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Hektor 135mmについて語るときに僕の語ること(その2)
Hektor 135mmでスナップ撮影をしてみたくなった。
そのレンズの写りが好きだったら焦点距離なんか関係なく何だって撮る。GRは28mmだけどポートレートを撮る人もいるし風景写真を撮る人もいる。広角レンズの方が応用範囲は広いかもしれないけれど、望遠レンズだってやってやれないことは無い。難しいことの方が面白い。
今回は望遠レンズで撮ったスナップ写真の話。
御苑での試し撮りを終えるとすでに正午を回っていた。
三丁目のタイ料理店でランチを済ませたら、カメラを肩に携げて再び歩き出す。歩行者天国が復活した新宿通りを行ったり来たり。今日は行かない。地図的写真機店の地下には絶対に行かない。
血糖値が上がった状態の決意はどれくらい信頼できるものだろうか。西新宿で僕を呼ぶレンズの声を振り切るように頭上に向けてシャターを切る。
高層ビルの一部を切り取ると、いつも見ている建物とは違う雰囲気になる。
ビルは地上から天辺までが一体としてデザインされているので、その一部を切り取ると途端に抽象的な写真になる。取り立ててデザインに凝ったビルじゃなくても現代アートの様相を帯びてくる。
新宿には魅力的なビルがたくさんある。
ビルのスナップ写真は“面白い模様探し”をしている感じだった。135mmレンズを装着した時に現れる最も狭いブライトフレームの中に風景を圧縮して閉じ込める。
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気になる風景は道の反対側にあることが多い。
そんなとき道を挟んでさっとシャッターを切るのにちょうど良い135mmという焦点距離。
ライカの135mmは他にもELMAR、TELE-ELMAR、ELMARITなどがあるけれど、どれも人気がなく比較的手に入りやすい。そんな中で偶然Hektorを手にしたのはやはり縁というものかもしれない。
独特な収差はモノクロでも健在で、美しい滲みを伴う描写が堪らない。僕も含めてオールドレンズが好きな人はこういうところがツボなんだろうな。レンズの癖で遊んでいる内はそのレンズの真価を理解できていないので、きっと良い写真は撮れない。でもこの時期を経なければレンズと仲良くなれない気がする。オールドレンズと付き合う上での通過儀礼のようなものかもしれない。
製造から65年の時を経たレンズは今僕の手元で再びヘビーユーズの憂き目にあっている。まだまだ現役で頑張ってくれそうだ。さすが造りの良さに定評があるライカのレンズ。
次はポートレートを撮ってみよう。
レンズと仲良くなるためにはもっともっと遊ぶ必要がある。