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安南推理将棋

こんにちは。自称安南将棋指しの御原真尋(みはら まひろ)と申します。

「安南将棋を指したんだけど10手で負けてしまった」
「ほう、どんな将棋だったんだい?」
「お互い駒は1枚も取ってなかったね。途中で真下に移動する手もあった」
「ふうん、終局図は玉が55にいるんだね」

安南推理将棋というものを作ってみたのですが、特に公開する場所がどこにも無かったのでここで供養したいというのが今回の要旨です。


推理将棋のルール

そもそも推理将棋というものをご存じでしょうか。

推理将棋とは与えられた条件を満たすように、将棋の指し手(棋譜)を再現するというパズルです。
手順は本将棋として成立する必要があり、王手放置や反則手を指すことは通常禁止されています。

詰将棋おもちゃ箱さんなどで様々な問題を閲覧することができます。

基本的には推理将棋は標準的な本将棋を想定された問題が多数です(たまに成禁などのフェアリールールが条件として出現することはあるようですが)。

安南将棋を想定した推理将棋は軽く探したところ見かけませんでした。

安南推理将棋を作ってみた

本将棋の推理将棋があるなら、安南の推理将棋があったっていい!
というわけで実際に作ってみた安南推理将棋が冒頭に記載した会話文になります。

【会話】
「安南将棋を指したんだけど10手で詰まされてしまった」
「ほう、どんな将棋だったんだい?」
「お互い駒は1枚も取ってなかったね。途中で真下に移動する手もあった」
「ふうん、終局図は玉が55にいるんだね」
【条件】
条件1: 10手で詰み
条件2: 駒は1枚も取っていない
条件3: 駒を真下に動かす手があった
条件4: 最終局面は55に玉がいる

ただし、上記の安南推理将棋では以下のような26歩86歩型の初形図を想定しています。

安南推理将棋の初形図

また、今回は利き二歩無効としています(が、利き二歩の有無は問題には影響しません)。

余力のある読者の皆様にはぜひともご一考いただければと思いますので、解答はもう少し下の方に記載することといたします。
もし余詰めがあったら申し訳ありません。

閑話休題

さて、いきなり解答を書くと、折角問題を解いてくださる読者の方に解答が見えてしまうかもしれませんので、場所稼ぎとして少し軽いお話でもさせていただければと思います。

関西将棋会館が移転し、12月3日に高槻で新しくオープンしました。
記事やSNSでそのニュースを目にしましたが、まだ実際に訪れたことはありません。

そんな中、先週、大阪の福島に行く用事があり、ついでに旧関西将棋会館の前まで足を運んできました。
そして、思い出深い将棋会館の建物を写真に収めてきました。

小学生の頃からお世話になっていた場所ですが、最近は学業の忙しさを理由に足が遠のいており、最後に訪れたのは9年ほど前だったと思います。
「閉館する前にもう一度訪れておけばよかった」と少し後悔しつつ、感傷的な気持ちに浸るひとときでした。

解答

さて、小噺を挟んだところで、そろそろ解答に移りたいと思います。

【解答】
▲68玉 △42玉 ▲78玉 △32玉 ▲87玉 △23玉 ▲65玉 △45玉 ▲66玉 △55玉 迄 10手

詰上図 △55玉まで

個人的な考え方のプロセスを以下に記しておきます。

大前提として、10手で終局しているので、先手玉が詰まされていることが分かります。

まず、条件4「最終局面は55に玉がいる」から考えます。
先手玉が5手で55まで移動する手段は大きく3種類あります。

  1. ▲46歩 ~ ▲58(48)玉 ~ ▲47玉 ~ ▲56玉 ~ ▲55玉

  2. ▲66歩 ~ ▲58(68)玉 ~ ▲67玉 ~ ▲56玉 ~ ▲55玉

  3. ▲68玉 ~ ▲78玉 ~ ▲87玉 ~ ▲65玉 ~ ▲55玉

先手玉が5手で55に移動した局面
左からそれぞれ手段1、手段2、手段3

ちなみに4手以下で玉を55に移動させる手段はありません。

上記のいずれにおいても、先手玉は玉の利きのままであり、55の玉を詰ませるには周囲のマス全てに後手の駒が利いている必要があります。

以下はそれを実現して55の先手玉を詰ませた局面ですが、後手の移動に7手要しており、10手の範囲に収まりません。
(利き二歩有効では33桂を省略することができますが、それでも6手要しており、依然10手の範囲には収まっていません。)

詰上参考図
後手の移動に7手要している

という訳で、どうやら55の先手玉を10手で詰ますのはかなり難解なようです。

そこで、条件4が先手玉ではないパターンを考えてみます。
後手玉が55にいるという可能性です。
後手玉が5手で55に移動する手段は前述の通り3種類しかありません。

後手玉が5手で55に移動した局面
左からそれぞれ手段1、手段2、手段3

いずれにしても後手の最終手(=10手目)が△55玉であり、その手で先手玉が詰む訳ですから、先手玉は55に隣接するいずれかのマス目におり、なおかつ55に利きを持たない必要があります。

それを5手で実現できる手段は以下のいずれかです。

  1. ▲76歩 ~ ▲68玉 ~ ▲77玉 ~ ▲66玉 + 任意の1手

  2. ▲36歩 ~ ▲48玉 ~ ▲37玉 ~ ▲46玉 + 任意の1手

  3. ▲68玉 ~ ▲78玉 ~ ▲87玉 ~ ▲65玉 + 任意の1手

ここで条件3「駒を真下に動かす手があった」を考えます。
後手の移動において駒を真下に動かす手は存在し得ないので、先手がどこかで駒を真下に動かす必要があります。

上記の先手の手段のうち、駒を真下に動かすことができるのは手段3において、任意の1手で65の玉を66に動かす手段のみです。

以上をまとめると先手と後手は以下のような手段で指していることが分かります。

【先手】
▲68玉 ~ ▲78玉 ~ ▲87玉 ~ ▲65玉 ~ ▲66玉
【後手】
以下のいずれか
1. △64歩 ~ △52(62)玉 ~ △63玉 ~ △54玉 ~ △55玉
2. △44歩 ~ △52(42)玉 ~ △43玉 ~ △54玉 ~ △55玉
3. △42玉 ~ △32玉 ~ △23玉 ~ △45玉 ~ △55玉

これらの組み合わせのうち王手放置が発生せず合法手順となるのは後手が手段3を選んだ場合のみです。

よって解答手順のただ1通りに定まります。

【解答】
▲68玉 △42玉 ▲78玉 △32玉 ▲87玉 △23玉 ▲65玉 △45玉 ▲66玉 △55玉 迄 10手

ちなみに後手が手段1を選んだ場合は7手目▲65玉が王手放置になってしまい不適です。

後手が手段1を選んだ場合の参考図
7手目▲65玉が王手放置になっている

また、後手が手段2を選んだ場合は6手目△43玉が王手放置になってしまいます。

後手が手段2を選んだ場合の参考図
6手目△43玉は87にいる先手玉の射程に入ってしまう

さいごに

最近ちまちまと解いている推理将棋を見て、安南バージョンを実際に作ってみました。

問題のクオリティとしてはよくわかりませんが、安南でも本将棋とは異なるユニークな手順があり、安南推理将棋もかなり面白い作品が作れるポテンシャルがあるのではないかと思います。
本稿で紹介した手順は玉しか動かない手順であり、このような手順はまさに本将棋には起こりえない安南将棋独特の手順と言えるでしょう。

あまり誰も触れていないジャンルなので、これを機にぼちぼち安南推理将棋も考えてみようかなと思います。

ご拝読いただきありがとうございました。

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