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バルト海で海底ケーブルが再び「損傷」 警戒を強めるNATO

ラトビアの国立ラジオ・テレビセンター(LVRTC)は1月26日、バルト海に敷設されている海底ケーブルが同日早朝「損傷」したと伝えた。他の伝送ルートに移管したため、市民生活への影響はほとんどなかった。VLRTCは、水深50メートルを超える海域に敷設された海底ケーブルの損傷は、外部からの影響が大きいとしている。

同国のエヴィカ・シナリ首相は26日、「ラトビアとスウェーデンを繋ぐ海底ケーブルがスウェーデンの排他的経済水域内で破損したという情報を受け取った」として、スウェーデンなどNATO加盟国と協力しながら調査にあたっており、既に司法手続きを開始したことを明かした。

ラトビア海軍は艦艇を同海域に派遣し、NATO加盟国と情報交換しながら、関与した疑いがある船舶に対して調査を行い、同海域を航行していた2隻の船舶を確認したという。

欧州で海底ケーブルの損傷が確認されたのは、2024年11月以降、4件目となる。北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は1月14日、海底ケーブルを守るために、バルト海でAIや水中無人機を活用した海洋監視の作戦を開始すると発表し、北欧やバルト3国、ドイツ、ポーランドの首脳も共同声明を出していた。

NATOなどは、相次ぐ海底ケーブルの損傷について、制裁がかけられているロシア産石油を輸送する「影の船団」と呼ばれるタンカーによるものと疑っている。米国は1月10日、ロシアへの制裁として、ロシア産石油の海上輸送を行う「影の船団」のタンカー183隻を制裁対象に追加していた。

インターネットなどデータ通信の大動脈である海底ケーブルなどは「重要な海底基幹施設(Critical Undersea Infrastructure:CUI)と呼ばれる。CUIの防護に関しては、2023年11月以降、イギリスが主導するJoint Expeditionary Force(統合海外派遣軍:JEF)が艦艇や哨戒機を投入した防護作戦を開始していた。そのような中で相次ぐ海底ケーブルの損傷に、NATOは警戒を強めている。

一方、1月6日に台湾北部の海域で、台湾と日本などを繋ぐ海底ケーブルが中国船によって損傷を受けたが、海上自衛隊や海上保安庁が艦船や航空機で警戒を強めたという話は出ていない。

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