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ニューノーマルの知識創造理論に向けて

 2020年、世界は新型コロナウイルスの感染拡大のため急激な変化を余儀なくされた。日本においては、日常生活では、感染拡大の防止策として3密を避けるために、「ソーシャル・ディスタンス」と称して人々は物理的、社会的な距離を取らざるを得なくなった。小中高の学校は、緊急事態宣言発令中は休校となったが、解除後は感染防止対策を行ったうえで対面での授業に戻りつつある。一方、大学では、多くの学生が科目ごとに移動する中では感染防止対策が困難であることから、オンラインで授業が行われている。仕事においては、通勤ラッシュや職場での3密を避けるために在宅勤務が実施され、直接対面で行われていた打ち合わせや会議はインターネット上のテレビ会議システムで代替されるようになっている。お盆休みの帰省もオンラインで行うよう推奨された。

▶ソーシャル・ディスタンスが引き起こすこと

 こうしたコロナ禍の状況で早くから指摘されていたのは、ソーシャル・ディスタンスが引き起こす心理的な距離感の弊害である。マスクをしていない人を差別したり、ライブハウスに嫌がらせをしたり、都会から田舎に帰省した人を白い目で見たり、「自粛警察」とも言われる現象が起きている。このように人と人とのつながりが劣化すると、共感が起きなくなり、想像性や創造性の低下が引き起こされるのではないか?つまり、人はオンライン上だけで、これまでのオフラインのリアルの場のように、つながり、共感(ときに反発や対立)し、問題意識を共有し、課題を設定して、イノベーションを起こすことができるのか?などの懸念が湧き上がる。一方で、コロナ禍において、あれかこれかの二者択一的で、近視眼的でステレオタイプで、しかも、過去の成功体験から抜け出せない言論や施策が後を絶たない。ウイズコロナやアフターコロナのニューノーマルでの生活や仕事、あるいは人々や社会の価値観はどういうものになるのか、という問題もある。

ニューノーマルの知識創造理論とは

 この懸念や問題に対して、知識創造理論は、ひとつの解答例を提示することができると思う。知識創造理論は、主観と客観、暗黙知と形式知、理論と実践、リアルとバーチャル、ミクロとマクロ、私と公など、一見すると二項対立(デュアリズム)の関係にある事物を、二項動態(デュアリティ)ととらえ、止揚し綜合する考え方を示す。そして、この理論は、人間の持つ無限の可能性を絶対的に信頼し、「人々のより善い生き方」の実現を目指す。

 ニューノーマルのいまここで必要なのは、個人一人ひとりが自らの判断基準を持って、全体を大局的長期的に俯瞰し、かつ現場の状況も把握しながら、目的(パーパス)と使命(ミッション)の実現に向けて、適時適切に実践することである。



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