CLUSTARS学園への潜入
ある日、生徒会長に質問をした。
「僕もCLUSTARS学園に入学の応募を出していいの?」
返答はこうだ。
「応募はしてもいいよ。でも強すぎるから、書類で落とすと思う」
釈然としなかった。「強すぎるから」って言われても、どうすればいいのさ。あまりにも釈然としなかったから、逆に闘志が湧いてきた。どんな手を使ってでも入学してやろうと思った。
「天田美琴」とは何か
”私”はSF系Vtuber、天田美琴。デビューは2024年2月だけれど、clusterを始めたのは1月、CLUSTARS学園の3期生が卒業した時期だった。当初は、僕は天田美琴としてVtuberをやりたかったわけではない。CLUSTARS学園に入学するためにデビューしたのだ。
「天田美琴」という名前は、僕が5年前に書いた小説の登場人物から取っている。その小説の世界では、江戸時代に神奈川湊が開かれた。神奈川という大きな街に海外からの邪教が流れ込み、現代では美琴が邪神を崇拝する教団の指導者になる。しかし、現実世界ではそうなっていない。日本は神奈川湊の代わりに小さな村にある横浜港を開いた。邪教が広がらなかったせいか”私”もこれといった宗教観が確立していない。だからこそ、国籍や信心に関わらずどんな人をも導ける「新時代の巫女」を目指すという目標を掲げた。
Vtuberとしての”私”は、小説の中の美琴にとってのパラレルワールドの自分だ。
「天田美琴」の活動
”私”は異種族でもなければ異世界人でもない。至って普通の人間だ。名前も見た目もシンプルで、服装も「メタバースならでは」という感じはしない。設定に縛られて話すネタが無くなったり、素の自分でおしゃべりできなくなることは寂しい。だからこそVtuberとしての”私”は、人間としての素の自分を表現できるようにしたいと思ってデザインした。「新時代の巫女」という奇抜な目標すら、僕がスピリチュアルを好きであることを表現しているに過ぎない。
”私”としてやってきた活動と言えば、「好きな惣菜発表ドラゴン」の曲に乗せてSFを紹介したり、CLUSTARS TRYで自作のSF小説の設定を語ったり、CLUSTARS Fashion Catalogでファッションショーのモデルをしたり。「とらいみー」「したため」「CLUSTARS学園文化祭」などなどCLUSTARSイベントに遊びに行きはしたけれど、能動的な活動は多くはない。
本当はもっと活動する予定だった。しかし、僕自身の活動が思ったより増えてしまった。「クロスメタバース」「オモロいやん家」「Vket Real出展」と色々な企画で声をかけてもらったのがこの時期だ。利賀セイクとして活動しながら、天田美琴としても活動しようとしていた。名義を掛け持つのは流石に無理があったと反省している。
「天田美琴」の正体
もし”私”がどんな人物か調べた人がいれば、”私”の正体に気がついたかもしれない。そもそも「天田美琴」は僕が書いた小説の登場人物の名前だから、Twitterで「天田美琴」と検索すると著者名として僕の名前が出てくる。それくらい細かく調べる人に心当たりはあるから、後で”私”の正体に気づいていたか確認しようと思っている。
他にも正体がバレそうなタイミングはあった。Discordで”私”宛に来たメッセージにセイクのアカウントで返信してしまったことがあった。CLUSTARS TRYの招待を受けたときだ。”私”を招待したのはCLUSTARS学園生徒会の1人であり、あのタイミングで気づかれていたら計画は全ておじゃんだった。運のいいことに、このミスをしたのがCLUSTARS1周年イベント(ACCEL)の準備が大詰めの時期。繁忙期ですぐに返信を確認できなかったのだと思う。セイク名義の返信をすぐに削除して事なきを得た。
デビューし直して感じたこと
”私”がイベントに出演したとき、そこはかとなく疎外感があった。周りの人たちは互いに仲が良さそうなのに、自分だけは誰とも話したことがない状態でイベントをするのは少し寂しい。周りにいるのが「セイクとして友好関係を築いた人たち」だとしてもそうなのだから、本当にCLUSTARSに初めて入る人はさらに寂しさを感じているのではなかろうか。
CLUSTARSがコミュニティとして完成されているからこそ、「新しいクラスに馴染めない転校生」と同じ状況が起こる。
それを解決する1つの方法がCLUSTARS学園なのだろうが、もちろん他にも方法はある。入学前の”私”はどうしたか。CLUSTARSには、ただ見るだけではなく交流もできるイベントがたくさんある。例えば「V酒場とらいみー」は少人数でスタッフと雑談できるイベントで、何も知らずにふらっと入っても楽しめる。
「CLUSTARSカレッジ」では講義形式で普段触れないような知識を得ることができるイベントで、同じことに興味を持つ仲間を見つけるにも有用だ。CLUSTARSのDiscordサーバー限定で気軽に入って交流できるイベントもたくさんある。まずはCLUSTARSサーバーに入ってみて、門戸が広く開かれたイベントに飛び込んでみるのがいいと思う。
CLUSTARS学園に入学
“私”としての活動があまりできていなかったから、CLUSTARS学園に入学できる自信はあまりなかった。だから4期生として入学が決まったときは驚いた。
入学式には同期は個性豊かな面々が揃っていた。生徒会長が僕に言った「強すぎる」とは何だったのだろう。入学時点で全ての生徒が「強すぎる」ではないか。生徒の中には「自分なんてなんの活動もしていないから」なんていう人もいたが、とんでもない。CLUSTARS学園という場が個性を引き出しているのかもしれないが、少なくとも企業公式Vtuberや即興ラッパーと並んでも誰の個性も消えていない。もしあなたが「自分にはなんの取り柄もないし、CLUSTARS学園にエントリーするのはやめておこう」と考えているのなら、その自己評価は間違っている可能性がある。「他の生徒と仲良くなれるかわからない」という心配も杞憂だ。「放課後」という時間に生徒同士が交流できるようにするための企画が毎日用意されている。そうでなくとも始業前に早めに集まって勝手に遊んでいる生徒もいる。
授業の質は言うまでもなく高い。それぞれの分野のプロが講師を務めていることも珍しくなく、CLUSTARS学園のような場でもなければ無料でこれらの授業を受けるのは難しいだろう。僕はCLUSTARS学園の授業を聞くために入学したし、大満足の授業を聞くことができた。もし興味があるなら、4期のシラバスを確認してほしい。
おわりに
かれこれ7ヶ月間、天田美琴として活動してきた。それ自体は真実だ。先述した通り、素の自分をさらけ出しやすくした僕のもう1つのペルソナだ。このペルソナになってから仲が深まった知り合いもいるが、そこに嘘偽りは何もない。
一方で、知り合いに対して初対面のふりをして接する機会が何度もあった。どうしてもCLUSTARS学園に入りたかったから、誰にも利賀セイクと繋がっていることを明かしたくはなかったのだ。とはいえ騙してはいたから、次に会ったときに謝りたいと思う。
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