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【ゆる説】ビジネスターゲットとコミュニケーションターゲットは混同しない方がよい説

注意:【ゆる説】は、日頃「実は、こうなんじゃないか」と感じた説を、備忘録的にゆる〜く書き留めたものです。真偽は皆さんで確かめてください。

私は大の競馬好きだ。

物心ついたときから土日は競馬中継を見、競馬ゲームばかりをしていた。
小学生のときの将来の夢は「馬主になること」で、実は今も変わらない。

そんな競馬好きの私だが、ここ数年のJRA(日本中央競馬会)のCMは、ぶっちゃけ嫌いだ。

松坂桃李、高畑充希、土屋太鳳ら、旬の若手俳優が出演している、あの一連のCMだ。

別に個々の俳優は嫌いではない。
だが、放映から2年経っても、超基本的な競馬の知識さえままならないビギナーという設定や、少々おバカな感じが、癪(しゃく)に障るのだ。

しかし、JRAのCMが嫌いだからといって、競馬は嫌いにならない。

独立・起業してから平日と週末の垣根がなくなってしまったので、最近はがっつり予想や馬券の購入はしなくなったが、競馬の情報は常にウォッチしているし、たまに家族を連れて競馬場に行くこともある。

要は、私はJRAのCMのターゲットではないのだ。

実際、週末、競馬場に足を運ぶと、CMに出てくるような若い人、とりわけ女性が増えている。
最近は、「UMAJO」をキーワードに、競馬場で各種イベントが実施されていたり、女性専用のカフェまで併設されていたりと、だいぶ雰囲気が昔と変わってきた。

察するに、JRAが直面していた課題は、競馬ファンのエイジングと競馬場への来場者数の低迷だ。

バブルのときをピークに競馬場への来場者数は減り、90年代は競馬ゲームによる若年層ファンの取り込みに成功した。しかし、00年代は途中スーパーホースの登場はあったものの、競馬は一部のコアファンのものになりかけていた。

そんな状況を打開し、新たなファンを開拓したのが、あのCMだった訳だ(ちなみに、CMだけでなく、新たなファンが来やすいように、JRAは競馬場含めハード面の投資も怠らなかった)

ここで大事なのは、ビジネスターゲットとコミュニケーションターゲットは、必ずしも同じではない、ということだ。

JRAの場合、なんだかんだ言って、昔からのコアファンが来場者数や馬券購入額でいっても、事業を下支えしており、彼らがビジネスターゲットだ。

事実、CMとは別に、彼らを離反させないような施策、例えば、新しいレースの創設や海外主要レースの馬券が購入できるようになること、も着々と実施している(もちろん、そのすべてがうまくいっている訳ではないが…)

一方、コミュニケーションターゲットは、言わずもがな、競馬のことを全然知らない20代男女だ。

彼らは、いわゆる、昔の競馬のイメージ(例:競馬場には鉛筆を耳に刺したおじさんがたむろし、床には捨てられた馬券が散乱している)のままだと、競馬を「自分たち向け」のエンターテイメントだと思わない。

彼らは、友達や恋人と一緒に楽しく過ごす時間の方が大事で、週末気軽に行ける、非日常的なレジャーが欲しいだけだ。だから、CMは、馬券を当ててお金儲けができることや脈々と続く血統のロマンなどは一切触れず、いかに楽しく気軽に競馬に参加できるか、のイメージを投影し続けている。

この、あえてビジネスターゲットとコミュニケーションターゲットを分ける、というやり方は、日本で事業を展開する他のブランドにとっても非常に参考になる。

というのも、とりわけローンチから何年も経っているブランドほど、顧客基盤はエイジングし、新規顧客獲得に苦労しているからだ。
昔からのコアファンは、ロイヤルティが高く、事業構造上も彼らがいるから成り立っている。

しかし、既存顧客に最適化しすぎてしまっていて、新規顧客の足は遠のいてしまっている。特に、ミレニアム世代やZ世代の取り込みができていないことが多い。

そして、それは新しい世代が消費の主役になっている今、ブランドを徐々に、しかし確実に弱らせ、5年後、10年後にはもっと悲惨な状況をもたらす。

日本全体が高齢化し、足元の事業を支えているのが、シニアをはじめ年長者であることが少なくない。確かに彼らはビジネスターゲットかもしれない。

しかし、ビジネスターゲットにだけ照準を合わせて事業展開をしていると、その先はない。そう感じさせてくれるのが、実はJRAのCMだったりする。

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