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からくり時計と市場〜マリエン広場の市庁舎

マリエン広場なんて名前は、当時は知らなかったのだが、おばが最初に連れて行ってくれたのは、ここだったと思う。市庁舎のからくり時計を見に連れて行ってくれたのだ。

市庁舎には時計のタワーがあって、音楽に合わせて、2段構造になっている空間で、台に乗った人形がくるくる回る。場所が高すぎて、首がしんどくてずっとは見ていられないが、ヨーロッパのアンティークな人形って感じのもの。そんなものが市役所にあるなんて。。。日本じゃなさそうだなぁと、思った記憶がある。建物も古い歴史を感じられるものだし、物語に出ていそうでいいなあと思ったりもした。しばらくしたら、おばが『もう、いい?』と。音楽も人形が動くのも、結構長くてね。(笑)

お店もあるし、観光客がたくさん見に来ていた。といっても大混雑ではなく、十分ゆったりしていた。今のように海外旅行が当たり前で、大勢の人が世界中から来るなんて時代じゃなかったからね。アジア人なんていなかったから、私も弟も、向こうの人たちからすれば珍しい人種。いとこたちはアジア人だからと幼稚園でいじめられたこともあったらしい。だから、どこに行っても見られていたみたい。おばが市場で、商品を見ようと手に取ったら、触るなと言う店員もいた。一方で、祖母がビールジョッキを買いに専門店に行った時、大人たちの買い物で退屈していた私と弟を見て、店員の女性がニコニコ声をかけてくれ、ドイツ語は分からなかったけど、ミニチュアのビールジョッキを1つずつくれた。他の店員さんたちもみんな笑顔だった。街の市場と専門店の違いかもしれないが。。。とても大きなお店だったし。

市場は新鮮だった。歩行者天国の幅の広い道に、木の箱に山積みされた果物や野菜が売られていて、それがとてもカラフルで、見ているだけで楽しかった。お店の人と会話しながら買い物をするという、映画のようなシチュエーションに憧れたが、当時は小学校で英語教育なんてものはなく、英語の単語すら知らないわけで、ましてやドイツ語の知識なんて皆無。憧れのシーンは体験できなかった。

家に帰って、夕食はドイツ料理かと思ったら、真空パックのうなぎの蒲焼。なんで???と思いながら、うなぎが嫌いな私だけ、違う食事をしたはずだが、何を食べたかは忘れてしまった。ただ、欲しくて買ってもらったヨーグルトが美味しかった。カップを3:2ぐらいに、プラスチックの板で仕切られていて、小さい方のスペースにブルーベリーソースが入っていて、その仕切りをとって、ヨーグルトとソースを混ぜて食べるようになっている。当時の日本にはそんなのはなかったと思う。そのヨーグルトがお気に入りで、翌日も、おばが買ってくれた。

小学生の自分にはヨーロッパの非日常的な日常が嬉しくて、いつか外国に住みたいと思ったのだった。

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