【フロゴナ】『影と光』から読み解くフェリクスと燈の過去と絆と運命文脈
8/20(土)、from ARGONAVIS(以下フロゴナ)のV系バンド・Fantôme IrisのSound Only Live(以下SOL)が配信されました。ダブエスが継続していれば実装されていただろう『ピエロ』のストーリーのプロットを基にした書き下ろしボイスドラマの満足度もさることながら、SOLで解禁された新曲はどれも素晴らしいものでした。
MUCCの逹瑯氏やシドの面々等、豪華なアーティスト陣による新曲の数々でファントムの世界観がまた一段と華やかなものとなりました。特にシドはマオ氏の長期療養で現在活動休止していたこともあり、彼らの書き下ろし曲がまた聞けると知った時の喜びは言葉にし尽くせません。あわよくば次は団長からも書き下ろし曲を頂きたい願望も。
そして今回私が特に心を惹かれている新曲が『影と光』。
『メンバーの出会い、メンバーとファンの出会いをイメージした、聞く人により様々な解釈が生まれる曲』
と、我らが北岡Pが言及した楽曲になります。
SOLでこの曲を聞いた瞬間、私はすぐに『フェリクスと燈の曲だ』と直感しました。楽曲を一通り聴き、時間の許す限り耳コピでまとめた歌詞を何日も咀嚼し続け、ハッキリと確信しています。
これまでnoteやtwitterを通して私を知っている方は語るに及ばずかとは思いますが私はこの作品でも特にフェリクスと燈、そして彼らの関係性を根強く推している者です。それもあってこの楽曲に対しての思い入れは他の楽曲とはまた一線を越えたものであり、アルバム発売を待つ日々の中この曲に思い馳せては涙を流す毎日であります。早く音源が欲しい。今すぐにでも楽曲ストーリーを公開してほしい。
そんなオタクの衝動を何かの形に残したい思いからこのnoteを綴るに至りました。権利等の問題から耳コピとはいえ歌詞をフルで掲載することはできませんが、その中でも私が特に印象的に映った歌詞、そしてそこから読み解けるフェリクスと燈の濃密すぎる関係性の文脈について、まだ彼らのことをよく知らない方々へ少しでもこの想いを共有できればと思います。
【ダブエスで描写されたフェリクスと燈の関係性と概要】
まずフェリクスと黒川燈がどんな関係性なのか、という前提がなければいけません。それについての詳しい内容は下記2つの記事にてこれでもかとまとめています。またSOL関連のツイートもモーメントでまとめているので臨場感を思い出したい方は暇なときにでも読んで下されば嬉しいです。
【ダブエスのフェリクスと黒川燈のもっと知られるべき関係性】
【ダブエス】フェリクスにとって黒川燈ってなんなの……?
220820 Fantôme Iris SOLと影と光関連ツイート
上記の通りフェリクスと燈はファントムのVoとGtであり、元々燈は前盤のVoだったフェリクスとそのバンドのファンでした。
ダックリバー社やメンバーとの軋轢、日本音楽業界の在り方に首を傾げるフェリクスが言い渡したのはメジャーデビューを前にした電撃解散宣言。そのライブハウスに居合わせた燈は彼に否を唱え、名を聞かれるがままに応え、そのまま新バンドへの勧誘を受ける。
ファントム結成から4年。フェスのために上京するべきか、夢と仕事の両立と己の仕事観に思い悩む燈に対してフェリクスが背中を押すファントムバンスト1-5。鞍馬唯臣との一悶着、そして宇治川紫夕との過去を通じて垣間見えたフェリクスの過去と人物像をセンシティブに描いた物語はイプシの『End of reason』楽曲スト、イベスト『壊れた世界の花』が象徴的でしたね。
そして四年前、フェリクスと燈の『二度目の出逢い』を描いたファントムバンスト4章。他にも語り尽くせば止まらないストーリーは山ほどありますが、彼らを象徴するストーリーは上記に詰まっているのではないでしょうか。
そしてここからが本題。ストーリーとしては上記の通りですが、彼らを語る上で外せないのがダブエスの『ヒストリー』で明かされたフェリクスの過去、そして『一度目の出逢い』になります。ダブエスのサ終に伴い全キャラのヒストリーが公開されました。
自分にとって蔑称であり、事実それにより実母の命を奪ってしまったと内向的になってしまった幼少期のフェリクス。その彼を救ったのは普通なら出会う由もなかった、海の向こうの少年の何気ない一言。紆余曲折を経てもう一度日本に来たフェリクスと当時の少年は16年後、運命の出会いを果たしたのです。
余談ですが彼らのヒストリーでは各々の出会いに際し、運命の出会いと題された邂逅があります。どんな関係性もすべてに意味があり、尊き出会いであることはもちろんですが、実のところヒストリーで『運命の出会い』とハッキリ記されていたのはアルゴナの七星-五稜-的場、そしてフェリクス→燈の一度目の出会いのみだったのです。
また更に余談として、2021年4月12日、黒川燈の誕生日限定ボイスで彼はこんなにも重大な発言をしていました。
『トモル、誕生日おめでとう!
僕がここにいるのは君の……いや、これからも
一緒に美しい音楽を奏でていこう』
どう考えてもたった一日しか聞けないメンバー相手の誕生日限定ボイスで残していい爆弾じゃない。
これほどの過去を経て、これほどの想いを20年もの間抱えていながら。あの金髪フランス人、これまで一言も燈にもメンバーにも20年前の過去のこと伝えてなかったんですよ。幾らこのままではフェスでは勝てないことを痛感させられたとはいえ、憎まれ役を買ってでも自分はJanusや今回のボイドラでメンバーの人間関係を突いて起爆剤にしようとしてるのに。紫夕ちゃんとの過去をやっと話したとはいえ鞍馬との一件は一向に明かそうともしないのに。
自分を慕うメンバーに自分が救われていたなんて重大すぎる過去を、この四年間一向に明かそうとしてこなかったんですよ。
そのフェリクスが。『運命の出会い』を胸に秘めた彼が。一言目に発したフレーズが。
『運命の出会い 君と僕はひとつ
同じ夢を追いかけよう』
これをフェリと燈の曲と捉えずに何と考えればいいんですか???
【印象的なフレーズ】
語りだせば止まらない『影と光』ですが、ここからは各フレーズで特に印象的に映ったフレーズを幾つか挙げます。またこれから綴る歌詞はすべて私の耳コピです。実際の歌詞とは大きく異なる可能性があることを考慮した上でお読みください。早く音源が出て正式な歌詞を目にできることを願う日々です。
色のない世界彷徨う 孤独を抱いて
このAメロこそこの曲がフェリクス視点の詞だと印象付けるフレーズではないでしょうか。前述のダブエス内イベント『壊れた世界の花』のフェリクスの☆4カード名は『孤独な花』。エリカの花言葉であり、今なおフェリ推しの心をかき乱す『見せているのは裏側だけかもしれないよ』の引き金になった話。
マオ氏がどこまでゲーム内の節々のワードを汲み取って歌詞を綴ったかは一ファンからは分からないものの、『吸血鬼の子』時代の彼を匂わせる単語として『色のない世界(=壊れた世界)』『孤独』といったフレーズを用いて下さったのはフェリクス推しとして大変冥利に尽きます。
余談ですがこのBメロの『きっかけのない空に言い訳を散りばめて』というフレーズはこの曲どころかこれまでのファントム曲の中でもトップクラスに好きな歌詞です。ファントム曲で好きな歌詞を聞かれると私はこれまで『un:Mizeria』の『憂いに満ちた報われぬ君の偶像 祈りにも似た鈍色の胎動』を挙げていましたが、今回のこれはそれと肩を並べるほど初見時から強く印象的に映りました。本当に早くアルバムの歌詞カードが見たい。アルゴナ2ndアルバムの歌詞カードの完成度を見せられている手前、今回のカードも期待しています。
新しいステージで僕は僕を名乗るよ
このフレーズこそこの曲をこの曲たらしめる重要な一節ではないでしょうか。前述したフェリクスの幼少期、解散ライブ。フェリクスが20年もの間胸に秘めてきた黒川燈への想い、その半生がこのフレーズに詰め込まれているといっても過言ではありません。
ここで今一度、ダブエスのファントム4章1話、フェリクスと燈の会話を振り返ります。
燈が電撃解散への不満を語っている一幕でも、フェリクスはこの時点で彼があの時の『トモル』ではないかと考えていました。そして彼の口からその名を引き出し、『やっぱり』と確信を得たのです。
そしてまた彼も同じように自らの名を明かします。
『僕はフェリクス。フェリクス・ルイ゠クロード・モンドールだ!』と。
当時の彼らはファントムではないため、今とは異なる名義を名乗っていた可能性もあります。同話でフェリクスが御劔をコハルと素の名で呼んでいたため当時は他麺含め本名で活動していた可能性もあるとはいえ、保育園にバンドのことは隠していたい御劔のことを踏まえると、少なくともフェリクス以外はそうだったはず。フェリクスが当時どうだったかまでは分からないものの、順当に考えれば今と同様『FELIX』だっただろうと思います。しかしそれはファーストネームと同じというだけであり、それが彼の本名だと今のようにファンに周知していたかも分かりません。仮にそうだとして、『ルイ゠クロード・モンドール』を含む彼のフルネームをファン相手に周知することは幾ら彼でも初めてのことだったはず。
そのフェリクスが。解散宣言を行い、『メンバーとファン』という枠組みを外れ、一人の人間として過去の恩人と向き合った彼は改めて自らの名を明かしたのです。前述した北岡Pの『メンバーとファンの出会い』もここにかかってくるのではないでしょうか。
美術館の出会いの顛末は実際にストーリーが明かされないことにはどうとも言えませんが、ここまでの情報を踏まえるにフェリクスはこの時点である程度の日本語の素養はあったはず。楠父からヴァイオリンを習うにあたり、彼から簡単な日本語を教わっていたと見ても良いでしょう。一方の燈は現在の彼を踏まえてもフランス語の教養はなかったはずですし、フェリクスが拙いながらも日本語で話すことでしか彼との言語コミュニケーションは成り立たなかったはずなのです。
『何気ない一言』で彼を救った燈が20年の時を経て彼と当時の異国の少年をイコールで結びつけるのは難儀なことですが、その『何気ない一言』で救われたフェリクスは20年もの間、ずっと、『トモル』という名を忘れることはありませんでした。
ここでまたダブエスの台詞を引用します。本編ではないながらも彼という人間を大きく印象付ける、フェリクスのスキルアップボイス。
『僕はいつでもなりたい自分さ!』
『吸血鬼の子』と揶揄されていた彼。その彼が今『吸血鬼の王』を名乗っていること。縁も所縁もない異国の少年の何気ない一言で彼が救われたこと。皆がバンド活動にあたりステージネームを掲げる中、彼だけが本名と同じ名を語り続ける意味。
自分のことを頑なに明かさなかった彼がこの詩を綴った背景。何度も用いられる『あの日を忘れない』に詰められた彼の真意。
それを踏まえた上でもう一度考えてみまませんか。
『新しいステージで僕は僕を名乗るよ』、その真意を。
隣でいつも優しく照らしてる 影と光重ねるように
ダブエス内イベスト『壊れた世界の花』において、燈はフェリクスを『困ったときはいつもフェリさんに助けて貰ってる』と心の中で評していました。実際彼は迷える燈に寄り添い、進むべき道がどこか導いてくれる存在です。自分の考えを押し付けるわけではなく、『燈がどうしたいか』を一番に考え、その結論と選択を燈に委ねているからこそ、燈もまた彼をそう高く評価できるのではないでしょうか。
その一方でフェリクスにとっての燈もまた、自分を救ってくれた光そのものだったのです。それもまた『隣でいつも優しく照らしてる』なんて具体的なイメージまで添えてですよ。
『Into the Flame』の胸に宿した太陽より激しい炎、『ピエロ』の燈り続ける等、彼の名と炎属性は曲中で何度も多用されるほど重要なキーワードであり、彼こそがファントムの中心人物といっても過言ではありません。しかしそれらはあくまで『燈』という名に基づいた演出を伴うものでもあり、彼個人が『LIGHT』である直接的な表現方法としてはあとひとつ決め手に欠けるものがあったのです。
しかし今回のこれが決定的にそれを打ち破りました。ファンの中で彼はよくフェリクスにとっての光と例えられてきましたが、実際それは作中の彼にとっても同義だったのです。自らを影、彼を光と評し、『君と僕はひとつ』と自分と燈の関係性を『影と光』と定めたのです。
あまりにも、あまりにも黒川燈がLIGHTである意義が大きすぎて。彼の炎属性を強調するならそれこそFlameとかBlazeとかの選択肢だってあったんですよ。『Light』が灯火の意味を持っていたとしても、広義的にLightは視覚的情報として照明を照らす意義が大きく、『LIGHT』でなければならなかった要素として決定的な何かが足りなかったんです。
それが今回フェリクスが彼を『光』と称したことで、黒川燈がLIGHTである意義がハッキリしました。LIGHTでなければダメなんです。もうこれ以上に彼に似合うステージネームなどありません。黒川燈が黒川燈だったからこそのLIGHTであり、フェリクスにとっての光であり、灯火だったのです。その灯火の熱をフェリクスはいつも隣で感じているんです。影と光、ひとつの存在として。
オタクの誇張表現でもなんでもなく全部公式文脈ですよこれ。2人のオタクとしていつか二人のコンビ曲欲しい欲しい喚いてはいたけどここまでのもんが来るなんて聞いてない。本気で、私ブロマンス見せつけられてるの? 大真面目にあれほど自分のこと頑なに隠してたあの男に何があってここまで直接的な詩を綴ったの? シンプルに楽曲ストまだ?
無理、怖い。まだアルバムリリース前なのにこの曲紐解こうとすればするほど黒川燈という男の存在の重さとフェリクスという男が20年募らせてきた感情を考えるだけで頭痛い。美術館から帰ってきたらノートに毎日トモルって名前書いてたりしたの? あのステージで「トモル……そうか、やっぱり……フフ」なんて独り言呟いてた胸中涙堪えたりしてなかった? ステージネームLIGHTって提案したのが燈だったらどんな気持ちだったの?
冒頭で『フェリクスにとって黒川燈ってなんなの……?』と題したnoteを再掲しましたが、事実それは先日のSOLがあるまでずっと抱いていた疑念だったのです。作中フェリクスが燈を運命としていたことは分かるし、それほど大切な存在なことも理解できるし納得する外ない。
だけどフェリクスと燈の関係性って実際運命以外にどう表現すればいいか聞かれたら難しいじゃないですか。燈と洲崎みたいな親友兼ライバルとか、御劔と楠とかフウライみたいな幼馴染とか、七星と旭みたいなライバルとか。これほど強い関係性が描かれているにも関わらず、フェリクスと燈をミリしらオタクにこれだ!って勧められる分かりやすい一言の代名詞が未だになかったんですよ。
実際作中でも燈を信頼しているのは分かってはいても傍から見てフェリクスから燈へのアプローチって若干分かりづらいというか、あまりにも感情重すぎて素直に彼の想いを受け取るのが怖い面もあった。壊花の見せているのは裏側だけかもしれないよ案件だったり、紫夕ちゃんのことは明かしても鞍馬のことは頑なに口を閉ざしていたり。先の確約できない未来を安易に肯定するわけにいかないからこそフェスで負けてもバンド解散させたりしないか、洲崎の胸中を察していながら『今は何も言えない』という外なかったフェリクスが。燈に対しては、明らかに他メンバーと違う個人的な感情を上乗せしすぎているんですよ。誕生日限定ボイスの『これからも一緒に美しい音楽を奏でていこう』もそうだし、普段滅多に他人を否定しない彼が燈に危害を加えた鞍馬に対し『君の悩みは君だけのもの』と拒絶に近い牽制をした。
ダックリバー社との方針の違い、メンバーとの軋轢、日本音楽業界に抱く不信感。あの解散ライブの後御劔と楠だけでも残っていたことがフェリクスにとってどれだけ支えになっていたことでしょう。その8年もの付き合いがある彼らでさえ、フェリクスの考えは分からないのです。イベスト『誘惑のValentin』での描写通りフェリクスの言葉を読み解き、自分が感じた解釈を仲間に言語化できるのは燈にしかできない。イベスト『過ぎ来し方の純情な感情』の燈のカードストで『フェリクスのお目付け役を任せられるのは燈くらいなものだ』と楠ですら痛感するほど、自由奔放で思い付きで皆を振り回すくせに重要なことは何も口にしないフェリクスの考えは誰にも理解できない。
そのフェリクスが。ダックリバーと日本音楽業界に悲観し、仲間でさえ信じ切ることが叶わなかった彼が。『君となら信じられることだらけのこの世界』と綴ることがどれだけの感情を募らせているのか。考えただけで頭が割れそう。
仲間を振り回すくせして自分のことは何も言わない彼が描写されるたび燈との出会いのこと話せ話せツイートしてるし、そんな彼だからこそ『フェリクスにとって黒川燈ってなんなの?』の疑問符は尽きなかった。
だけど、いざこうして解答突き付けられたら。
『フェリクスにとって黒川燈ってなんなの?』に対して本人の口から『光』なんて言われたら。
『運命の出会い 君と僕はひとつ』
『あの日を忘れない』
『新しいステージで僕は僕は名乗るよ』
『隣でいつも照らしてる 影と光重ねるように』
こんなこと真正面から叩きつけられたら。
もう納得するしかないじゃない。
反論の余地なんかないじゃない。
https://twitter.com/see_take_n05n05/status/1560986668332883968?s=20&t=Ji19kUflCLiO6UKvGDUJUQ
『影と光』に心をかき乱され、影光コンビとは何なのか頭を抱えだして早数日。
私は今日も推しに負けた。