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タロット「吊るされた男」からの学び

タロット「吊るされた男」

今日は、タロットの大アルカナカード『吊るされた男』のイメージについてお話ししていきたいと思います。

タロットの『吊るされた男』のイメージで、吊るされた男の頭の周りに光の輪が描かれ、頭の周りが輝いているイメージを見たことがあると思います。

ライダー版タロット「吊るされた男」

実は、この神々しい頭の周りの光は・・・単にインクの滲みだったかもしれないのです。もちろん、インクの滲みと分かりながら何かが「光っているように見えた」のかもしれません。

そこに、20世紀のオカルト信者・研究家は、意味づけをしました。頭の周りに黄色の光が輝いていることには『何か、隠された意味がある』と思い、『吊るされて、逆向きに世界をみることで『違った角度から』ものが見えるようになる』と言う意味づけをしました。ひらめき。また、そこから『覚醒』をする、と言うようなよりスピリチュアル、ニューエージ的な意味づけがされました。

そう思えばそうなる。元々そんな意味はなかったかもしれない。

古代のタロットには、頭の周りが光っているものと光っていないものがあります。『光』の正体は・・・黄色のインク・・・です。

マルセイユ版タロット

マルセイユタロットを見てみましょう。

CBD Tarot(Nicholas Conver Tarot 復元版)

マルセイユタロットには、頭の周りの光が描かれていません。

しかし、このタロットは博物館などに現存するタロットの画像をもとに綺麗に処理された復元版です。ミスプリントなるものが確認できません。

古代の印刷会社はさまざまな理由で、時にずさんな印刷をしていたこともあるわけです。課税の関係で慌てて印刷をしたという記録も残っています。

それでは、実際に現存する古代タロットのコピーを見てみましょう。

Heri Tarot, 1730 スイスでプリント

このバージョンは、スイスで1730年に出たHeri Tarotです。マルセイユタロットは、どこでプリントされたかにより微妙にイラストや色付けが異なるのですが、私の確認できる限り、他のマルセイユ版タロットでもこのような「インクの滲み」が確認できます。

確かに、吊るされた男の頭の髪の毛の黄色が滲んではみ出しています。

しかし、ある人から見ればそのインクの滲みも「この光は・・・!!!」とインスピレーションを得ることもある。

特に古代タロットは、ヨーロッパの白人貴族の間で所有されていたので、タロットの人物には白人が描かれることが主流でした。金髪の白人が吊るされた男に描かれていることも多いです。

18世紀以降、タロットがゲームではなく、オカルト目的のみで作られ始め、新しいタロットデッキ(ライダー版タロットなど)が19・20世紀に作られた時、この金髪ブロンドの黄色インクの滲みにさえ、「神秘」を感じ、オカルトの意味にしたかったのかもしれません。

確かに、コーヒーリーディングやティーリーフリーディングなども存在します。ランダムなものに意味をつけるのが占いですので、この「吊るされた男」の例もなんら驚くべきことではないです。

ミスプリントでもそれに特別な意味をつければ特別な意味になります。その偶然に神秘を感じる。

つまり、私たちは意味のないものに意味づけをし、「何かがあるに違いない」という幻想を追いかけて生きているのです。

「どこかに幸せになる方法があるに違いない」
「こんなはずはない」
「絶対に何かがあるに違いない』

このような幻想に取り憑かれて隠された意味を探し続けます。

ただし気をつけないといけないのは、探し続けると一生が終わります。

結局のところ、「正しいもの」も、「幸せになる絶対的な方法」も「意味」もあるようでないのです。「正しい」という定義はどこからくるのか。結局は個人の価値観によるのです。

タロットには基本的な意味がありますが、「直感を大事にして読んでください」(基本的に読み方は自由)ということが言われるわけです。

大切なこと

一生の中で私たちは、そのような幻想に、いかに翻弄されず、価値を自分の中で見出し、全てを味わい切れるか、にかかっているということです。

絶対にあるはずだ
どこかにあるはずだ

このような思いから『自由になる』ことです。

何かを見つけようと必死になることも時には楽しいです。ただ、その活動が苦しみに変わった時、それは囚われの身になっているということに気づくことです。まさに、「吊るされた」状態から自分の意思で動くこと。

自由になったとき、全てが納得できるはずです。

囚われることなく、翻弄されることなく、人生を味わいましょう。


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