Summarが欲しかったんだ
Summarが欲しかった。
手に取ってすぐに分かったコンディションの良さ。試写なんかしなくてもどんな画を出すかイメージできる。スクリューマウントの沈胴オールドレンズは僕の手と陳列棚の間を行ったり来たりしていた。
自室の防湿庫はいっぱいだったけど、もしかしたらM-ROKKORを重ねて置けば、あと一本くらい入るんじゃないかと思ったり。
L-Mマウントアダプタは持っているからⅢaでもM3でも使える。沈胴させなければM9やM10でも使える。
後にSummitar、Summicronへと続く標準レンズの始祖。甘い描写の中心にある解像度。繊細な線の描写。六角形のゴースト。そしてセイケトミオ。何を迷うことがあっただろうか。
もう一人の冷静な自分が言う。
このレンズは50mmだよ。もう一回言うよ、このレンズは50mmだ。
そう、Summarは50mmのレンズだった。僕は50mmのレンズが好きで今まで沢山集めては手放してきた。
それでもまだ50mmが欲しい。
レンズと言えばR8の相棒としてRマウントのレンズも欲しい。
本命はSummicron-R 50mmだけど、手持ちのVARIO-ELMARITが見せるある種の諦観を強要する描写が心地よく、未だ解像度の高いSummicronに決めきれない自分がいる。そしてAngenieux Zoomが欲しい。すごく欲しい。
人の欲は春風に吹かれてやってくる。何かが欲しいと望む感情はプラスの感情だ。芽吹きの春。写欲と一緒に目覚めたのは忘れようとしていたオールドプロダクトへの羨望と渇望。懐が寂しいのは相変わらずだけど、良い出会いがあれば躊躇はしない。
そんな(無駄な)決意をした、流れる季節の真ん中の話。