21歳から始める推しコンテンツの話[映像コンテンツ編]攻殻機動隊 中篇
さて、正直3000文字前後で記事を書くのは少し難しいと思う今日このごろ...。
イノセンス[GHOST IN THE SHELL 2]
著名なコピーライターの糸井重里氏が書いたキャッチコピー「イノセンス それは、いのち」という言葉を使ってこの映画のテーマを表すとすれば
「命は人の形に宿るのか、それとも心に宿るのか」
この言葉に尽きると思う。
そんな映画、イノセンスを紹介まず紹介していきたい。
イノセンスは2004年に公開された映画で攻殻機動隊の続編にあたる。原作でいうと1巻のROBOT RONDOがベースになっている。
草薙素子が9課から立ち去った後の話で、主人公はバトーになっている。
突如暴走を始めたガイノイド(人間の女性に模して作られたアンドロイド)を調査していくバトーは真相に近づくに連れて、少佐のことを感じていく。
ちなみに、原作の漫画は私も持っており、ここで登場するキャラクターは映画とは異なりコミカルに描かれている部分が多い。こんなシリアスな感じではない。(当時の漫画はそういう雰囲気のものが多いのではないか、と思う。)
原作ベースで描かれているはずなのに雰囲気はとても暗く、見えない敵と戦っている雰囲気を催している。これが押井守監督の攻殻機動隊だと言わんばかりの風景だ。だが、それがいい。
結論から申し上げるとこの映画は前作に比べて興行収入はかなり減ってしまった。それもそうだ。この映画は制作費が高く、台詞回しへの理解の敷居も高い。
結局押井監督の作品は何度も何度も繰り返し観なければ行けない映画だから、コアなファンしか観ないのはわかる。
私がアルバイトをしていた頃、店長とイノセンスの話になった。店長は10代後半に映画が公開されていた頃見に行ったと言っていた。
「あれ全くわからんかったわ。」
一言のシンプルな感想だった。
私もDVDを購入して最初に観た時の感想
「全くわからん。」
そばで観ているような錯覚に落ちるようなカットなのに、置いてきぼりにされた感じだ。
そして前作と同じく何度も見ることになる。その行為が楽しいし、何度観ても刺激を与えてくれるような作品だ。
ここらでイノセンスの良いところを3つ挙げよう。
・圧倒的な作画と撮影方法
・絶妙なセリフ
・音楽
前回とほとんど同じであるが、また違った良さがあるので一つずつ紹介していきたい。
圧倒的な作画と撮影方法
この映画には日本で屈指のアニメスタジオであるスタジオ・ジブリが作成協力している。そもそも宮崎駿監督と押井守監督、鈴木敏夫氏と交流があり、宮崎駿監督とは対等に語り合える仲だったらしい。その縁もあり、鈴木敏夫氏はこの映画のプロデューサーを担当している。
さて、作画の話に戻そう。
スタジオジブリの存在感が完全に出ているところが、バトーとトグサが日本の最北端、経済特区の択捉島に飛行機で町並みを確認するところだ。
飛行機のデザインも天空の城ラピュタや風の谷のナウシカを思い起こされるデザインに洗練されている。特に後半に登場する択捉島での祭りのシーンや人形館のシーンは圧倒的なもので、私も今まで見た中で一番良いと思ったアニメの作画シーンである。
イノセンスは3DCGと織り交ぜて作成されているため立体的にものが見える節がある。本当に2000年初期のアニメか?というほどのクオリティだ。実際、私が小学生の頃か中学生の頃に、イノセンスは図工(美術)の教科書に載っていたことを覚えている。ちょうど人形館でバトーが立ち尽くし、白鳩が飛び立つ絵の中にいるシーンだ。
そして今ではメジャーになっている3Dの中でカメラを置き、撮影する撮影方法もこの映画で使用されている。実際はデータ量が大きすぎてできなかったため、少し趣向を凝らして撮影方法を変えてはいるが、押井監督のやりたかったことはほぼできていると言っても過言ではないと思う。
最近でこの撮影方法が顕著に出ているのは「傷物語 鉄血篇」のオープニング部分ではないだろうか。これは3DCGではないとできないやり方だ。
ちなみに、撮影当時に使われていたのはAdobe社のAfter Effectらしい(Wiki調べ)
あの当時のパソコンのスペックで本当によくやるものだなぁ。
アニメーション作品で撮影?と思う方も多いだろうが、今日ではかなり使用されているのでそういう視点を持つのも良いと思う。
絶妙なセリフ
前回の攻殻機動隊でもこのコーナーはあったが、本当にセリフが難解だ。
例を上げると、
孔子様の教えや聖書からの出典、西洋の諺に始まり、斎藤緑雨氏の言葉やマックス・ウェーバー氏の言葉など、何でも拾ってはセリフに組み込ませている。
ここで私の好きなセリフを紹介しよう。
荒巻課長が言った言葉で「理解なんてものは概ね願望に基づくものだ。」というセリフがある。
この言葉を聴いた時、ものすごく考えさせられたし、同時にこのセリフを考えた方に脱帽した。
そんな名台詞が多いこの映画だが、その難解なセリフが多すぎて一般的には受けなかった。話が難解になるのは仕方がないと思う。
様々なところから引用してきたセリフは意味をしっかりと持っているからこそ面白いのだ。
ちなみに、キャラクター達は外部記憶装置から引っ張ってきているのですらすらと言葉が出てくるらしい。普通の人間だったはとてもできない離れ業である。
つまるところ、イノセンスには考えさせられる言葉が多すぎる、ということだ。逆に、ストーリーが頭の中に入ってこないくらい。
音楽
前回と同じく、イノセンスの劇伴は川井憲次氏が担当している。相変わらず素晴らしい音楽は映像にフィットする。日本固有の唄を歌うユニットの「西田和枝社中」が今回もボーカルを担当している。前回よりも更に音にこだわっており、ボーカルは何度も重ねて厚みを増やし、西洋のコーラスと同じくらいのパワーを持った東洋の謡になっている。
それ以外にも、「Doll House」という曲があるのだが、スタジオで収録したものを今度は響きやすい地下で再生し、それをまた収録すると言った非常に凝ったことをしていたりする。
イノセンスとGHOST IN THE SHELLに共通して鈴をなにかに気づいて欲しいポイントに慣らしており、はっとさせられることがある。音を用いて映画の重要なシーンを気づかせる手法はあまり見受けられないため、私がこの映画を好きなポイントでもある。
それでも一番良いのは西田和枝社中の唄が聞けるトラックだろう。本当に素晴らしい。序盤から後半まで様々なトラックがあるのだが、基本的に歌詞などのテーマは変わらず、太鼓などを使い音の厚みを増やしクライマックスに持っていくそのスタンスが映画にとてもマッチしている。
ぜひ一度観てほしい。
最後に
さて、イノセンスの紹介を長々と書いてしまったが、ここで押井守監督のことが書いてあるニコニコ大百科の言葉を引用させていただこう。
押井守がどんなアニメ監督か知らない人のために、有名な監督である宮崎駿と比較した言葉がある。
押井守の映画は1人が100回は見る。
とても的を得ている言葉だ。
要は、ハマる人にしかハマらないものを創るプロなのだ。
しかし、セリフなどは秀逸だし、作画や描写にこだわりすぎるという本物のクリエイターということを忘れないでほしい。
ぜひ、一度観てほしい。
最後に神山監督の攻殻機動隊 Stand Alone Complexシリーズを紹介していこう。
後篇に続く。