VRchatのデバイスと(Quest/PC VR/デスクトップ)自己認識の違いについての覚書
Note記事は久々になります。前回は、VRChatアドベントカレンダー向けに、VRChatコミュニティへの案内記事を書きました。
ただ、記事にも追記していますが、自分が働いていたしーわんシティは諸事情で爆破してしまいました…
とはいえ、今は飲食店ワールドをはじめとして、初心者の人もいけるようなイベントやワールドが増え、そういうものの受け皿を一手に引き受けようとしていたしーわんシティもその役割を終えたのかなと思います。(ワールド自体はPublicワールドとして残っているので、遊びに行く人はぜひ)
そのあと、1か月ぐらいVR無職としてふらふらしていたのですが、その間に感じたことを踏まえて、「VR民俗文化研究所」を立ち上げました!
VR世界に発生しつつある文化、社会事情を自ら体験し、記録していければと思っています。
ということで、研究所の活動の1つ目として、QuestとPC VR、デスクトップモードでのVR世界と自己認識についての覚書を書いておきたいと思います。
VRChatにおける3つの参加方法
VRChatへの参加方法は、
1.Oculus Quest単体
2.PCに接続したVR機器(PC VR、Oculus LinkでOculus Questを接続することを含む)
3.PCのデスクトップモードの3つがあります。
同じVRChatに触れていても、デバイスによって、その世界に入った時の没入感、自己認識も変わってきます。
デスクトップモードとVRモードの違いは、クリーヴァさんの「窓からのぞいている世界」と「すぐそこにある世界」という言い方が体験の質の違いをうまく言い表しているように思います。
ほんとデスクトップモードだと「窓から覗いてる別の世界」なんだけど
— クリーヴァ(ゆ)@VRラジオ体操お兄さん (@kleava) July 24, 2018
VRだと「すぐそこにある世界」になります。
自分がしゃがめばアバターももしゃがむし、手が伸ばせて身体を動かしての感情の表現もできるのはなかなか良いものです https://t.co/OF5EZNYCzF
デスクトップモードは、PC VR世界をすべて見ることはできますが、その世界はまだモニタの向こうという感覚は個人的にはよくわかります。
ただ、今日Zirさんがツイートしていましたが、それだけでも十分画期的なのは間違いありません。
VRchatのデスクトップモードはVRモードに比べると……と思ってる人もいるかもしれないけど、
— Zirconia😎VRChat (@ZirconiaVRChat) March 21, 2020
「自分の意志で動くかわいい女の子が超リアルなモーションで寄ってきて撫でくりまわしてくれる」
というこれだけでも
長い歴史を持つギャルゲーエロゲーのどれもが成し得なかった偉業なんだよなぁ……
そう、ぶっちゃけデスクトップモードでもこれだけでやる価値は十二分あります
— ラック@Vket4 阿頼屋敷にて出展 (@Name_is_Luck_) March 21, 2020
日本界隈だとVRモードの人が多く、更にはトラッカーを使って足までトラッキングしている人も多いので臨場感が半端じゃないです
じゃぁVRモードになった時にはどうなるか、言わなくても分かるだろう? https://t.co/cXZaa1W7sG
この話も意識しつつ、自分がQuestとPC VRの違いを考えてみたのが以下のツイート。
没入感の違いは、PC VRとQuestの世界を行き来してみると、解像度の違い、表現力の違いが質的転換を生んでいて、自分なりに表現すると、
— せちろー@火曜日南ア-11a (@sechiro_vrc) March 4, 2020
・Questは「ゲームの中に入る体験」
・PC VRは「もう一つの世界への転生」
という感じ。アバター=自分みたいな感じは、PC VRの時の方が圧倒的。
まだ客観的なデータの裏付けができている話ではありませんが、自分の周りでもこれまでデスクトップモードで入っていた人が、PC VRで入るようになって認識がガラッと変わったり、現実感が非常に強くVRのアバターが自分の身体という認識が強い人と、VRのアバターをゲームキャラ程度にしか考えていない人との間の身体接触で摩擦が生じたりする様を見ることがよくあります。
もちろん、自己認識は個人差が大きいのですべてをデバイスの差に帰結することはできません。ただ、PC VRは多くの人にとって、自分がそのVR世界の住人だと認識させるに足る表現力をもっていて、一度体験するとVR世界に魂をもって行かれていくような強さを持っているというのは大きいと感じています。
Questは、PC VRと比べると解像度が低く、Playstation時代ぐらいのゲームを見ているような気持ちになるのと、人が多くなってくると声にノイズが入るので、没入感を自分で高められる人でないと、ここはやはり現実世界ではないなという気持ちが入り込みがちだと感じています。
また、PC VRをやっている人は、そもそもPCゲーマーで、画面上のアバターに自分を重ねてプレイするヘビーゲーマーが多かったり、PCゲームの中での「結婚」システムなど、ゲーム世界で生きることへの違和感が少ないということも、VR世界への没入感の違いの背景になっていそうです。こちらも、感覚的なことでしかないので、今後の調査が必要そうです。
Questコミュニティで新しく生まれている可能性
ただ、QuestがPC VRに劣っているかというと、そうも言えません。
最近、Questユーザーの中ではVRワールド内でのダンスが流行してきています。
Questユーザー向けの「クエストクラブ」でのダンスイベントがあったり、PC、Quest両対応の飲食店「Bar カノアール」ではステージでのDJとダンスが毎回行われるようになったり。
お待たせしました!!
— KAD_VR@クエストクラブ (@KAD_VR) March 3, 2020
VRChatのQuest勢向けナイトクラブイベント
「クエストクラブ」 を開催します!
- 開催日時: 今週土曜(7日) 20~21時
- 参加方法など:こちら( https://t.co/Z6yJOxu7Nb )に全て記載しました
Quest勢のみなさんと、また一緒にブチ上がりたいです!#VRクラブ #クエストクラブ pic.twitter.com/CvlYUK7iSu
今日は火曜日なのでQuestでカノアール!
— せちろー@火曜日南ア-11a (@sechiro_vrc) March 3, 2020
今日はDJ 3Marcoさんも加わったクラブカノアールで、みんなでダンス!
これまで横で見ていたカノエさん、めっちゃダンスうまいぞ…!
カノエさんに触発されたYoikamiさんがちょっと本気出したり、カノエさんが照れてバタバタしたり。#VRChat#カノアール pic.twitter.com/27a2tVEIJE
カノアールは、以前からこういうBarになるように準備されていたものが、Yoikamiさんをはじめとしたダンス勢、Quest勢に合流して、芽吹いた形なので、裏にはこのムーブメントを支えている人たちもいますが、ダンスがここまでQuest勢で流行っているのは、無線で気軽にVRができ、身体を動かした際の没入感が(たとえ3点トラッキングだとしても)高いからという点が大きいと思っています。
PC VRは、どうしてもケーブルが気になってしまうため、意識して身体を動かそうとしている人以外は、どうしても動きが小さくなりがちになってしまいます。また、個人的には解像度面での没入感が高い分、3点トラッキングで動くと、身体の違和感が逆に大きくなるというのもあると思っています。(フレンドでも、3点トラッキングだと足の違和感が大きくて、ずっと動いていないと気になるという人がいました)
Questは、3点トラッキングで頭を動かすことで足を動かすのですが、そういう身体の使い方でも違和感がなく、ダンスゲームのように遊べて、3点トラッキングだからこそ、リアルスペースの事情に左右されにくい(足を動かすと、下の階に響いてしまうため、フルトラでもダンスは難しいというPC VRユーザーはいるようです)プレイ環境が成り立っているように思います。
PC VRと比べてしまうと、デバイスの制約からギミックの多いワールドや人数が多く集まるイベントはしにくい分、自分自身が動く楽しみが流行して、そこからコミュニティができていく流れは、あとからみるとなるほどなと感心します。
それを考えると、Questラジオ対応がQuestの最大のイベントとして成り立ってきたのも、Questユーザーのニーズをすくい上げてきたからなんでしょうね。
最近では、VR睡眠するQuestユーザーも増えているようで、どのデバイスがVR睡眠に向いているかという議論はあるものの、Questが寝やすくてVR睡眠に向いているという人もいます。
また、PC、Questの両対応のワールド・イベントが増えたり、Questユーザーの中からPC VRにも手を出す人が増えてきたりと、これまで並行に進んできたPC VRの文化とQuestの文化の交流が進んできているような雰囲気も感じています。
自分も、PCユーザーに向けて、Quest対応のメリット広めてきたので、この流れがどうなるか楽しみです。
Questやっててはっきりわかったのは、PCの人が自分のアバターをQuest対応してくれてるのってかなりうれしい。
— せちろー@火曜日南ア-11a (@sechiro_vrc) March 3, 2020
Very poorでもとりあえずQuest対応してくれるだけでめっちゃ好感度上がる。まずは姿見て話したいので、負荷の考慮はあとでいいし、同じように思ってた人多いと思う。
初回の記事でまだまだ考察中のことをつらつら書いてきてしまいました。
まだまだ知らないこと、知りたいことはたくさんありますし、道具の変化による人の意識の変化というのは、古くからの研究テーマなので、引き続き、自分も体験しつつ、考察を深めていければと思っています。
それでは、また次回!