音を紡ぐこと その3
私の手元にセドナからハープが届きました。
それまで精密で高額な楽器を持ったこともなかったので、封を開けたときは腫れ物にでも触るかのような感じで、積極的にハープを演奏することはできませんでした。結局ハープを箱から出したのは、アカデミーが始まる前日でした。
そしてオンラインでのアカデミーがはじまりました。アカデミーはセドナ在住の先生であるアイルグラハムさんと日本各地にいる0期生が、毎週土曜朝に画面上で顔を合わせて実施されました。毎回基本的な演奏の方法を教えてもらいそれをやってみる、そんな感じの講義でした。
アカデミーの開講期間は毎日30分でもハープのチューニングをして演奏するように、と言われていたので、出張などで時間が取れない時以外は頑張って30分の演奏を続けました。たった30分の演奏なのですが、最初のころはチューニングするだけで30分以上かかることも多々あったので、実際にはハープを毎日1時間は触っていました。
そしてアカデミーが終わるころにはひととおりの演奏の技法を覚えて、指をこう動かそう、次はこの弾き方をしようと考えながらですが、演奏をすることができるようになりました。
”思考で演奏する”から”感覚で演奏する”へ
アカデミーが終了して間もなく、とてもありがたいことに人前での演奏の機会を立て続けにいただきました。とあるカフェのイベントで、葉山芸術祭で、瞑想会で、ヨガで、、、
当時の私は人前で演奏するたびにかなり緊張していました。
どう演奏しよう。どんな技法を使おう。次は何しよう。
と、いつも頭で考えながら演奏をしていました。そうやって思考で演奏をしていた頃は、演奏するたびにとても緊張するし、ちゃんとできてるかなと外の評価ばかりを気にしていました。
そうこうしながら1年が経った頃、とあるイベントで演奏させてもらったときにある女性に出会いました。彼女はいわば見えない世界が見える方で、演奏後にハープの感想を伝えに私の元に来てくださいました。そして彼女がハープ自体にとても興味を示されたので、「どうぞ演奏してください」とお渡ししたところ、一旦受け取られましたが弦をはじくことなくすぐに私にハープを返されました。
「どうしてかな?」と不思議そうな顔をしていた私に彼女は、「このハープはあなたを癒すためにやって来たって言ってます。だから私が触るのも弾くこともできません。」とおっしゃられました。
その言葉に私は衝撃を受けるとともに、一方で妙に納得してしまいました。そして「はいそうなんです。このハープは私を癒すために来てくれたんです」と返事をしていました。
この時からです。私とハープの関係は大きく変化しました。私がハープを持つときは常に”ありがとう”の気持ちを持つようになりました。
「私の元に来てくれてありがとう。癒してくれてありがとう。」
そして演奏する時は自分のために自分の心地いいように演奏するようになりました。それがたとえイベントで人前で演奏する時であってもです。どう演奏するか、どう評価されているか、なんてことはもはや全く考えなくなったのです。
ただ自分が気持ちいいいように演奏する。自分の感覚を信じて演奏する。
このように私とハープの関係が変化してからは、私の演奏を初期から知っている方からも、「ハープの音色が”私”の音になった」と言われるようになりました。
そして私が苦しいときに、必ずハープは私を癒してくれました。
以上が私とハープとの関係です。
私とハープの間にはとても堅い絆があると、そう信じています。