10年間ほど「ことば」の研究をしていました、という話⑮♪
こんにちは(^ ^)
普段は大学で「英語」と「異文化コミュニケーション」を教えています、水月むつみです。
人間関係をよくするために「ことば」の調整をすることが大切という話を前回しましたが(こちら)、「ことば」の調整をするためには相手を理解することが必要になります。相手の「ことば」が分からなければ調整のしようがないですからね笑
まずは相手の「ことば」を理解することから。
じゃあ、相手の「ことば」を理解するって何をすればいいの?
ということになりますが、それが実はなかなか難しい。
人は相手を理解したつもりになっていることが多いから。
自分と相手を同じだと思ってしまって(それはもちろん私も含めてですが)、自分の「ことば」のフィルターを通して、相手の「ことば」を理解したつもりになってしまうんですね。
自分の「ことば」のフィルターをなるべく通さないで、相手の「ことば」を理解するためにできることはいろいろありますが、1つ重要なものは「対照ペア(contrastive pair)」に着目すること。
「対照ペア」というのは、シンプルに言えば、対立する2つの概念のことです。
たとえば、よく知られている昔話の『桃太郎』でこんな語りがあると思いますが、
「おじいさんは山へ芝刈りに
おばあさんは川へ洗濯に行きました」
この中の「おじいさん」⇔「おばあさん」が対照ペア、「山」⇔「川」が対照ペアです。
「おじいさん」と「おばあさん」が反対、「山」と「川」が反対なんてあたりまえじゃーん!
と思うかもしれませんが笑
そんなことはないんです笑
「山奥に住むおじいさんとおばあさんは、都会のど真ん中に住む私たち夫婦を招いてくれました。山や川がある自然の中には、ビル群しかない都会では感じられない空気がありました。」
という文章があったとします。
この文章の中では、「おじいさんとおばあさん」⇔「私たち夫婦」が対照ペア、「山や川」⇔「ビル群」、「自然」⇔「都会」が対照ペアです。
『桃太郎』では対立していた「おじいさん」と「おばあさん」、「山」と「川」が、この文章では「おじいさんとおばあさん」、「山や川」と一括りになっていますよね。それはこの語りのベースとなる対照ペアが「自然」⇔「都会」だからです。こういう風に、ある場合では対照ペアになっているものが、他の場合では対照ペアにならないなんてことは普通にあるんです。
その「対照ペア」が相手の「ことば」を理解するのに大切なのはなぜかというと、それは…
「その人が世界をどう認識しているか?」
が分かるから。
たとえば
「日本人である私には、英語を話すアメリカ人のことは全然わかりません」
と言った人がいれば、その人にとっては「日本人」⇔「アメリカ人」が対照ペアです。人は「A」と「Aでないもの」という2つの対立構造で物事を認識する傾向にありますが、その人にとっては「日本人」と「アメリカ人」は対立するものとして認識されているわけです。
一方、
「日本人もアメリカ人も宇宙人から見たら同じようなもんなんだろうね」
と言った人がいれば、その人にとっては「日本人とアメリカ人」⇔「宇宙人」が対照ペアです笑
「日本人」と「アメリカ人」を対立しているものと考えている人と、「日本人、アメリカ人」を一括りにして、「宇宙人」と対立したものと考える人では、世界の見方が全然違いますよね。当然、使う「ことば」も違ってきます。
というわけで、相手の「ことば」を理解する、相手を理解するための1つとして「対照ペア」が大切なのでした。
人とのやりとりの中で、ちょっとでも「対照ペア」を意識してみてくださいね。より相手のことが見えるようになると思います。
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ではまた~♪