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───春の定義とは?
北海道において、それは水芭蕉やクマウバユリの芽吹きであるのかも知れない。
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3月、北海道の春は遅く、街ではアスファルトが覗く事はあっても、林道はまだこんな感じ。
スノーシューやスキーを履いてまだまだ雪が残る道を進み、ヒグマの痕跡を探す。
雪の降り頻る冬、ヒグマは通常冬眠している。
冬眠というとコールドスリープのような仮死状態を想像しがちであるが、それはうたた寝というような状態で、何かちょっとしたキッカケで、そのまどろみからは素早く覚醒するようだ。
冬眠中は絶食であり、しかしその状態で出産し、来年もまた1歳の子熊と穴に入るのだというから、ヒグマの生態とは本当に不思議なものだ。
山で出会うその姿は、神々しくすらある。
だが。
古来より崇められた山の神は、時に人の命を脅かすのだ。
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小樽には坂が多い。
そして小さく、しかし素晴らしい山がたくさんある。
この山々の全てに、ヒグマが住んでいると言っても過言では無い。
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さらにこのような痕跡は至る所にあり、それは意外と学校のそばであるとか、住宅地からほんの少し入った所であるとか、明らかにヒグマの気分ひとつで人間の前に姿を現す事が可能であるような、そんな距離に刻まれている事が多い。
よく林道の真ん中に糞をするヒグマが居るが、それには自らの存在をアピールする、つまり警告の意味がある。
このような「印」も、時に人間に対しては効果的な警告となり得るだろう。
ヒグマの嗅覚は犬の6〜7倍もあるとされ、その犬の嗅覚といえば人間の数千〜1億倍とも言われている。
こちらには見えていないが、向こうにはこちらの動き、その全てが見えているに違いない。
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件のOSO18といえば、この測り方で18cmという大きさになる。
実際この後の追跡で、この小さな足跡の主と出会う事になるのだが、小さくてもそれはヒグマ。
もしもそんなに大きなヒグマに出会したら、さぞかし緊張するのだろうと固唾を飲んだ。
まだ若いヒグマは見慣れぬ人間から逃れるために、転がるように雪の斜面を降りて行った。
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冬眠はそもそも冬季のエサ不足に起因するエネルギーセーブであって、絶食が基本であり、この絶食モードから再起動する際、穴から這い出ると、ヒグマは人間にとっては毒である水芭蕉や、ウバユリを食べる。
ウバユリはクマウバユリとも言い、これはバイケイソウという植物の事であるのだが、アルカロイド系の猛毒は人を殺す。
しかしヒグマにとっては冬眠絶食時の老廃物を排出するための、下剤の役割を果たす重要な植物なのだ。
いわば毒々朝ごはんを食べてから、ヒグマは本格的な目覚めを迎える事になる。
この素敵な朝ごはんが出来上がる頃を、きっと春と呼ぶのだろう。
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北海道の春は遅い。
もう何をもって春としたら良いのか分からなくなるほどに、遅い。
しかし北海道では、こうして雪解けと共に芽吹く植物や、冬眠から目覚めるヒグマの姿に、自然の営みの強さと神秘を肌で感じることができるのだ。
すぐそこにある小さな山々。
都会では感じ得ない、私たちはこの大地と共に生きているという実感が、確かにそこにはあった。
当たり前過ぎて見えなくなったその事実を忘れず、自然の声に耳を傾けながら、この春も新たな一歩を踏み出していきたいと願う。
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※NORIさんは特別な許可を得て、熟練のハンターと共にチームでヒグマを探しに森へと入っています。
子熊を守ろうとする母熊には、特に気を付けて下さい。
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![Seaweed State: Brave Roads (S.S.B.R.)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/169179559/profile_63f1bcc47212c1c78e75ce1c6804e240.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)