス立ち上げ時はまず商品が揃わなければ人も集まらないため、貸す人を増やさなければ成り立たないということを意識しましょう。

もうひとりのシェアリング・ラバーの男性は、当然、車をぶつけられるなどのアクシデントもあるが、貸すことをやめようとは思わないといいます。たとえば、自分の洋服やベッド、キッチンは貸したくないが、何故車は貸すのかと考えると、それが自分の趣味のものだから、その趣味性を相手に伝える楽しさや、それに共感してもらえる喜びがシェアリングの価値だといいます。

つまり、自分の趣味のものを貸すということは、便利、安くなる、いつもは使っていないものを借すというだけではなく、趣味性の交換、自分の好きなものに共感してもらえたということが付加価値になっているのです。サービス設計をする際にはこのことを忘れてはいけません。

シェアリング・コミュニティストの男性は、車にはさほど詳しくないもののコミュニティが目的でAnycaを利用しています。Anycaのイベントなどが好きな理由は、「さまざまなバックグラウンドをもっている人と関われること」だといいます。

このことから分かるのは、単に「車のコミュニティ」ではコミュニティを作るのは難しく、そこに「車を貸す」という具体的なテーマがあったからこそ成り立ったわけです。

車に限らず、テーマが必要というのはコミュニティデザインの際に意識すべきポイントです。

ほかにも、印象的な発言として「色んな人に乗ってもらって色々話したりコミュニケーションがとれるので、中古車屋さんで売るより的確な人に売れるという手ごたえがある」という話がありました。本来貸し借りのプラットホームだったAnycaに、より高性能な売買プラットフォームとしての価値が出ているのも興味深い点です。

エニカーのレポートにはおもしろいポイントがたくさんありますが、そのひとつがこの手のシェアビジネスはコミュニティから始まっているということです。

たとえば、レンタカーより価格をあえて高めに設定して、自分の愛車に対してそれが好きで乗ってみたいという人を選別しているオーナーも存在します。

また、オーナーは当然自分が欲しい車を購入するわけですが、そこに「人が乗りたそう」「覚えてもらえそう」という基準も加わり始めているのがこのトライブの面白い点です。

シェアリングエコノミー系のサービスを作る際は、便利に貸せるか、適正な値段に設定できるかという視点でサービスデザインしがちですが、そこにはコミュニティがあるので、「より高く貸すこと」より、「よりいい人とマッチングしたい」という思いがあります。その結果、「高くてもいいという人とマッチングしたい」から、高く設定しているという背景があるのです。

趣味やこだわりのある人たちのコミュニティでシェアリングをする場合、このような意識があることをペルソナ作りの際は意識してサービスデザインするとよいでしょう。

当然、最終的には一般的な人たちに広がって普通の人たちも使うサービスになっていきますが、Airbnbなどの例をみてもわかるように、最初は「自分の部屋を見せたい」「インテリアセンスを共有したい」「いろんな国の人と交流したい」といった「イノベーティブなサービスを使っている人同士でつながりたい」という思いからスタートしているのです。

シェアリングエコノミー系のサービスを作る場合、コミュニティを作ることを意識してサービスを作ることで立ち上げがうまくいくでしょう。

最後に、エニカーから分析した社会変化仮説をご紹介します。

歴史を振り返るとかつては畑や牛や馬をもっていたり、鉱山をもっていたりする一部の人や企業が資本家と呼ばれ、これらもある種のシェアエコノミーの走りだったといえます。

現代ではAnycaのようなサービスが登場し、もはやどんなものでも、安く、早く、適切な人に貸せる時代になりました。すべての人が資本家のように自分の持ち物を貸して利益を得ることができ、貸し借りによってコミュニティに参加でき、コミュニケーションができる、資本家のようにふるまうことができる社会を、SEEDATAでは一億総資本家社会と呼んでいます。

つまり、稼いで働くという今までの経済的概念では捉えられない、個人が自分のものを少しずつ貸したり借りたりできるような社会になってくると、経済資本のあり方も変えていかなければいけません。

あらゆるものは、「買う、貸して収入を得る、自分も使う、売る」までがセットになってくると、働いて稼ぐだけではなくなり、定価という概念も変わってくるでしょう。そして当然、耐久性の作り方も変えていかなければいけません。

このことはすべての製造業・サービス業に関わってくることです。いずれ一億総資本家社会になっていくことを考えると、今後耐久財はシェアされること前提で商品開発をしなければいけませんが、実はまだシェア前提の商品開発はどのメーカーも手をつけていません。ここにひとつ大きなビジネスチャンスがあるといえるでしょう。


今回はエニカーについてご紹介しました!
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