四国八十八ケ所 約1200km通し歩き④初めての遍路転がし。12番札所焼山寺へ!3日目の挑戦
友人より「遍路転がしって、すごく大変な峠なんだって!行く前に、山登りとか訓練した方がいいって書いてるけど、訓練した?」というメールが届く。
(ちょっと待て。何その情報は?もう来ちゃってて、明日遍路転がしなんですけど。山登り?訓練?してないしっ!!。)
友人のメールに、不安を増幅させられながら、初めての遍路転がしの登山口に立つ。
入り口の看板に登頂予定時間の記載あり。
“普通6時間、ゆっくり7時間、健脚5時間“
なるほど、まあ、ゆっくり休みながら、6~7時間歩けば登頂できるらしいので、不安を抱えつつも登り始める。
あたりに人影無く、一人で黙々と登っていると、後ろから来た男性に声を掛けられる。
「こんにちは!この辺りで、他に歩いている人を見かけましたか?」
「いえ、ずっと一人です」
「僕もなんですよ。何時から歩き始めましたか?」
と、昨日と同じように、また歩き始めた時間を聞かれた。これは、相手の力量を図るときの挨拶なのか?
話していると、その男性は、69歳で四国お遍路の通し歩き4回目との事を知る。
4回目?お遍路猛者か?と疑うが、とっても素敵なおじ様で、会話が上手で、話もはずむ。
「あ、これはこっち、こっちの道!それでねー、僕は最初に四国を通しで廻ってみて、でもよくわかんなくてねえ。あ、これは、こっちの方向だと思うよ!」と、話しながら、匠に誘導してくださるので、地図を出す必要も、表示を見る必要もないので、会話に没頭してゆく。
「3回目にお遍路に来た時、僕より年上の、お遍路経験豊富な女性に、『僕、お遍路3回目なんですけど、まだよくわからないんです』って言ったら、『それは、まだまだ経験が足りないって事よ。』と言われて、はっとして、今回4回目のお遍路に来たんです。」
というH氏の言葉に、ついつい
「いやー、3回でわからなければ、お遍路じゃなく、違う方法を探した方がいいんじゃないでしょうか?」
と言いそうになり、いや!お前はひろゆきかっ!?、待て!彼が言わんとしていることを、私は理解をしていない気がする。ストップ! と自分を止めて考えてみた。
H氏は、何をわかりたいのだろうか?
“人生の意味”とか、はたまた“悟り”とか“弘法大師の教え”とか、いろいろ考えてみるが、何か違う気がする。
H氏は多趣味な方で、多くの本を読み、映画や演劇が好きで全国に観に行き、山登り等、毎日大変忙しく楽しく暮らしているとの事。
そうか、どの趣味より長期間かかり、その結果お金もかかり、体力的にも大変なお遍路に、何度も来てしまう理由を知りたいのか? でも多分、わかるなんて本当はどうでも良くて、またここ四国に来るんだよね、きっと! 何かそれいいなー、という思いに至る。
登って行くと、次々とお遍路の方々が現れ、「こんにちはー!こんにちは!」と挨拶しながら、ずんずん追い越して登って行く。
H氏は一切休まない。
遍路転がし1/6、2/6、3/6と乗り越えてゆく。
ん?遍路転がしって、6か所あるの?どれが本物なの?
はっと気が付くと、遍路転がし6/6まで来ている!そして私、ぜーぜー言っている!
いやー、もう私駄目だって。だってH氏登るの速いんだもん!休まないし、私、ゆっくり休みながら登るつもりだったのに、何でこんな事になってる?
「すいません、ぜーぜーぜー、私、ぜーぜーぜー、少し休むのでぜーぜー、先に行ってください。ぜーぜーぜー」
やっと一人になって座って休んで水飲んで、しばし放心状態となり、6/6の遍路転がしを見上げる。
いや、これやばいでしょう?このツルツルの岩は、そりゃ遍路は転がるだろう!と酸素の足りない頭で考えつつ、ぜーぜー言いながらH氏を追い、山頂の焼山寺にて再会する。
「あなた、登頂時間4時間30分だよ!結構良いタイムだね!僕は4時間だったよ!」
え?これ、タイムレースだったの?そして、じゃあ私健脚って事なの?
いや、違うんです私!H氏に引っ張られ、変な力が出ただけなんですぅ!
今夜の宿は、山頂の焼山寺から、まだまだ徒歩2時間くらい先。クタクタでフラフラしながら歩く(もう駄目ぇ…)。
初めての遍路転がし。転がされても、転がされなくても、人生は、その先も、まだまだ苦しい道が続くのだ、と思い知らされた一日でした…(涙)。